連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第16回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 1月15日~1月21日分
DXの意味を理解して取り組む企業はごく少数?、SaaS普及で求人急増の職種、ほか
2022年01月24日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2022年1月15日~1月21日)は、国内企業のDX取り組み状況、マルウェアに利用されるファイル共有サービス、SaaS普及で人気急上昇の仕事、企業CEOによる景気予測、第3のプラットフォームに関する最新データを紹介します。
■[DX]7社に1社しかDXの意味を理解して取り組んでいない(帝国データバンク、1月19日)
・DXについて「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業は15.7%
・本格的なDXに取り組む企業は37.4%
・取り組む上での課題は「人材」「スキルやノウハウ」
全国2万4000社(有効回答は約1万800社)のさまざまな規模・業種の企業に、DXについて聞いた。調査期間は2021年12月〜2022年1月5日。「DXの言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業はわずか15.7%、「意味を理解し取り組みたいと思っている」は25.7%。企業規模では大企業、業種では金融、情報サービスでDXへの理解と取り組みが進んでいる傾向が見られた。取り組み内容は「オンライン会議設備の導入」(82.7%)など初期段階のものが多かった。課題としては人材やスキル不足が多く挙がった。
■[セキュリティ]マルウェア拡散に悪用されるファイル共有サービス、OneDriveとDiscordがダントツ(デジタルアーツ、1月17日)
・マルウェア拡散に悪用されるファイル共有サービスを調査、OneDriveとDiscordが多い
・2021年11月に検出された悪用URL数はDiscordが7706件、OneDriveが7531件
・Discordではマルウェアの90%が「Dridex」
マルウェアの配布サイトとして、著名なファイル共有サービスが悪用されている。中でもOneDriveとDiscordの2つが突出して多いという。Discordで報告されたマルウェアの9割以上は「Dridex」、一方でOneDriveでは「Dridex」(16%)、「BazarLoader」(22%)、「Trickbot」(19%)などに分散している。デジタルアーツでは、ビジネスで使わない不要なクラウドサービスはURLフィルタリングを活用してアクセスさせないよう助言している。

悪意あるURLを共有するプロジェクト「URLhaus」で2021年9月~12月に報告されたURLから、デジタルアーツがサービス名を分類(IPアドレス形式は除外)。「Discord」と「OneDrive」が突出して多かった
■[仕事]人気急上昇の仕事は「カスタマーエンジニア」、大量退職時代が日本にもやってくる? (1月18日、リンクトイン・ジャパン)
・人気の仕事トップ3は「カスタマーエンジニア」「インサイドセールス」「ソフトウェア営業」の順
・SaaSが日本でも急拡大。「インサイドセールス」などが上位にランクイン
・バックオフィスのニーズが増加
LinkedInが扱う求人データから、過去5年間で需要が上昇した職種のトップ10を算出した。日本におけるSaaS利用の広がりを受け、「インサイドセールス」(2位)、「エンゲージメントマネージャー」(4位)、「カスタマーエクスペリエンスマネージャー」(5位)などが増加。経営を支えるバックオフィス部門の増加もトレンドで、トップの「カスタマーエンジニア」のほか、「採用スペシャリスト」(7位)などが入った。米国では「大量退職時代」として人材の流動性が高まっており、日本でも同じような傾向が見られるとのこと。
■[ビジネス][経営]CEOの77%が「2022年の世界経済は回復する」(PwC Japan、1月18日)
・77%のCEOが2022年の世界経済は回復すると予測、減速予測はわずか15%
・最大の懸念は「サイバーリスク」(49%)と「健康リスク」(48%)
・ネットゼロへのコミットはなかなか進まず
PwCが世界89カ国・地域の約4500人のCEOを対象に、2021年10月~11月に行った調査を「第25回世界CEO意識調査」としてまとめた。CEOの77%が2022年の世界経済が回復すると回答、前年からは1ポイントの増加で過去10年で最高水準となった。日本のCEOに限って見ると、回復と回答した比率は前年67%から16ポイントアップの83%だった。温室効果ガス排出削減に取り組んでいると回答したCEOは3分の1、ネットゼロへのコミットについてはわずか22%だった。
■[モバイル][クラウド]2021年の第3のプラットフォーム市場は前年比8.4%増、牽引役は公共から企業へ(IDC Japan、1月17日)
・第3のプラットフォームの2021年市場規模は、前年比8.4%増の19兆5428億円
・2020~25年の年間平均成長率(CAGR)は5.5%、2025年には23兆5928億円に
・2020年は政府・自治体の支出が目立ったが、21年は企業が市場を牽引
国内の第3のプラットフォーム(「クラウド」「ビッグデータ」「モビリティ」「ソーシャル」)市場を、企業分野、政府・教育など非企業分野、消費者分野に分類して分析した。2021年の前年比8.4%増の背景には、回復力強化のためのDXを志向した積極的なIT投資をする企業が増えたことがあると分析している。この流れは今後も継続するとみており、市場は2025年までCAGR 5.5%で成長すると予想する。2021年は企業が市場を牽引、産業分野別では「組立製造」「プロセス製造」「情報サービス」などが前年より成長率が高くなるとみる。

この連載の記事
-
第174回
ITトピック
ID侵害とセキュリティの現状データ/「推しがいる」日本人は約4割/CDAOが考えるデータ活用の課題は、ほか -
第173回
ITトピック
生成AI活用と失敗事例/AI投資の「ROI」に注目/IT担当者が恐れる脅威も「AIによる攻撃」がトップ、ほか -
第172回
ITトピック
IaaSでメガクラウドを選ぶのは「高度なPaaS」と併用したいから/“賃上げでも不満”その理由、ほか -
第171回
ITトピック
Webアプリ攻撃件数が過去最大に/若者の5人に1人が「残業したい」理由/セキュリティツールの生成AI機能で生まれる懸念、ほか -
第170回
ITトピック
セキュリティ担当者の7割超が「AI悪用を深く懸念」/外国人エンジニア採用経験が8割超え/買い物客がセルフレジを好む理由は、ほか -
第169回
ITトピック
ランサム被害企業の51%が業務停止、45%が雇用削減/ZIP添付ファイルは5年で半減/DX研修で成果を出す秘訣とは、ほか -
第168回
ITトピック
データ活用が「成果」を生む条件/「ITの内製化」が進んでいる業務/生成AIコーディング支援の懸念点、ほか -
第167回
ITトピック
“Google検索離れ”データでも明らかに/コロナ後の人流回復で店舗集客システム市場が活況、ほか -
第166回
ITトピック
世界PC市場への“逆風”/ 正社員の「年収アップ」策/セミナーや展示会は対面&メタバースへ、ほか -
第164回
ITトピック
「パスキー」使ってますか/産業別“稼ぐ力”日本の国際順位は/ビジネスチャット市場は寡占化へ、ほか -
第164回
ITトピック
2025年のテック業界はどうなる? 調査会社やITベンダーの「今年の動向予測」まとめ - この連載の一覧へ