ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第674回
Zen 5に搭載するAIエンジンのベースとなったXilinxの「Everest」 AIプロセッサーの昨今
2022年07月04日 12時00分更新
SW PEの内部構造はMIMD
ではそのSW PEはどんな構造か? というのが下の画像だ。ラフに言えば1つのSW PEのエレメント(ここではTileという表現になっている)は、演算器とローカルメモリーを組み合わせた構成である。で、これが格子状に多数、メッシュ構造で接続されているという格好である。
メッシュ構造にした上で、それぞれのSW PEを連結することで、処理のパイプラインを構築することもできる。
要するにこのSW PEはMIMD構成になっているわけだ。おのおののSW PEは別々の命令を実行可能であり、処理の内容に応じて複数のPEを組み合わせて最適な形で実行可能である。もちろん同一の命令を実行することもできるが、その場合はそれぞれのSW PEに同じプログラムをロードして、同時に実行させるという話であって、その意味ではSIMDとは異なる。
ちなみにこの割り振りはプログラマブルであり(つまり自動では行なわれない)、プログラマー側で考える必要があるが、結果から言えばこれはVitis AIと呼ばれるツールで割り振りを管理できるので、実はそれほど難しいことではない。
これまでの画像は2018年8月に開催されたHotChipsでの説明であり、この時はまだSW PEの中身の詳しいところは未公開だったが、同年10月に開催されたXDF(Xilinx Developer Forum) 2018の開催に合わせてホワイトペーパーがリリースされ、これでもう少し細かい話が見えてきた。
まずSW PEあらためAI Engineという名前になったブロックの内部構造が下の画像だ。RISC風の32bit演算ユニットに、Fixed Pointの512bit SIMDエンジンとFloating Pointの512bit SIMDエンジンを組み合わせるという独特の構造である。プログラムメモリーは16KB、データメモリ-は32KBと決して大きくないが、これは逆に言えば1つのAI Engineであまり複雑な処理をさせるつもりがない、という裏返しでもある。
さて、SIMDエンジンは、別にRISCユニットから呼び出されるわけではない。というのは、このAI Engineの命令フォーマットは下の画像ようにVLIWになっている。
RISCユニットは同時2命令実行の構成で、他にロード×2、ベクトル演算×1、ストアー×1で同時6命令が実行可能、ということになっている。ただここで言う“Instruction”と、いわゆるOpsとはまた別らしい。というのは、2019年のHotChipsでは、下の画像が公開されている。
このことから、以下のどちらか(あるいはこれ以外のなにか)の数え方をしているのではないかと思われる。
- 実はRISCプロセッサーの中で命令変換がかかっており、2つのRISC命令が実際には3~4個の内部命令(Ops)に分解されて実施されている
- Vectorプロセッサーでは、型変換(vec128int8/vec8fp32)が自動的に行なわれ、これを加味すると7~8命令相当になる
ここでVectorユニットは浮動小数点と固定小数点の両方が同時に動くことは基本的に考慮されていないと思われる。というのはAI/機械学習向けは浮動小数点を使うことがほとんどで、一方5Gを始めとする無線向けでは以前からDSPなどで固定小数点が利用されており、これに向けた格好である。
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