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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第640回

AI向けではないがAI用途にも使えるCoherent LogixのHyperX AIプロセッサーの昨今

2021年11月08日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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第4世代のhx40416は
AIプロセッサーと互角に戦えそうな性能

 Coherent Logixは先にも触れたように2006年には最初のMNPの製品を完成させている。第1世代と第2世代の製品の詳細はすでにわからなくなっているのだが、2014年には第3世代のhx3100というチップが完成し出荷済である。

 このhx3100は100個のPEと121個のDME(個々のPEは4KB、DMEは8KBメモリーをそれぞれ搭載する)を内蔵し、外部に16bit DDR2×2のI/Fを搭載する構成だった。これに続く第4世代が完成し、大幅に性能が引きあがっている。

これは最大構成のhx40416のダイ写真と思われる

 最大構成のhx40416の特徴が下の画像だ。このPE+DMEのMNPの外部に、おそらく制御用と思われる汎用RISC-Vコア×4も搭載される。動作周波数は1.5GHzで、最大2.5TOPSとあるので、やはり昨今のエッジ向けAIプロセッサーと同程度であろうか? Instruction Memoryが6MByteとあるから、おそらくPEあたり16KB、Data Memoryが14MBとあるからこちらはDMEあたり32KBと思われる。

PEの数は48/120/416個の3種類の製品が予定されているらしい

 第3世代製品の場合はPEあたり4KBのInstruction Memory、DMEあたり8KBのData Memoryが実装されていたので、第4世代で4倍に増やされた格好だ。この第3世代と第4世代の製品の特長をまとめたのが下の画像だ。

このテーブルは同社の製品ブリーフィングから抜粋。ちなみにハイエンドのhx40416のみ、内部メモリーにはECC保護が搭載される

 性能で言えば、hx40048が0.4TOPS弱、hx40120が1TOPS弱というあたりで、このあたりでもちょっとしたAI処理(限定的な推論)には十分な感じであり、2.5TOPSのhx40416はAIプロセッサーと互角に戦えそうである。

 もっとも現状欠けているのは、AI向けのソフトウェアスタックとソリューションである。Coherent LogixからhxISDEという統合開発環境が提供されるが、AIに関しては今のところなにも用意されていない(あるいは現在開発中ながら、まだ間に合ってないのかもしれないが)。

hxISDEという統合開発環境が提供される。これにオプションで、例えばTensor FlowのI/Fが提供されるなどがあるかと思って調べたが見つからなかった

 実際Coherent Logixのソリューションページを見ると、ATSC 3.0という北米の地デジ規格や8KTV向け、コンピュータービジョン向け、航空宇宙防衛向け、5G/モバイル向け、IoTホーム向けなど、どこの会社も謳っている文言が出てくるが、この中でコンピュータービジョンに関しては一応以下の項目がある。

  • ADAS/Automated Driving(機能安全と自動運転)
  • Augmented Reality/Virtual Reality(ARとVR)
  • Deep Learning/AI(ディープラーニングとAI)
  • Edge Detection/Pattern Recognition(輪郭抽出とパターン認識)
  • Image Processing & Analytics(画像処理と画像分析)
  • Sensor Fusion & Intelligence(インテリジェントセンサー)

 AIも有望なターゲットとしつつAIだけではない、というのがこれまでここで紹介してきたチップと大きく異なるところだ。いやむしろAIがおまけに近いかもしれない。

 AI以外の分野ですでに顧客を捕まえているというのが同社の強みであり、それもあってAI向けにそれほど売れなくても会社が傾いたりはしないのだろうが、逆にAI向けに全社で注力しているわけではないあたりは、AI向けに参入する際には障壁になるかもしれない。そのあたりを含めて今後が楽しみなチップである。

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