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ソニー製5万円モーションキャプチャー「mocopi」とはそもそも何か? VTuberやメタバースの注目機器

2022年12月02日 19時55分更新

文● 島徹 編集● ASCII

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 ソニーは29日、4万9500円で購入できる小型のモバイルモーションキャプチャー「mocopi」を発表した。ソニーストアにて12月中旬に予約開始、1月下旬の発売を予定する。発表と同時に、メタバースやVTuber界隈、VRゲーマーの注目を集めている製品だ。mocopiの発表当日はHikky社のバーチャルマーケットに関する会見でデモを実施。メディア向けの説明会も開催された。

ソニー製モバイルモーションキャプチャー「mocopi」

 本記事では発表会の模様とともに、「mocopiで何ができるのか」、そしてVRの全身フルトラユーザーが気になる同価格帯のShiftall社「HaritoraX 1.1」との違いについても見ていく。

ソニー株式会社 新規ビジネス・技術開発本部 通信技術開発部門 モーション事業推進室室長 相見猛氏

500円玉サイズの小型センサー6個で
体の動きをVTuberやVRChatのアバターに反映

 mocopiの概要だが、500円玉サイズの6つの加速度センサーと体に装着するためのバンドがセットになった製品だ。センサーを頭、腰、左右の腕と足の計6ヵ所に取り付け、iPhoneまたはXperiaで動作するスマホのmocopiアプリに接続して利用する。

mocopiには6つのセンサー、装着用のバンドとクリップ、収納ケースを兼ねた充電器が付属する

センサーを頭、腰、左右の腕と足の計6ヵ所に取り付けて利用する

 実際の利用時は、センサーのデータをスマホのmocopiアプリが機械学習処理で最適化することで、全身の体の動きをリアルに反映したアバターの映像やモーションデータを記録できる。

身体を動かすと、センサー情報をiPhoneやXperiaのアプリで処理。アバターが自身の体と同じように動く

 さらに、モーションデータをPCなどにリアルタイム送信することで、VRChatのようなメタバース空間でアバターの全身を動かせるほか、より高度なVTuber動画撮影やXRサービスの開発といった用途にも活用できる。このため、VRChatでのフルトラと呼ばれる全身モーションキャプチャー、フルトラッキング環境を求めている人や、XRやメタバース開発者から注目されているというわけだ。

スマホだけでVTuber撮影! VRChatやばもきゃにも対応

 一番基本的な使い方は、前述のとおりにスマホのmocopiアプリ上で全身の動きを好みのアバター(VRM形式)に反映させ、VTuberのような映像やモーションデータを記録する用途だろう。音声とのリップシンクで口も動かせる。

 最大の利点はmocopiとスマートフォンだけで使えるので、PCがなくても気軽に3DモデルのVTuberの体験や映像素材を撮れる点だ。外でのVTuber動画素材の収録や、突発的にTikTok風ショート動画の素材を作るのにも便利だろう。

mocopiとスマホだけで、VRM形式のアバターを使った動画を撮影できる。アップ撮影や、アバターがカメラの中央以外に動き回ることも可能

映像やモーション撮影時は、VRMアバターの変更、グリーンバックなどの背景変更、鏡面表示などの設定を変更できる

 メタバース用途では、VR Chat(PC版/Quest版)アプリに直接OSCに基づくモーションデータを送信し、空間内でアバターの全身を動かすことが可能になる。実際にはPCの場合だとMeta Quest2やPICO 4などのSteam VR対応のゴーグルと併用することになるという。このほか、Hikky社がバーチャルマーケットなどで活用している「Vket Cloud」も対応を表明している。

VRChatに対しては、OSCを用いて直接モーションデータを送信する。Quest版にも対応

 PCを用いたVTuberのモーション収録やそのほかの開発にも対応。VRゲーム実況などで使われる「バーチャルモーションキャプチャー」(通称ばもきゃ)に対応しており、このアプリをハブとして他のフェイストラッカーや指の動きを反映できるコントローラーやグローブ機器を接続すれば、アバターをよりリアルに動かすことが可能になる。なお、mocopiの開発にはバーチャルモーションキャプチャー開発者のあきら氏が参加しているという。

