次の波に乗るために作った
寺尾社長にとっていまのスマホはほとんど同じに見えたと言います。アップルのiPhoneを筆頭にスマホはそろって大画面。ユーザーは必然的に大きなモデルを選ばされ、大きな画面に目や耳を向けているという見方です。
その上で、「今は人間とスマホの主従関係が怪しくなっているんじゃないか」とも社長は言います。人間がスマホを使いこなしているというより、人間が巨大企業に支配されて、使われているというような感覚です。しかし本来、主になるのは人生のはずではないかと社長は言います。
「スマホの使い方の前に我々の人生というものがあって、スマホはそれを補助する道具。どこかに行きたいとき地図が見られるとか、連絡をしたい人にすぐ電話ができるとか、メッセージが出せるとか、とても便利じゃないですか。でも、ベースには人生があるべきで、その最良の補助道具だろうなと思っています」
社長はこの話をする上で、アラン・ケイの「A Personal Computer for Children of All Ages」(あらゆる年齢の「子どもたち」のためのパーソナルコンピューター)を引き合いに出し、「アラン・ケイが提唱したパーソナルコンピューターというのは、子どもが草原で画面を見ているというようなものだったんですよ」といい、コンピューターというのは人間がいい時間を過ごすための道具であるべきで、今はこの状況を変えるためのチャレンジをしなければいけない時期なんだと語っていました。
「今は過渡期で、いろんな人がいろんなアイデアでどんどん進めていかなければいけないときなのに、今は進める活動があまりにもなされていない。待てど暮らせど(変化が)起きないんだろうなと思ったので、自分が欲しいものがあるんだったら、そこからやってみようとチャレンジしました」
一方で、社長は「これ(BALMUDA Phone)で世界を変えるつもりはない」「本当の野望は15年後にある」とも話します。
「キーデバイスは30年で変わっていく。そうすると15年後くらいに次の何かに変わるだろうなと。もしかしたら15年後にはみんなが量子コンピューターを持っているかもしれない、というくらい変わっているはず。そこに関与していきたい。この海でパドリングができていれば、私は誰よりもうまく波に乗る自信がある。そこでパドリングするために、これ(BALMUDA Phone)を作ったんです」
「サーフボードだからこの形なんですね」と言うと、寺尾社長は「ちょっとちっちゃいですけどね」と笑い、「泳いでいたプレイヤーだけが波に乗れる。波に乗り切ったときすごいサービスや商品が生まれて少しずつ世界が変わっていく。ぜひともそういうプレイヤーになりたい、そういうサーファーになりたい。その第一歩だと認識しています」と話していました。