K-FIRST、新しい働き方のニーズに「尖った」発想で不動産を提供
堺市発のイノベーションを創出する若きスタートアップ起業家連続インタビュー第2回
大阪府堺市は社会課題の解決に向けて、イノベーション創出エコシステムを構築するための様々な施策を展開している。その中核を担う新規事業に取り組む若いスタートアップの中から株式会社K-FIRSTにインタビューを行い、彼らの事業に対する思いや地域からの支援に対する期待などを伺った。
株式会社K-FIRSTは堺市で設立され、今は大阪中心部に拠点を持つ、オフィスビルに特化したビルの総合管理事業を運営しているスタートアップとして注目されつつある。創業者である同社代表取締役 田中 健司氏は事業承継した不動産の管理を行う中で、オフィスビル専門の管理事業の必要性を実感し、K-FIRSTを立ち上げた。
現在では、オフィスビルの清掃や点検、補修などの日常的なメンテナンスだけでなく、古くなり空室の増えたビルのリノベーションを行って収益性を高める築古ビル再生プロジェクト「Re:ZONE」へと事業範囲を拡大してきている。フリーランサーなどの増加により、小さなオフィススペースへの需要が期待されており、Re:ZONE事業は同社の成長を支える大きな柱へと伸びてきた。
旧来の維持と管理から空間の価値創造事業へと日本の不動産管理業の変革を進めるK-FIRSTの現在の事業概要、起業の際の思いや周囲からのサポート、今後の事業展望などについて田中氏に話を聞いた。
古いオフィスビルをリノベーションし、新しい利用者の求める空間へと変革する
―――まず現在の事業の様子をお伺いできますか。
田中健司氏(以下、敬称略):築古のオフィスビルを対象にした不動産管理事業と、築古のビルをリノベーションしてシェアオフィスに生まれ変わらせるRe:ZONE事業を展開しています。大手不動産事業者は築古で延床300坪以下くらいの小さめのビルをあまり扱いたがりません。やるときは壊してしまって新しいビルを建てています。我々は既存のものを活かすというところに可能性を感じて、そこに尖ってやってきました。
アクセスは良いが古くて長期間空室になっているフロアをビルオーナーから借りて、それをリノベーションして小さめの個室を複数作って賃貸していきます。大きなフロアを企業に貸すのではなく、スモールオフィスをフリーランサー中心に貸していくモデルになっています。
旧来のビルフロアの賃貸事業と違うのは集客のところで、利用者の90%以上を自社のWebサイトで集めています。Webで部屋の内覧をしてもらうので、現地に内覧に来る場合もそんなに時間をかけずに決めていただけます。
創業当初はビルオーナーの利益を第一に考えていましたが、今は利用者目線になって入居者が求めるスペースに仕上げています。大手事業者との違いは2点あって、1つは料金。これは受付やコワーキングスペースなど便利だけどフリーランサーはあまり求めていないようなスペースを無くし、その分利用料金を抑えるようにしています。
例えば下の図のビルはもとは左側のようになっていて、アクセスはいいのに10年くらい空きフロアになっていました。トイレも和式とか時代に合わない状態でしたが、Re:ZONEにモデルチェンジをして4部屋提供したら3ヶ月程度で満室になりました。
Re:ZONEの特徴の1つに「賃貸借契約」になっていることがあります。通常のレンタルオフィスだと「施設利用契約」というホテルと一緒の契約形態になってしまうことがあるんですが、それだと宅建などの免許が取れないとか制約があって融資を受ける際の障害になってしまいます。Re:ZONEですとそういったトラブルを避けることができます。
現在の拠点数は28拠点で、関西ではNo.1になっています。これまでは北浜とか大阪の中心地の出店が多かったのですが、最近は郊外の方に拠点を多く出しています。電車に乗るのが嫌なユーザーが多いので、関東でいうなら二子玉川とか大宮に当たるような、アクセスのよい郊外に拠点を出しています。