業務を変えるkintoneユーザー事例 第159回
メリットを超えるデメリットを見極めてムダな時間を削減
みんな便利に使っているのに、あえて使わなかったkintoneの機能とは?
2022年10月07日 10時00分更新
あえて使わなかった“あの機能”とは、グラフ機能とメンション機能
さてここからが注目のポイントだ。セッションの後半ではテクノルがあえて使わなかった“あの機能”と、それによって得られた効果が語られた。
「私たちがあえて使わなかった機能とは、グラフ機能とメンション機能です。みなさんはお使いだと思いますが、私たちはこれを使いませんでした」(上野氏)
kintoneのグラフ機能は好きなときにオンデマンドで集計できて、見たいときにいつでも集計結果を見ることができる便利な機能だ。しかし多忙な現場においては「いつでも見ることができる」は「今見なくてもあとで見ればいい」になる恐れがあった。そこで上野氏らがとったのが、kintoneのグラフ機能をあえて使わないという方策だった。
「kintoneアプリからCSV出力してExcelに読み込ませ、あえて人手を介して集計することにしました。見やすいグラフに加工して共有、Garoonでアナウンスします。そうすると、現場の人は『ヤベッ』となるんです」(上野氏)
現場の人が「ヤベッ」となる理由は、データ入力の漏れがそのままグラフに反映されて皆に共有されてしまうからだ。データを入力していないことが周知されてしまうので、次回からきちんとデータを入力するようになる。見てもらう機会を作るだけではなく、データ入力の精度も高まる一石二鳥の施策となった。
もうひとつの使われなかった機能、メンション機能も一般的には便利な機能と言われている。新着情報があればEメールで通知され、kintoneトップページにも表示されるので、チェック漏れを防ぐことができる。ところが上野氏はこの便利を恐れたのだと言う。
「当時、私は営業マネージャーをしておりました。マネジメントしていた6名がそれぞれ毎日8社程度を回って活動履歴を書き込みます。1日に48件、1週間(5営業日)で240件、1ヵ月(22営業日)だと実に1,000件以上の活動履歴を見なくてはなりません。全てでメンション機能を使うとは限りませんが、もしメンションが活発になったら1,000件の通知が来るかもしれないという状況にあった訳です」(上野氏)
さらに、上野氏が受け取る情報はkintone経由のものだけではない。活動内容の緊急度によっては口頭で伝えられることがあるし、Garoonで受け取る連絡もある。kintoneのメンションがここに加わると、収集がつかない事態になることは容易に想像がつく。
「メンション機能を使う代わりに、自分に関係する情報を見ることができる一覧画面を作りました。マネージャー向けには『優先する組織』という一覧表示を、営業担当者向けには『活動者が自分』という一覧表示を用意しました」(上野氏)
また、活動履歴アプリのレコード内にマネージャーからのコメントを記入する欄を設けた。レコード内の一項目としてマネージャーがコメントを書き込めば、一覧表示で表示させることができるからだ。レコードを開かなければ確認できないkintoneのコメント機能とは違い、一覧表示できるようになる点が素晴らしい。
有休取得日数、営業実績などの指標で向上を確認、他部署への展開も
導入から3年、kintone導入の効果は随所に表われている。他の施策も合わせて取り組んだ結果ではあるが、営業担当者の有給休暇取得日数の平均は、2018年度から2019年度で年間12.8日から17.0日に増加した。単純計算で、前年度比132.8%となる。生産性向上の効果も見られている。営業担当者1人実稼働日1日あたりの実績計上金額は、同じく2018年度から2019年度で107.6%となっている。
「kintoneの活用も促進されました。『こんなデータ取れる?』『ここ使いづらいから直して!』という声が社内から聞かれるようになりました。活用が促進されれば情報が蓄積され、情報が蓄積されれば価値が生まれるので、他部署からも使いたいという声が上がります。そうして活用の輪が広がりました」(上野氏)
元々営業本部だけで使っていたkintoneだが、今では環境デザイン部門、CD事業部、総務部、経営企画本部でも利用している。アプリ数も99にまで増えた。成果を見た親会社でもkintone導入を決めるなど、活用は順調に広がっている。
「今後に向けた反省点もあります。アプリはシンプルに、ということです。複雑になると、『すぐ修正できる』というkintoneの美点が損なわれるので、カスタマイズはあまりせずプラグインを活用することを心がけています」(上野氏)
最後に上野氏はいわゆる「2025年の壁」が近づいていることにも触れ、いま使っているシステムはやりたいことを実現できているか、機能を使いこなそうとしていないか、自社のシステムを見直してみてほしいと語りかけた。
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