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山根博士の海外モバイル通信 第574回

1万円台の格安インド製端末もあるアメリカの独自5Gスマホ市場

2021年11月18日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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 Y!mobileが発売予定の「Libero 5G II」や、楽天モバイルの「Rakuten Big s」など、日本ではキャリアブランドの5Gスマートフォンがいくつか登場しています。もちろん製造元はそれぞれZTE、Coolpadでキャリアが製造しているわけではありません。いわゆるODM(相手先ブランドによる開発製造)供給を受けた製品ですが、大手メーカーのブランドモデルより価格を低く抑えることができます。

 日本以外の国では中国メーカーの低価格5Gスマートフォンの普及がはじまっていることもあり、キャリアブランドの5Gモデルはまだほとんどありません。一方、アメリカは中国メーカー製品が少ないこともあり、低価格な5GスマートフォンとしてキャリアブランドモデルやODM元から調達した独自製品が登場しています。今回はそんなアメリカだけで売られている5Gスマートフォンを紹介しましょう。

 まずはT-Mobileから。T-MobileはREVVLという名前の自社スマートフォンを出していますが、2020年には初の5G対応モデルとして「REVVL 5G」を発売しました。ベースはTCLの「TCL 10 5G」のようで、カメラ配置デザインは異なるものの、Snapdragon 765G、6.5型(2340×1080ドット)ディスプレー、4800万画素+800万画素+500万画素のトリプルカメラ、1600万画素のフロントカメラ、4500mAhバッテリーなど性能は同じです。登場時の価格は399.99ドル(約4万6000円)、格安ではないものの大手メーカーの5Gスマートフォンよりは安価でした。

T-Mobileブランド初の5Gスマホ「REVVL 5G」

REVVL 5Gのベースとなった「TCL 10 5G」。ディスプレイのベゼルデザインなどは同一だ

 2021年7月には199.99ドル(約2万3000円)と価格をぐっと下げた「REVVL V+ 5G」が登場。こちらはODM大手のWingtech製。MediaTekのDimensity 700に6.82型(1600×720ドット)ディスプレー、1600万画素+500万画素+200万画素のトリプルカメラ、1600万画素のフロントカメラに5000mAhバッテリーと価格相応のエントリーモデルですが、200ドル以下で買える5Gスマートフォンということで5Gへの移行を一気に加速させる製品となるでしょう。なお、REVVLシリーズはT-Mobile系列のMetro PCSでも販売されます。

ODMメーカー製となった「REVVL V+ 5G」

 一方、AT&Tからは「RADIANT Max 5G」が2021年9月に発売。Dimensity 700、6.82型(1640×720ドット)ディスプレー、4800万画素+800万画素+200万画素+200万画素カメラに、フロント1300万画素カメラ、そして4750mAhバッテリーを搭載して179.99ドル、約2万円。REVVL V+ 5Gより安くてカメラ画質も高く、これもAT&Tの5Gユーザーを増やすモデルになるでしょう。なお、系列のMVNO、Cricket Wirelessからは「Dream 5G」として販売されています。

ジャスト2万円の5Gスマホ「RADIANT Max 5G」

Cricket Wirelessから登場の「Dream 5G」は背面のキャリアロゴが異なる

 ところで、アメリカのキャリアは2020年にSprintをT-Mobileが買収し、大手キャリアはVerizon、AT&T、T-Mobileの3社に集約されました。その際にSprintの傘下MVNOとして展開していたBoost MobileはT-Mobileに吸収されず、DISH Wirelessに買収され独自キャリアとなりました。そのBoost Mobileから独自の5Gスマートフォン「Celero 5G」が11月に発表されています。

Boost Mobileの「Celero 5G」

 Celero 5GのスペックはDimensity 700、6.5型ディスプレー、1600万画素+500万画素+200万画素トリプルカメラ、800万画素フロントカメラ、4000mAhバッテリーという5Gのエントリーモデル。価格は279.99ドル(約3万2000円)ですが2022年1月6日までは半額の139.99ドル(約1万6000円)とアメリカで最安値の5Gスマートフォンとなります。Boost Mobileは2021年第4四半期からラスベガスで5Gサービスを開始予定で、格安5Gスマートフォンで他キャリアからのユーザー移行を狙っているのでしょう。

 さて、最後に紹介するのはVerizonの「Orbic Myra 5G UW」。UWは「Ultra Wideband」の略で、Verizonの5Gミリ波に対応した製品です。OrbicはVerizonのブランドではなく独自メーカーですが、端末の製造元はインドのODM/EMS企業、Dixon Technologies社。つまりインドで開発・生産されたミリ波対応5Gスマートフォンがアメリカで販売されているのです。

インド製の5Gスマホ「Orbic Myra 5G UW」

 Orbic Myra 5G UWのスペックはSnapdragon 750G、6.78型ディスプレー、4800万画素+800万画素+200万画素トリプルカメラ、フロント1600万画素カメラ、5000mAhバッテリーで349ドル、約4万円。格安ではありませんがミリ波対応5Gスマートフォンとしては低価格でしょうね。Verizon傘下のMVNO、TracFoneからは「Orbic Magic 5G」として販売されますが、こちらは若干安く299.99ドル、約3万4000円です。

TracFoneブランドの製品は「Orbic Magic 5G」となる

 こうしてみると、アメリカの5Gスマートフォンもスペックを考えなければかなり安く買えるモデルが増えており、5Gの利用もこれから当たり前のようになっていくのでしょう。また中国メーカーが直接参入しにくい市場ですが、OEM/ODM/EMSといった相手先ブランドの製品で中国、そしてインドやベトナムなどからの低価格品が増えていくのでしょうね。「アメリカに行くと見たことも聞いたこともない5Gスマホが売っている」なんて時代はすでにやってきているのです。

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