2020年2月末、Xperia 1 IIの発表と同時に開発中というふれこみで発表された、5Gのミリ波に対応した映像制作などのプロフェッショナル向けモデル「Xperia PRO」。
しかしその後、いつまで経っても出てくることはなく、もはや忘れ去られようとした翌年の2021年1月、デジタル一眼カメラ「α1 ILCE-1」と同時に発表。記憶も新しい2月10日に発売となりました。
Xperia 1 IIをベースにしたモデルで、最大の特徴は5GのSub 6に加えてミリ波に対応したことです。従来の4Gや3Gと電波特性が大きく変わらないSub 6に対して、光に近い電磁波で指向性が強くなるミリ波は通信の安定性を保持するのが難しいとされています。
そのため、5Gミリ波アンテナを筐体の上下左右4ヵ所に備え、低誘電率素材を採用するなどして、ハードウェアとして360度全方位の通信の受信感度を高める処理をしています。失敗が許されない映像配信の現場などでは、安定した高速データ通信が必須なため、5Gミリ波を受信している方向や通信のデータ送受信速度を可視化できる「Network Visualizer(ネットワークビジュアライザー)」アプリも備えています。
6.5型の4K有機ELディスプレー(3840×1644ドット、21:9)を、外部モニターとすることで小型・軽量の4K HDR対応のサブモニターとして使用可能でした。レンズ交換式デジタル一眼カメラやプロフェッショナル向けカムコーダーの映像をうけて「Xperia PRO」の画面をそのままモニターとして利用したり、外部カメラを利用してライブストリーミングといった使い方もできたのです。ディスプレーは、HDR規格、BT.2020色域、10bit入力に対応し、ピンチイン・ピンチアウトで簡単に画像の拡大縮小など、細部のフォーカスや忠実な色確認が直感的な操作が可能です。
本体サイズは、約75×171×10.4mm。重さは225g。おかげでXperia PROはXperia 1 IIよりも一回り大きく手にするとかなり大きく感じます。5Gミリ波アンテナを本体の上下左右4ヵ所に備えたり、高負荷時の熱対策などを考慮したためであり、デザインなどは二の次です。ボティー材質はきらびやかな金属感はなく、樹脂にシボ加工が施された手触り。背面にあるSONYロゴもエンボス加工されて白地で塗装されているあたりが、昔から脈々と続くソニーの業務機器感を醸し出しています。ダメ押しでサイドにはゴールドに輝く「PRO」のロゴもあり、この佇まいはソニー好きには刺さります。そして、本体下部にはXperiaとしては初のmicroHDMIの入力端子がありました。
カメラはXperia 1 IIと同じく3つの約1200万画素センサーと3D ToFセンサーを搭載。本体上部には、3.5mmイヤホンジャックを搭載し、「Dolby Atomos」やハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE Ultimate」なども業務用ながら備えつつ、「おサイフケータイ」や「ワイヤレス充電」といった便利機能はバッサリと削除され、通信効率を真っ先に優先しています。
Xperia PROの見た目は樹脂素材でボディーサイズもXperia 1 IIより一回り大きく、ワイヤレス充電やおサイフケータイも非搭載となるなど、スタイリッシュさとは程遠い無骨なデザインで、価格はXperia 1 IIの2倍となる25万円という、仕様も価格もまさに業務用と完全に振り切った感がすさまじいモデルでした。
しかも、この時点で2021年の新モデル(Xperia 1 III)が登場する直前のタイミングで、はたして誰が買うのか!? と思いながら買った記憶があります。
Xperia初のミリ波対応ということもあり、その恩恵に預かるべくミリ波対応エリアを探しては奔走しましたが、ちっともミリ波のスピード感を味わうことができず(行ける限り大阪から福岡まで各所に訪れてはチャレンジしました)。インフラが間に合っていないジレンマを体験することになるとは思ってもみませんでした。
本来の武器を使えずに涙目にはなりましたが、救いはHDMI入力を装備してシンプルなデジタル一眼カメラの外部モニターとなるところです。USB Type-Cから変換アダプターを経由すれば、Xperia 1 II/Xperia 5 IIでも同様の接続はできますが、ケーブル1本でつなげるシンプルさにはかないません。また、サイドにあるショートカットキーは、登録したアプリの起動ボタンとして使えるため、Twitter一発起動などとても便利です。Xperia 5 IIでは、Googleアシスタントの呼び出ししか使えなかった事を考えると汎用性の高さは抜群です。
メモリーが12GB、ストレージが512GBの容量の大きさも、買ったことを納得させる理由にもなりましたが、その後、Xperia 1 IIIの超ハイスペックに愕然とするのはこの数ヵ月後のことです。
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