最近、川越へ行く機会が何度かあったのである。観光じゃなくて、埼玉県川越市の市制100周年記念イベントの一環として行われるシンポジウムで登壇したり、記念に行われる街歩きのガイドをする関係で、下見やら打ち合わせやらで通ったのだ。
川越は「小江戸」と言われるくらい、江戸との関係が深く、江戸(つまり東京だ)に比べて古い街並みや史跡がいっぱい残ってる人気の観光地。古い街は古いだけあって、ときどき猫に出会うのである。冒頭写真は、とある古いお寺のお堂の縁の下でくつろいでた2匹の猫。さすが猫。観光客がやってこなくて落ち着ける場所をよく知っている。
古い写真を探ってみると、一番古い川越猫写真は2006年(平成18年)の正月だった。とある神社に参拝に行った折に出会った日向ぼっこ猫である。カメラはニコンのD200。CMOSセンサーになる前のCCD時代のカメラだ。
次は2009年。カメラはPENTAXのK-7。3年前を思い出して同じ場所に来てみたら、すぐ脇のちょっと自然が残ってるところがあり、その林の中から「にゃあ」と言いながら出てきたのである。
この頃はミラーレス一眼が始まるかって時代。パナソニックのGH1も持っていたのでそちらでも。
やがて平成から令和になり、2021年の末、川越へ行ったついでに「そういえば、あの神社にまだ猫はいるかな」と久しぶりに足を延ばしてみたのである。そしたら、2006年に出会ったのと同じ場所に猫が。もちろん違う猫だし、石碑の南側か北側かという違いはあるんだけど、いたのである。
しゃがんで写真を撮ってたら、こっちにとことこと走ってきて足元に座ったので慌ててiPhoneに持ちかえて撮影。予想外の行動にちょっとびっくりしつつ、撫でてあげた。
ちょいと街外れで少し自然が残ってる広いエリアとはいえ、15年以上前と同じ場所で猫と出会うとは、よほど住みやすい場所であり、なおかつ近所に世話してる人がいるのだろう。
ただ当時と違うのは猫の耳。よく見ると右耳がカットされてる、つまり去勢されてるのである。猫を捕獲して、去勢手術を施して、同じ場所にリリースすることで外猫をそれ以上増やさない「TNR」という活動のおかげだ。
さて、川越といえば古い寺社が多く残っていることでも有名で、土日ともなると観光客が集まってくるのだが、どうしても著名なところに集中しちゃうのだよね。でも味わい深い寺社はそういうところだけじゃないのだ、といろいろと回りながら写真を撮ってると、なんか視線を感じる。そっとそちらに目をやると、古ぼけた赤い門の柱の陰からこっちをじっと見てるヤツがいたのだ。いかにも隠れて観察してますって感じがいい。
お寺の中に入ろうとやってきたのだけれども、門前で私がカメラを構えてたから気になって様子を見てるのかも。ああ、それは悪かった。どうぞどうぞと、知らないふりをすると、とことこと入っていったのである。
で、こちらはお寺をぶらぶらして、もうひとつある別の門から外に出ようと思ったら、さっきの猫がいるやん。しかも気持ちよさそうに日向ぼっこしてるのであった。そこに行きたかったのか。
このキジトラもちゃんと片方の耳がカットされている(去勢済みの印)。冒頭写真の縁の下猫もカットされてた。
そのまま平和に生をまっとうできますようにと思う。
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筆者紹介─荻窪 圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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