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デジタル部門以外の社員がデジタル人材へ、ノーコード開発による「デジタルの民主化」への道程

LIXILがAppSheetを用いたノーコード開発を推進 約4000名が1万7000のアプリ作成へ

2022年06月27日 11時30分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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リスクがあるが、それを許容できる範囲を示す

 一方で、課題となっていたのは、これまでの社内の文化を崩すことだった。「これまでは、独自の開発を禁止したり、ツールの利用を禁止していたりといった制限ばかりが多かったが、その発想を原点から変えて、リスクはあるが、それを許容できる範囲を示したフレームワークを確立することで、そのなかで、社員がある程度自由に開発し、現場を自分たちで変えていくように意識を変化させることに取り組んだ」という。

 ノーコード開発プロジェクトが大きく動いたのは、2021年7月に開催した役員および幹部社員を対象にしたワークショップであった。3回に渡って開催したワークショップでは、参加者全員がノーコードでのアプリ開発を行い、発表会まで開催。「LIXILの経営幹部は、全員が、AppSheetを使ったアプリ開発の経験がある」と胸を張る。これがノーコード開発のメリットを、経営幹部に浸透させることに大いに役立ったという。「経営幹部が開発した実績を持つため、すべての社員が、自分ができないとは言えない環境ができた」ことも、ノーコード開発を促進させる土壌となった。

 また、全社横断的な視点での活動や、ルールづくりなどを行うために、8人で構成される「No-Code CoE」と呼ばれる組織を設置。部門代表のノーコード先行人材として、250人で構成した「ノーコードチャンピオン」を通じて、社内にノーコードを広げていく体制を構築した。

 さらに、ノーコードチャンピオンと密に連携しながら、アプリを横展開していくための「Digitization Core Team」や、ノーコードチャンピオンから学び、デジタルツールを活用する「DX Members」により、ノーコードチャンピオン任せにならない開発環境を実現。これらの活動が回転することで、社員が主体的にアプリを開発し、現場の改善を進める環境が整ったという。さらに、デジタル部門のリソースも、本来の専門家として必要とされる分野であるSAPによる基幹システムや、SalesforceによるCRMのほか、セキュリティガバナンスの担保、APIレイヤーの設計などの領域に当てられるようになったという。

ノーコードチャンピオンとの連携

AIを組み合わせた現場向けのアプリも

 LIXILがAppSheetを採用したのは、さまざまなデータを蓄積しているLIXIL Data Platformに効率よく接続できること、そこで利用しているBigQueryとの親和性を考慮したことが理由だという(関連記事:レガシー基幹システムをGoogle Cloudに移行したLIXILのアプローチ)。

 開発したアプリでは、リアルタイムで情報が把握できる「見積管理・分析アプリ」、道交法改正にあわせて義務化された運転者の運転前後のアルコールチェックを管理する「アルコールチェックアプリ」、サッシ向けアルミ形材の在庫画像を活用して集計結果を棚卸に活用する「画像認識AIを搭載したアルミ形材棚卸アプリ」などがある。

AIを活用したアルミ形材棚卸アプリ

 LIXILデジタル部門コーポレート&共通基盤デジタル推進部主幹兼次世代開発基盤チーフプロダクトオーナーの三浦葵氏は、「これまではデジタル部門内では優先度があがらなかった開発案件を、現場の社員自らがアプリを開発して改善する動きが加速した。表計算ソフトを多用した業務の見直しと整理にノーコードが活用されるケースが最も多い」とした。

LIXILデジタル部門コーポレート&共通基盤デジタル推進部主幹兼次世代開発基盤チーフプロダクトオーナーの三浦葵氏

 また、「ユーザー自身が短期間でデリバリーできる環境も整っていることも活用の広がりに貢献している。また、現場のデジタルネイテイブ世代の若手社員が、斬新なアイデアをもとにアプリを開発するといった例もある。これは、潜在的なデジタル人材の発掘にもつながっている。また、9カ月間という短期間で、1万7000件ものアイデアが生まれ、それがアプリとして開発されたという成果も重視している」と述べた。

 LIXILの社内全体の意識改革も促進。デジタル化はデジタル部門が行うという考え方から、AppSheetの導入によって、現場中心の開発体制へと移行したことで、「現場主導型DX」という新たな企業文化の礎を構築できたと自信をみせる。今後、LIXILでは、現場主導で開発したアプリの利用促進とともに、現場主導アプリ開発の文化を、LIXILのニューノーマルとして定着させたいとしている。

 AppSheetはGoogle Workspaceファミリのひとつとして提供されているが、現時点では日本語対応は行われていない。日本語へのローカライズに向けた検討を鋭意進めているという。

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