デジタル部門以外の社員がデジタル人材へ、ノーコード開発による「デジタルの民主化」への道程
LIXILがAppSheetを用いたノーコード開発を推進 約4000名が1万7000のアプリ作成へ
グーグル・クラウド・ジャパンは、ノーコードツールのAppSheetの概要について説明。AppSheetの国内導入事例のひとつとして、建築材料・住宅設備機器の最大手であるLIXILの取り組みを紹介した。社内で認定された3963人が1万7007件のアプリを開発し、680件のアプリが本運用されているという。
野良アプリを増やさず、標準化した環境での運用が可能
グーグル・クラウド・ジャパン Google Workspace事業本部ソリューション営業部営業統括部長の小林直史氏は、「AppSheetは、生まれたアイデアを放置せず、デジタルを使って大きくしていくことができるツールである。AppSheetを利用しているユーザーの約75%が、コーディングスキルがない、あるいは初級レベルの人であり、これを使うことで、ユーザーが開発者として活躍できるようになる。ノーコードアプリ開発による『デジタルの民主化』に貢献できる」と述べた。
AppSheetでは、統制をきかせた運用や、現場の開発傾向の管理、アプリの利用状況などの管理ができ、データの利用監視なども可能になるという。また、データベースや各種スプレッドシートとの連携、APIを通じたエンタープライズアプリケーションやデータとの連携も可能だという。
「野良アプリを増やさずに、標準化した環境のなかでの運用が可能になる。また、デザインテンプレートを活用することで、電子サインやレポート作成などを容易に追加できる。OCRをはじめとしたAIを活用した各種機能との連携も可能である。イベントドリブンの定義により、設定したプロセスやタクスを自動的に処理、運用できるようにもなっている。企業向けの仕組みとして開発されたものであり、現場で利用するアプリ開発に必要な機能が揃ってる」と、AppSheetの特徴を強調した。
また、先ごろ、Googleが主体となって設立した日本リスキリングコンソーシアムのなかで提供するGoogle Cloud Skills Boostsでは、AppSheetに関する9種類のオンライントレーニングを無償および有償で提供することも紹介した。
会見では、91%の企業がデジタル化への取り組みを行っていること、エンタープライズソフトウェアに対するITコストは年率10.5%ずつ増加していることを示しながら、「企業においては、いかにコストを抑えながらDXに対応するかが課題になっている。また、IT部門はデータの信頼性を重視し、ガバナンスをきかせた運用を行いたいと考えるのに対して、ユーザー部門はリアルタイムなデータ活用やアジリティを重視したいと考え、相容れない部分が多いのが実態であるが、これらの課題を解決できるのが、ローコード/ノーコードによるセルフ開発ツールになる」と位置づけた。
定型業務で非システム化だった領域にはRPAが広がり始めているが、ローコード/ノーコードツールは非定型業務領域でのシステム化に貢献すると見ている。
デジタル部門リソースの限界 デジタルの民主化へ
一方、LIXILでは、AppSheet を活用したノーコード/ローコードによるアプリ開発事例について説明した。LIXILは、2021年4月からノーコード開発プロジェクトを数人規模でスタート。現時点では、アプリ開発ができるデジタル人材として3963人が社内認定され、1万7007件のアプリを開発。そのうち、680件のアプリが本運用されているという。
LIXIL常務役員 デジタル部門システム開発運用統括部リーダーの岩﨑磨氏は、「コロナ禍でデジタルを活用した業務効率化への期待が高まるものの、デジタル部門のリソースだけでは、すべてのアプリ開発のニーズに対応するには限界があり、むしろ、デジタル部門リソースの限界が、LIXILの成長において、大きな阻害要因になっていた。単純にデジタル部門の陣容を増やすということもできない。発想の転換が必要であった」とする。
こうしたデジタル部門のリソースの限界を打破するために、同社が着目したのが、ノーコード開発による「デジタルの民主化」であった。「デジタル部門に対する要望で多いのは、目の前の課題をちょっと改善することで効率化を高めたいというものであった。簡単な改善で済むのだが、それがデジタル部門ではバックログになっていた。そこを現場の社員自らが改善できるように、デジタル部門以外の社員がデジタル人材となり、ノーコードツールを導入することによって解決できると考えた」という。
LIXILには、すでにRPAで培った現場主導の業務改革の地盤があり、「デジタルの民主化」の土壌ができていた点も功を奏した。また、開発スキルを持っていない人が、YouTubeを見て、何日で開発ができるようになるかを検証した結果、1~3日で簡単なコードを書けると判断できたことも、「デジタルの民主化」を促進することができる手応えにつながったという。