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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第105回

「kintone AWARD 2021」レポート後編

グランプリは相互電業! 愛媛バス、サエラ、RGCのkintone AWARD 2021登壇

2021年12月24日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2021年11月1~2日、幕張メッセで「サイボウズデイズ」が開催された。今回は初日に行なわれた「kintone AWARD 2021」の後半戦の様子を紹介する。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、2015年から全国各地で開催されている。その各会場からファイナリストが選ばれ、6社が幕張メッセに集結。「kintone AWARD」で再度プレゼンし、投票によってグランプリが決まる。

 前回は1~3社目までが登壇し、いずれも熱いプレゼンだったが(関連記事:医療、福祉、電気工事業界で大きな業務改善を実現したkintone事例がスゴイ!)、後半戦も負けず劣らず最高の事例が紹介された。

ライトコースのkintoneでも年間500万円の経費削減を実現した愛媛バス

 後半のトップバッターは中国・四国地区代表で、愛媛バスの森川由貴氏が登壇。「進化するキントーンは奇跡を起こす」というテーマでプレゼンした(関連記事:みんなを巻き込んだ問題解決でkintone導入を成功させた愛媛バス)。

愛媛バス株式会社 森川由貴氏

 2013年、当時の愛媛バスは大量の紙の資料の中から必要な書類を探している人がいて、電話は保留のまま。資料は結局見つからず、電話は折り返しになる。担当者がいないと何もわからないのに、担当者がどこにいるのかわからないうえ、電話に出も出ない。電話は次々と鳴っている。こんな嵐のような状態だったそう。

 バス22台の受注は年間6冊のノートでアナログ管理していた。営業や事務、乗務員約30名が見るのだが、画面に表示された手書きの文字は汚く、読めないものばかり。

 このままではいけない、とアナログからの脱却にチャレンジ。2018年にkintoneを導入することが決定した。

アナログなノートで管理されていた、バス22台の受注

「すると、私の前に壁が立ちはだかりました。今でも仕事が多いのにまだ増やすの? 売上にならないことやらすの? と、社員からのすごい抵抗です。それもそのはず、やみくもにいまある業務をアプリにしようとしたからです」(森川氏)

 それならばまずは業務改善をしようと、森川氏と社長は既存業務を洗い出し、kintoneを組み込んだ新しい業務体制を構築した。アプリも作ったのだが、また壁が立ちはだかる。社員が抵抗こそしないものの、やらされ感いっぱいの状態だったという。

 kintone導入の最初の目的は、ペーパーレス化とクレームをなくすための情報共有だった。そこで、kintoneにこだわるのをやめ、問題解決会議を開いた。愛媛バスが未来、どうなりたいのかをみんなでしっかり話し合ったのだ。

「議論は白熱しました。いいことも悪いことも見える化しました。問題を分類してまとめ、「相手を想う情報共有」という目標も作りました」(森川氏)

 そしてメンバーは現状の課題は、組織風土とルールとツールがないから起きていると気がついた。そこでみんなが選んだツールが、やはりkintoneだった。

 まずは、手書きのメモを禁止し、すべてkintoneを利用するようにした。何でも書けるアプリを用意し、シンプルなルールを用意。1つ目が、件名は必ず付けて、人に伝言する時は担当者を指定し、要処理にチェックをする。2つ目が、指定された人がそのタスクを処理したら、要処理のチェックを外す。この2つだけを守ってもらった。

 アプリを開くと自分の要処理レコードが一覧表示されるので、空にして帰るように周知したところ、まず放置されていたメモがなくなった。さらに、他の人のメモが見えることで、他の人の仕事がわかり、ありがとうが飛び交うようになったそう。

「PDCAサイクルを回しました。まず、使いたくなる道具を作り、わかりやすいルールで運用します。8割以上の人にルールが定着できたら、次のアプリを連動させていきます。そうすることで、kintoneは進化し、会社は発展、人はどんどん成長して行きました」(森川氏)

8割以上にルールが定着できたら次のアプリを連動し、人も会社の成長させる

 kintoneはライトコースを契約しているのだが、それでよかったと思っている、と森川氏。基本機能でもいろいろなコトができるので、仕事全体をkintoneに載せることができた。すると、既存のシステムが不要になり、年間500万円の経費を削減できたという。

 kintoneで課題を解決するという企業風土ができていたので、コロナ禍になっときに、社員から30以上の新しい企画が生まれたそう。8年かかったものの、超アナログな会社にkintoneを導入。ライトコースでもしっかりと業務改善し、経費削減まで実現した素晴らしい事例だ。

「コロナ禍で売り上げないのは仕方がない? そんなことを言っていたら、新しい未来は作れません。こんな風に企業価値を見いだし、一歩ずつ前に進んで来られたのは、kintoneと本気で向き合った経験があったからです」と森川氏は締めた。

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