業務を変えるkintoneユーザー事例 第159回
メリットを超えるデメリットを見極めてムダな時間を削減
みんな便利に使っているのに、あえて使わなかったkintoneの機能とは?
2022年10月07日 10時00分更新
このアプリのこの機能が便利だ、という話は先輩ユーザーからよく聞くものだ。しかしテクノルの上野 博俊氏は「kintoneのユーザーであれば必ず使っている『あの機能をあえて使わなかったら活用の輪が広がった』という話です」と切り出した。いったいどの機能を使わず、どのような効果を得たのか、kintone hive 2022 sendaiを見てみよう。
本当に成したいことは何なのかを見直した結果、kintoneでアプリを作り直すことに
青森県八戸市に本社を構えるテクノルは、青森県内でIT、オフィスデザイン、デジタルプロモーションを手がけている。全国の市場に向けて、エンドポイントセキュリティ製品「MREP」を展開するインターネットセキュリティ企業としての顔も持つ。そんなテクノルで重視されているのがセッション、最近では1on1ミーティングとして知られるマネジメントだ。対面で聞き取った営業活動の内容を記録し、いいところは会議で共有した。
「セッションの情報を記録するために、当時はあるシステムを使っていました。多機能なシステムではありましたが、使い勝手に不満の声が上がっていました」(上野氏)
当時使っていたシステムを仮に「Aシステム」と上野氏は呼んだ。Aシステムは多機能で入力項目が多く、営業活動の履歴1件を入力するのに2分ほどかかっていた。紙にメモを取れば30秒で済むような簡単な内容でも2分かかるのは、確かに辛い。しかし全社の業務で見ればAシステムを使うことのメリットも多かったので、なかなか入れ替えるには至らなかった。
Aシステムを使い始めて3年目、上野氏らはついに不満解消に向けて動き出した。「苦労して入力しているけどこのデータはどこで使われているのか」「セッションではなく会議のためのデータになっていないか」などの不満が、現場から噴出していた。
「私たちはデータ入力をしたいのではなく、セッションをしたかったのです。それなのに入力する項目が多すぎました。実際、その当時入力していたデータのうち、セッションに本当に必要な項目は多くはありませんでした。それに対してAシステムでは入力項目も、入力までのクリック操作も多すぎました」(上野氏)
不満を裏返せば、求めるシステムの要件はわかる。少ないクリック数で入力画面を開くことができて、最低限の項目だけを入力できるシステムだ。上野氏はさらに条件を加えた。すぐに修正できること、簡単であること、場所を問わず使えること、ユーザーが多いことの4つだ。これらの条件で選ばれたのが、kintoneだった。
「特にユーザーが多いことは情報を得やすいという安心感につながるので、地方においては重要だと考えています」(上野氏)
kintone導入成功のキーは、最適な仕組みを組み合わせたこと
kintoneを使って、活動履歴アプリが新たに構築された。入力画面までのクリック操作を少なくするため、お知らせエリアに大きくわかりやすいアイコンを配置した。アイコンをクリックして開いた画面で顧客を選択し、「活動入力」ボタンをクリックすると活動履歴を入力する画面が開く。顧客名を入力して検索する場合もあるが、それ以外に必要なクリック数はたった4回だ。入力する項目数も精査した結果、Aシステムでは4画面あった入力が1画面に収まるようになった。
「入力画面はかなりシンプルになり、こんなに少なくてよかったのかと思ったほどです」(上野氏)
さらに現場のユーザーを惑わせないよう、公開しているのは顧客管理アプリと活動履歴アプリの2つだけ。マスターを管理するようなアプリが背後にあるものの公開はしておらず、ユーザーを惑わせない工夫がなされている。また、kintone導入がうまく進んだ背景には、最適な仕組みを選択できたということもあっただろう。全てをkintoneに移行するのではなく、Aシステムのままで残しているものや、あえてExcel管理にしたものもあった。
「何を成したいのか、という議論がもっとも重要だったのだと思います。成すべきことを見極めて、それに最適なシステムを適材適所で選択できました」(上野氏)

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