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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第78回

〈前編〉アニメの門DUO 数土直志さん(新潟国際アニメーション映画祭プログラムディレクター)に聞く

「アニメはまだ映画として見られていない」という現実を変えるための一手

2022年11月21日 15時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII

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「なぜ好きなのか?」を言葉にするための武器が学生に届いてない

まつもと 現在、新潟の大学で教えているのですが、「どうして(このアニメが)面白いと思うの?」と話を振ると、言葉で表現できない学生が多い。これはアニメに限った話ではないかもしれませんが、そこを掘り下げていく方法論や知識が(若い人の手に)あってもいいかなと思っていて。

数土 ああ、それはそうですね。欲しいと思ったときに、知識などが手に届く場所にあることは重要だし、欲している人たちに向けて「こんな道があるよ」と示すこともまた重要だと思います。

まつもと にもかかわらず、そうした知識が彼らの視界の中に入らない。たとえば藤津さんの著書など、アニメ評論について基準や基本にすべきものが彼らの手には届いてないなあ、という感があって。

 けれども、もしかしたら次のコーナーテーマであるところの新潟国際アニメーション映画祭が(新潟の大学に通う学生たちにとって)1つの機会になるのでは、と。NHKをはじめ多くのメディアで紹介されましたし、これまでの映画祭とは違うかも……と感じたので、そのあたりを数土さんに伺いたいと思います。

アートに偏らない、“俺たちが好きなアニメ”の映画祭

まつもと というわけで次のコーナーは「新潟国際アニメーション映画祭の狙い」に迫ります。

 まずはプログラミング・ディレクターを務める数土さんから、「こんな映画祭です」ということをお話しいただいてもよろしいでしょうか? 数土さんが運営するアニメーションビジネス・ジャーナルにも紹介記事がありましたので、そちらを表示しながら解説をいただければと思います。

数土 「新潟国際アニメーション映画祭」は、来年の2023年3月に新潟市内を中心に開催するアニメーションの映画祭です。

 ほかの映画祭と違うところは、コンペティションについては長編アニメーションに特化する点だと思っています。たぶん、長編に特化した映画祭って僕が知っている限りでは、先ほど言及したAnimation is Film映画祭以外にないはずです。

 ただ、押井さんの発言などで誤解されている方もいらっしゃるのですが、いわゆるアートアニメーションを排除するという話ではありません。すべてのアニメーションはある意味、商業作品と思っているので、幅広い作品を均等な目で見ていきましょう、というのがモチーフですね。

 そして、「日本からの発信」をすごく重要視しています。つまり、これまでアニメーションの評価というものはヨーロッパと北米、特にヨーロッパからの視点が非常に強かったのですが、もう1つ別の視点があってもいいんじゃないか。

 それはいわゆる日本的な視点、あるいはアジア的な視点、もっと言ってしまうと、これまでのトラディショナルな見方に対して、新しい、現代の見方を提示できればと思っています。

まつもと いわゆる「世界4大アニメーション映画祭」の1つは広島で開催されてきましたが、じつは令和2年に終わってしまいました。このままだと国際的な地位を持つアニメーション映画祭が日本、ひいてはアジアからなくなってしまう……そんな危機感も背景にあったのでしょうか?

数土 いや、それはないな。新千歳空港国際アニメーション映画祭は非常に良い映画祭だし、広島も別の切り口で新たに始まります。山村先生(山村浩二/ひろしまアニメーションシーズンアーティスティック・ディレクター)と土居さん(土居伸彰/ひろしま平和文化祭メディア芸術部門プロデューサー)という非常に信頼できる方がやっています。

 東京でも、東京アニメアワードフェスティバルがあるので、ゼロってわけではないのだけれど、(新潟国際アニメーション映画祭は)まったく違う切り口を提示できるんじゃないかなという気がしているんですよね。

まつもと ここの定義が難しいところで。私も広島は取材したことがあります。短編が多く、かつ我々が日常的に見ているTVアニメでもなく、芸術性が評価される――芸術という言葉の定義も難しいですが――一般的にアート作品と呼ばれるものが中心でした。

 翻って、新潟国際アニメーション映画祭は劇場映画が対象ですか? 劇場……これはアカデミー賞でも論点になりましたよね。たとえばNetflixで独占配信された長編も映画として扱うのか……そのあたりの細かい定義は決まっていますか?

数土 劇場にかからなくても長編であれば対象になります。当初はネットアニメやシリーズアニメも入れたかったのですが。

まつもと 具体的な尺は?

数土 40分以上と現在は定義しています。

まつもと まあ、30分だとTVアニメの1話になるし。

数土 30分だと短編枠に入るのでは。

まつもと なるほど、40分以上の長編が対象ですね。このコーナー冒頭で「誤解されている」とありましたが、インディーズのアニメクリエイターの方が制作した作品でも、40分以上の尺があればエントリーできるのでしょうか?

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