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業務を変えるkintoneユーザー事例 第166回

6地区のファイナリストが全員集合!

kintone AWARD 2022開催 効果が数字に出た後藤組とkintoneおばちゃんが登壇

2022年12月22日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2022年11月10日、幕張メッセで開催された「Cybozu Days 2022」で、恒例「kintone AWARD 2022」の発表が行なわれた。全国各地で開催されたユーザー事例を共有するイベント「kintone hive」のファイナリストが集結し、再度プレゼン。グランプリを決定する。

 「kintone hive」は2015年から開催され、今年は東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌でリアルとオンラインのハイブリッド開催となった。今年も6社の登壇となり、レベルの高いプレゼンが行なわれた。まずは、トップバッターと2番手のレポートを紹介する。

毎年恒例の「kintone AWARD 2022」が開催された。今年のグランプリの行方はいかに?

嫌われたkintoneアプリを現場に作ってもらう仕組み作り

 トップバッターは東北地区代表の後藤組から笹原尚貴氏。後藤組は山形県米沢市に本社を構え、道路や建物を作っている総合建設企業。今年で創業から97年目を迎える老舗だ(関連記事:kintone導入担当の本当の役割は「現場がアプリを作りたくなる環境づくり」)。

 登壇した笹原氏は2015年に文系大学を卒業して入社。住宅の営業などを行なっていたのだが、ある日、データドリブン担当に任命されたという。

「当社の年代ごとの人数を表したグラフを見ると10代、20代の若い社員がすごく多くて、30代、40代が少なくて50代、60代がまた多いという構造をしています。会社の売り上げを支えているのは当然ベテラン社員ですが、5年後10年後にはベテラン社員は減っていきます。そのため、新卒社員を1日でも早く一人前にすることが大きな経営課題になっていました」(笹原氏)

後藤組 笹原尚貴氏

 しかし、それまでの後藤組では、いきなり現場に出して、体で仕事を覚えさせるのが当たり前だった。勘と経験と度胸、いわゆるKKDで仕事をしていたので、一人前になるには最低でも5年かかると言われていたのだ。この状況を変えるのが、笹原氏に課せられたミッションだった。

 経験で仕事をするのではなく、データを基にして、仕事の判断をすることで、若手でもベテランでも関係なく、同じ品質の仕事ができるような組織にするのが目的だ。

以前の後藤組はKKDで仕事を進めていたため、人材育成に時間がかかっていた

 現場は紙やFAX、電話でやり取りするアナログ環境で、まずはここから変えなければならない。そこで、笹原氏はkintoneと出会った。

「kintoneの導入を決めた理由は2つあります。1つ目がアジャイル開発ができることです。kintoneは自分たち自身でアプリを作れるので、スピード感がめちゃくちゃあります。もう1つが、作ったアプリを使って仕事をすれば、データが貯められることです」(笹原氏)

 しかし、笹原氏が開発したkintoneアプリはまったく使われなかった。その理由は、自分にスキルが足りてないからだと考えた笹原氏は、プログラミングの勉強を独学で始めたり、kintoneアソシエイトの資格を取得したりした。機械学習も勉強し、アプリをさらに量産。アプリはどんどん高度化したものの、同時にkintoneは社内でどんどん嫌われていったという。

笹原氏はどんどん高度なアプリを作ったものの、kintoneは社内で嫌われてしまった

 そんな時、社長から「お前自身はアプリを作るな。社員が作るような仕組みをお前が作れ」と言われ、そこで、もう一度なぜアプリが使われなかったのかを考え直した。

「私にはデータドリブン経営という課題が与えられ、そのためにはデータが必要、そのためにはkintoneを社員みんなが使うべきだ、と思ったのですが、これは私の都合です。現場で働く社員にとってすれば、なんでそんな面倒臭いことやらせるんだ、というのは当然の主張でした」(笹原氏)

残業時間20%ダウン、営業利益44%アップを実現

 そこでkintoneを使うと今の仕事がこれだけ便利になるというメリットを伝えるようにした。自分でアプリを作るのをやめて、日報アプリ1つからリスタートすることにしたのだ。

 同時に、幹部と呼ばれる実行力のある人たちを巻き込むことにした。そうすれば、その幹部からの報告を受けた社長から「なんで他の部署では使わないのだ」という“福音”が下るからだ。

 日報アプリが全社で使われるようになると、日報を書くために事務所に戻る必要がなくなり、特に若い社員から喜ばれた。そして、1日1回はkintoneを開く習慣が根付き始めたので、続いて、経費精算アプリを作り、どんどんkintoneをなくてはならないツールにしていった。

リスタートし、まずは日報アプリだけを使ってもらうことに

「やがて、「こんなアプリ作ってみたいんだけど」、「こういうデータ取りたいんだけど」、という相談が来るようになりました」と笹原氏。そこで笹原氏は社員にアプリを作ってもらえる仕組みを構築するため、3つの施策を行なった。

 1つ目が社内勉強会の開催。kintoneのアプリの作り方だけでなく、そのデータをどう活用するかというところまで教えることにしたそう。勉強会形式で定期的に開催し、その回で1番成績の悪かった人が次の講師を担当するのがユニークだ。

 2つ目がデータドリブン大会。これは、年1回、全社員が参加するイベントで、社員を数名ずつのチームに分け、kintoneの活用についてプレゼンするというもの。投票も行ない、優勝チームには賞金も出るそうだ。

 3つ目が社内資格制度。あくまで後藤組の中でIT人材に求められるスキルを定義し、段階的に資格試験を用意したのだ。ステップアップするごとに奨励金が贈られるという。

 その結果、社員が自分でアプリを作るようになった。従業員が行なった工夫を記録する「創意工夫」と呼ばれる書類は、以前はExcelに書いていたため属人化してしまっていた。それをkintoneで管理することで、脱Excelでき、若手も使えるデータに生まれ変わった。

 また、扱っている不動産物件のデータを溜めることで、独自に機械学習を行ない、新規物件が登録されたときに自動査定できるようにした。このことで、若手でも手間をかけずに提案できるようになったという。

 新卒の採用時には、「フォームブリッジ」(トヨクモ)を使い、学生からのアンケートを回収。ダッシュボードで各プロセスの進捗を把握し、分析できるようにした。

「その結果、残業時間は1年前に比べて20パーセント削減され、営業利益は44パーセント増え、生産性は1.7倍になりました。まさに、kintoneの利用が会社の数字を変えたのです。今後は、取り逃しているデータも蓄積し、社員自身がAIやダッシュボードを使って活用していくデータドリブン経営を実現していきたいと思います」と笹原氏は締めた

766個のkintoneアプリが作成されると、残業時間が減り、営業利益が増えた

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