だんだん消えゆくアートかも
古いデバイスであるほど、分解する元の製品を発見するのが難しく、初代iPhoneは他の製品に比べて非常に高額な600ドル以上の価格が付けられていました。
Grid Studioでは、iPhoneの修理業者などから役目を終えた製品を取り寄せるそうですが、作品として額装する以上、より傷などが少なくキレイなパーツを見つけていく必要があります。これはなかなか骨の折れる作業だそうで。
しかしJoeさんは、「Appleファンである表明」としてこのアート作品の制作に取り組んでいるといい、より美しく額装することにこだわりながら取り組んでいるそうです。
Joeさんは作品にこめる思いについて、次のように語りました。
「私にとって、古いテクノロジーに対する尊敬の表現だと考えています。古いスマートフォンには、それぞれにユニークなストーリーがあり、あらゆるパーツ1つずつがその努力の結晶なのです。
携帯電話はこれまでも、現在も、そしてこれからも、我々の生活にとって常に必要不可欠な存在であり続けます。そうした想いを表現することが、私たちが取り組んでいる仕事だと感じています」(Joeさん)
そうした想いを、これらのアートを手にする人と共有したいと考えるJoeさん。しかしだんだんGridのようなアートは成立しなくなるかもしれません。
Appleは現在、「クローズドサイクル」の実現に向けたさまざまな施策に取り組んでいます。クローズドサイクルを簡単に言えば、新たな資源採掘を伴わず、すでに製造した製品を原料にして新しい製品を作り出すこと。
すでにスピーカーや振動を作り出すTapTic Engineに用いられる部材、レアアース、レアメタルなどはリサイクルされた素材が用いられています。また製品ラインアップの多くをガラスとアルミで構成し、特にMacやiPadのアルミニウムについては100%リサイクルアルミを用いるなど、その取り組みが結実する分野も出てきました。
つまり、e-Waste(電子機器のゴミ)が出なくなる未来を目指しているわけで、Grid Studioの作品は成立しなくなることが予想されるのです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。モバイルとソーシャルにテクノロジー、ライフスタイル、イノベーションについて取材活動を展開。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、シリコンバレー、サンフランシスコのテックシーンを直接取材。帰国後、情報経営イノベーション専門職大学(iU)専任教員として教鞭を執る。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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