異様にアクセラレーターが充実している「chichibu」
さてこれらの目標に向けて試作したbeppuチップ、まずは一般的な評価ボードと、AIカメラ向け評価ボードの2つの開発キットが用意された。
ただ今回はそのbeppuチップの中身ではなく、beppuチップを基にしたchichibuチップの内部構造が紹介されたのだが、少し変である。Processor GroupはRISC-VエンジンとGPGPUエンジン、GEMMエンジン、それとGEMM用のDMAからなるが、それとは別に異様に充実したアクセラレーターが搭載されている。
AiOnIcでは暗部補正、逆光補正といった撮影映像の補正や、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自走ロボットの制御などで使われる自己位置推定と環境地図作成)、人物検出、パレット認識など、いくつかのアプリケーションシナリオが用意され、そのシナリオに応じてこの豊富なアクセラレーターとProcessor Groupで提供されるAIエンジンを適時組み合わせ、必要な処理を行なう。この際のデータの受け渡しは16バンク構成の8MBキャッシュ経由になる模様だ。
ちなみにそのアクセラレーターの中で、nnlp(Neural Network Level Processor)なるものだけは複数存在しているように見えるが、これがなにをしているのかは説明がなかった。名前からすると、畳み込みニューラルネットワークの重みというかネットワークの係数のハンドリングを処理するプロセッサーだろうか?
逆に詳細が説明されたのがFrame Composerで、これはOpenCVの処理をハンドリングできるものという話であった。これらの固定機能アクセラレーターを組み合わせることで、例えばAffine変換(画像の拡大縮小や回転、平行移動など)は1命令で処理可能としている。
特徴的なのはこのアクセラレーターとAIプロセッサーは同じ扱いであり、全部スケジューラー(上の画像で“pss H/W Scheduler”と書かれている部分)から制御され、おそらくはサイクルレベルでこれらを順次切り替えることで、同時に多数のスレッドを動かすことだ。
つまり、1つのAiOnIcで、複数のアプリケーションを同時に動かすことが可能というわけだ。実際、下の画像のように12種類のアルゴリズムを同時に動かすというデモも示された。
逆に言えば、1種類だけのアプリケーションを高速に動かすようなケースでは、特定のアクセラレーターあるいはAIプロセッサーの能力が先に飽和してしまいそうではある。このあたりはバーターなのであろう。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