ワクチンだけじゃない 世界を救う医療技術を開発するスタートアップ4社
第43回NEDOピッチ「医療・ヘルステック ver.」レポート
100万のRNA構造群を1日で解析する大規模同時並列解析技術FORESTを開発
株式会社イクスフォレストセラピューティクス
コロナワクチンの開発に関するニュースによって、RNAという単語が多くの人に知られるようになった。新たなウィルスを狙う新薬を開発するためには、ウィルスのたんぱく質にどのような新薬がはまるか、そのカギ穴を探さなくてはならない。そのカギ穴探しに用いられるのがRNAと呼ばれる核酸だ。
しかしながらRNAを1つずつ検証していったのでは新薬の開発に非常に長い時間が必要となる。株式会社イクスフォレストセラピューティクス(以下、イクスフォレスト社)は標的RNAと低分子化合物との相互作用を、一度に大規模に解析するシステム"FOREST"を開発した。これにより、RNAを用いた新薬開発のスピードが飛躍的に向上することが期待できる。
イクスフォレスト社創業者の樫田氏は、京都大学iPS細胞研究所でFORESTの基盤となる解析手法の着想を得た。その後欧州での研究などを経てイクスフォレスト社を設立したが、FORESTの核にはRNAを大規模・体系的に解析する解析技術と、RNA構造に対する長年にわたる研究によって培われた科学的知見と、ビッグデータに対するデータ解析技術の三本柱がある。
RNAを用いた医薬品開発の市場は急速に拡大しており、米国でも数百億円規模の資金調達を実施するスタートアップがいくつもある。しかしながらメガファーマを含むそれら創薬企業には、RNAの体系的・大規模スクリーニング技術を持っておらず、したがってRNAを1~10種程度ずつ解析していく必要がある。イクスフォレスト社のFORESTを用いると、1日に最大100万種類のRNAの解析を行うことができ、圧倒的な優位性を獲得できる。
また、大量のRNAと複数の新薬候補化合物との相互作用を一度に解析できるということは、生体内の網羅的なRNAと化合物の結合性(副作用)を評価できるということであり、開発される医薬品の質自体を大きく向上させることにつながる。これもFORESTに相当する技術を持たない企業には実現することができない。
すでに複数の国内製薬会社と共同研究を進めており、大量のデータを収集し始めている。これに基づいてターゲットとなる疾病に対して効果のある新薬を予測し、それを企業に提案するビジネスにも将来的に進んでいきたいと樫田氏は話す。コロナ禍で出遅れた国内製薬会社にとっては逆転の手がかりとなる技術を開発したイクスフォレスト社の今後の飛躍に注目したい。