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業務を変えるkintoneユーザー事例 第165回

会社人生最後を迎えた私が伝えたいこと

山あり谷あり kintoneおばちゃんのジャーニーはまだまだ続く

2022年11月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 7社が登壇したkintone hive tokyo 2022を締めくくったのは、ISID-AOのkintoneおばちゃんこと根崎由以子さん。還暦を迎え、再雇用のやるせない日々を変えてくれたkintoneと歩いてきた数年間の軌跡、そして還暦を迎えるなんて想像できない人たちへのメッセージが披露された。

kintoneおばちゃんこと根崎由以子さん

王子とののんびり生活からkintone三昧の日々へ

 ISIDグループ内外でデジタルインフラやシステムサポートを担当するISID-AO。同社に所属する根崎由以子さんは4年前に定年を迎えた。当時は王子(お孫さん)の誕生で浮かれていたものの、ビジョンや覚悟もなかったという。「再雇用となって出向先から自社に帰還したものの、これといった仕事はなく、お給料も、テンションも急降下。定時に出社して、定時に帰るやるせない日々でした」と根崎さんは振り返る。

 そのやるせなさに追い打ちをかけたのが、試験的に導入していたkintoneの引き継ぎだった。「kintoneってなに? この歳で新しいもの覚えるなんてムリムリムリ。(引退して)王子とのんびり過ごすのもよいのかな」と思っていたという。

 ところが、前任者から聞いたkintoneの話を聞いて、根崎さんは久しぶりに心を躍らせてしまう。「kintoneってなんだか面白そう。しかもおばちゃんにも触れそう」と感じた根崎さんは、妄想を膨らまし、kintoneを調べ始める。暇さえあれば、日本橋のサイボウズオフィスに足を運び、無料セミナーに参加し、年金が入ったら、有償セミナーにまで参加した。とはいえ、耳が不自由な根崎さんは人との話が苦手で、懇親会に参加したことがなかったため、基本的にひとりぼっちだった。

kintoneの出会いに心躍らせてしまう

 しかし、あるとき会場でキンスキ松井さんを見かけ、ファンだった根崎さんは思わず声をかけてしまう。「優しくて、丁寧な松井さんの神対応に私は感激しました。それ以来、日本橋でセミナーだけ受けて、1人で帰ってくるのはもったいないと感じるようになり、ごいっしょするユーザーさんとも交流し、情報交換ができるようになりました」と根崎さんは振り返った。

 こうした中で出会ったのが恩人とも言えるRossoAcademyの飯塚洋平さんだ。知る人ぞ知るつなぎ人である洋平さんとの出会いを経て、いろいろな仲間とつながることができた。「狭かったおばちゃんの世界が大きく拡がりました。洋平さんはおばちゃんの歩くSIGNPOSTです」(根崎さん)

 そして、出会ったのは師匠にあたるプロジェクト・アスノートの松田正太郎さんだ。サイボウズ公認kintoneエバンジェリストの松田さんが手がける「kintone業務改善道場」はkintoneの知識の源。日曜日の22時から生放送されるYouTube番組「今夜もkintone」は、根崎さんの週末のルーティーンになっているという。

kintone界隈でのさまざまな人たちの出会い

kintoneおばちゃんが陥ったしくじりポイントとは?

 こうしてkintoneにのめり込んでいった根崎さんは社内外の業務改善の小ネタを拾い集めては、kintoneアプリをひたすら作りまくった。「このアプリの中には、使ってもらえなかったアプリもあれば、見てももらえなかったアプリもあります。一方で、片手間で作ったアプリが思わぬ成果を挙げたこともありました。波瀾万丈です」という根崎さん。しくじりポイントと思わぬ成果を挙げた事例を披露する。

 しくじりの1つ目の「おばちゃんは魔法使いか?危険人物か?事件」では、社内図書の貸し出しシステムを作成せよという課題をもらった新人にお節介を焼いていたら、根崎さんの方がはまってしまったという案件。ここではkinotneとスマホとバーコードスキャナーによる無人の貸出システムを作ったそうだが、リリース直前に根崎さんが訳あってアクセス権のチェックをいったん外してしまったところアプリが消えたと大騒ぎになってしまう。結局システムは実用化されず。「アクセス権の変更は冷静に確実に。覆水盆に返らず。今でもとても反省しています」(根崎さん)。

 続いてしくじりの2つ目の「おばちゃんはりきり過ぎて痛い目にあった事件」は、客先でPMO業務を委託されていた部門でのkintone導入。もともと本部、ヘルプデスク、エンドユーザー、システムインテグレーターとのリアルタイムなコミュニケーション手段がなかった。そのため、各拠点をkintoneでつないでプロセス管理や通知機能を駆使し、エスカレーションやインシデント対応のスピードをアップしようとした。

 しかし、リリース直後にハブの役割をお願いしていた客先の担当者が長期の休みに入り、頼みの綱となった社内のメンバーがステータス変更ボタンを押してくれず、プロセスが進まずレコードの大渋滞が起こってしまった。ここで得た教訓は、「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」で、アクションを起してほしい人とコンセンサスをとっておく必要があったと反省したという。また、このときはカスタマイズにも手を出してみたが素人だったため、リカバリ対応が難しく、顧客に不便をかけてしまったという。

いくつかのしくじりから教訓を得た

 こうした苦い経験を経た根崎さんは、kintoneと業務改善を基礎から学ぶべく、「アソシエイト試験対策テキスト」と「業務改善NOTE」を常備するようになった。アソシエイト試験は一発合格したが、一夜漬けで覚えたことは一晩で忘れることも学んだ。また、アプリデザインスペシャリストは2回の不合格を経て、一年以上かかって取得し、kintoneもようやく身についてきた。「試験は落ちてなんぼ、落ちたらラッキーと会社では言っています」と根崎さんは振り返る。

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