「バーチャルモーションキャプチャー」に対応。このアプリをハブとしてVTuber動画撮影のほか、フェイストラッキングやハンドトラッキング機器と組み合わせられる

 開発者サイトは12月15日公開予定。mocopi Reciever Pluginを通じてUnityとMotionBuilderに対してモーションデータをリアルタイム送信可能になる。また、12月開催のXR開発者向けカンファレンス「XR Kaigi 2022」のオンラインとオフラインの両方で登壇、展示を予定している。

開発者サイトを12月15日に公開。UnityとMotionBuilderに対応したSDKを配布する

 ここで気になるのは、VRChat以外のメタバースやSteamVRデバイスとしての利用、SIEのPSVR2など、他の機器やサービスとは連係しないのかという点だ。この質問について相見氏は「SDKの機能のアップデートにより色々なサービスと繋いでいきたい」とした。さまざまなサービスと連携していく方向性で動いてはいるが、まだ開示できる段階ではないとのことだ。12月15日の開発者サイト公開以降は、問い合わせフォームも用意したいという。

mocopiの実機をチェック、センサー数の割にモーションは自然だ

 実際の使用感だが、付属のベルトと腰用のクリップはコンパクトで一般的な服装のまま装着しやすい。センサーとベルトを分離できるので、途中で充電が必要になった場合もいちいちベルトを着脱せずに済む。

製品はカラフルな紙パッケージで提供。普段はセンサーは充電器兼ケースに入れて持ち歩く

バンドを外さなくてもセンサーを脱着可能。磁力で装着し、外す時はロックボタンを押しながら取り外す

 センサー部分のバッテリー持ちは約10時間、充電時間は約1.5時間だ。ケースのUSB Type-C端子から充電する。個々のセンサー重量は8gと軽量。防水(IPX5/IPX8)、防塵(IP6X)対応なのはうれしい。

 センサーから送られるデータは、PCで使う場合も一度iPhoneまたはXperiaのmocopiアプリで処理したうえで送信される。センサーを接続する機器やアプリを限定することで、初心者が接続の相性といった部分でつまずきにくく、管理も簡単にしたのは有用といえる。

6つのセンサーをiPhoneまたはXperiaのアプリで認識して接続する。なお、センサー側にもLEDが搭載されている

 対応するスマホはiPhone 12シリーズ以降(SEは除く)、Xperia 1 II以降(Proは除く)と、近年の高性能なものが求められる。筆者としては、画面サイズや外部出力の利便性の面で、USB-C搭載のiPadにも対応してほしいところだ。

 モーションキャプチャーとしての性能だが、センサー数が6点と頭と手足の末端の動きと腰の動きしか取得できないにもかかわらず、機械学習処理により見る限り自然な体の動きを予測して再現できていた。苦手なシーンはあるので、そこに絞って開発しているという。センサーのモーション取得は50回/秒とのことだ。

ジャンプも含め、メリハリのある動作は自然なモーションを記録しやすい

膝立ちを含む立ち座りなど、センサーを装着していない関節を使う動きも機械学習処理による補完で自然に動く

 一方で気になる部分は、既存のBluetoothと加速度センサーを用いた低価格モーションキャプチャー製品と変わらないという点。接続にBluetoothを用いていることもあり、0.2~0.3秒程度は遅延する。また、加速度センサーを採用しているので、ジャンプも含めた速い動きには追従するが、極端にゆっくりとした動きや、寝転がるなど床との整合性も求められる動きは苦手とする。使い方や求める精度にもよるが、15分に1度は再キャリブレーションするのが無難とのことだ。

加速度センサーを使ったモーションキャプチャーは、床との距離を取得できないほか床上でのゆっくりとした動きも取得しづらい。このため、座る・寝るといった動作の時は一時的に体が床から浮く、床に沈むといったモーションが加わってしまいがちだ

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