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2022年のIT投資は明るい? ITR「国内IT投資動向調査」を読み解く
2022年01月21日 08時00分更新
新型コロナウイルスのパンデミックで世界が激変してから2年以上が経った。今年のIT投資の雲行きはどうなのか。アイ・ティ・アール(ITR)が2021年11月に発表した「国内IT投資動向調査報告書2022」からは、コロナ禍にかかわらず積極的なデジタル変革(DX)に取り組む企業が、少数ではあるものの成果を出し始めていることがわかった。今後数年で“DX格差”が生まれる可能性もある。
2021年度のIT投資インデックスは2013年度以来の「増加」示す
ITRの国内IT投資動向調査報告書は、国内企業でIT戦略/IT投資の意思決定に関与する担当者にIT投資についてたずねる年次調査。21回目となる今回は、2021年8~9月の調査期間に約3000件の有効回答を得た。
同調査から、まずはIT投資全体の方向性を見てみたい。2021年度のIT予算について、前年度比「横ばい」と回答した企業は55%、「増額」は35%だった。このうち「20%以上の増加」は全体の4%。また2022年度も「増額」を予想する企業は46%(4%は「20%以上の増額」)、「横ばい」は54%と、2021年度とほぼ同じような比率となっている。
ITRが独自に作成する増減指数「IT投資インデックス」を見ると、2021年度の実績値は2.28。この数値は、2020年度の実績値である1.93を上回っただけでなく、前年調査時の2021年度予想値である1.72も上回る。なお2022年度の予想は2.17となっている。
ITR シニア・アナリストの三浦竜樹氏はこうした数字を示しながら、企業のIT投資は「コロナの動向の影響はそれほど受けていないのでは」と述べる。たとえば2020年調査時の2021年度予想では「IT予算を減らす」という予想が16%に達したが、実績では10%にとどまっている。
「ここ数年では、減額する企業の割合が多いという予測だったが、2021年度の実績では減額は10%に止まった。(2021年度の実績値では)20%以上の増額も微増しており、全体的にIT予算額を増やす企業の比率はあまり変わっていない」(三浦氏)
IT投資インデックスが前年度よりも上向くのは、実績値では2013年度以来、予想値では2014年度以来ののこととなる。「増額する企業が増える、減額する企業が減るといったことが合わさって、2021年度の指数は久しぶりに上向いた」(三浦氏)。
またシニア・アナリストの舘野真人氏は、リーマンショック、東日本大震災でも同じような推移があったと振り返りながら、「苦難の時期があった次の年は、悲観しているよりもお金が使われているという傾向はコロナでも同じ」だと指摘した。
2022年度のIT投資インデックス予想値は2021年度実績値から微減となっている。これについては、コロナ禍による大規模プロジェクト延期など短期的な影響は縮小したが、2022年度にかけてIT予算を増加する企業がさらに増えるまでには至らないとの見立てだ。
また同インデックスを業界別に見ると、金融・保険、製造、情報通信などの業種が高いが、三浦氏によるとこれは「例年通り」。一方で、コロナ禍によってビジネスに影響を受けたサービス業は低い値になっている。
IT支出のうち「新規投資(新規システム構築、大規模なリプレースなど)」が占めた比率は、2021年度は31%だった。これは2020年度の31.4%から0.4ポイントの減少だが、2015年度から6年間ほとんど変化がない。