日本eスポーツ連合(JeSU)が「日本eスポーツアワード(仮称)」を発表
ネモ選手などが日本eスポーツ産業の現状や未来の展望を語り合う「Future of esports」取材レポート【TGS2022】
日本eスポーツ産業の投資効果と、今後の課題
次の議題は、日本eスポーツ産業の投資と課題について。まず、eスポーツなどの影響により、ゲーミングパソコンの売り上げは年々増えていると杉澤氏。スポンサー企業としてビジネスを進める際はリソースに限りがあるため、より効率的に稼ぐ方法が求められるそうだ。
新規事業としてeスポーツチームを立ち上げた企業は、長期的にスポンサードすることで双方の企業価値を活かせるビジネスに発展しやすい。まだ立ち上げてまもないeスポーツチームが成長すれば、パソコンの売れる環境を構築できるのではないか。目先の結果ではなく、双方がWin-Winになれるような、長期的な関係づくりが必要だと杉澤氏はまとめた。
杉澤氏の話を受け、長期的に見て投資してほしいと語るネモ選手。プロゲーマーを目指す若者たちは大学を辞めてeスポーツの世界に参入するも、投資しようとしているチームが撤退してしまった場合、選手たちの将来はどうなるのか……。このように、長期的なスポンサードが選手生命の維持につながるのでは、とネモ選手はコメントしていた。
JeSUは、高額賞金や賭博行為といった法的課題についてはほぼ整理済みだという。しかしながら、eスポーツの裾野の拡大や地方創生、人材育成などの課題はまだ多く残っており、どこから手をつければよいか困っているそうだ。
この問いに対してネモ選手は、選手の定着率を挙げた。その際、ライセンスが発行されても仕事が来ないケースがあるため、現役eスポーツ選手に安定的に仕事を与えられる仕組みが望ましいと語っていた。また、プロ活動中にある程度別の仕事を体験させるべきだとネモ選手。ストリーマーや解説などのセカンドキャリアについてしっかり考えることも大事であると意見を述べた。
続く杉澤氏は、コスト面についての課題を挙げた。eスポーツ関連のイベントが増えるのは良いことだが、規模が大きくなるほどコストも増えてしまうことが懸念だ。スポンサー側としては、費用対効果についてシビアに見ていく必要があり、慎重に判断しなければならないのだそうだ。
また、杉澤氏はeスポーツの部活動化についても触れた。部活動をするうえで、数十万もするゲーミングパソコンを用意するには当然コストがかかる。その影響で部活動へのモチベーションも下がるほか、部活動の運営も難しくなってしまうため、eスポーツの裾野が狭まる恐れがあると懸念を示した。
eスポーツ系の部活動もほかの部活動と同じように浸透してほしいものだが、運営をするにもお金がかかってしまう。企業の援助だけだとさすがに難しいが、行政からの助成金などがあればこの問題を解決できるのではないかと杉澤氏はコメント。さらに指導する人も重要で、eスポーツ選手のセカンドキャリアとして雇用の創出ができるかもしれないという期待を語っていた。
上田氏は、ハードウェアの問題によって部活動の支援ができていない現状を語った。地方自治体によっては財政に差があるため、文部科学省と連携して底上げをしなければならないという。また、教える人材については経済産業省のデジタル関連部活支援を進めているそうで、eスポーツ選手を学校に派遣するといったことを検討しているようだ。
日本eスポーツ市場の発展に向けて、岡田氏は「eスポーツはかっこいい!」という空気感をつくることが必要だと語った。まだeスポーツの認知度は低いとし、ある子どもがeスポーツ選手になりたいと決心したところ、親から勘当されたというエピソードを例として挙げていた。eスポーツの認知を上げていくことが、市場の発展につながるのではないかということだ。
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