ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第632回
Intel 7とTSMC N5で構成されるHPC向けGPUのPonte Vecchio インテル GPUロードマップ
2021年09月13日 12時00分更新
スパコン「Aurora」の納入は2022年末?
納入までは別のスパコン「Polaris」を使用
最後に1つ余談を。連載627回の最後で、インテルがどうもAurora遅延に絡んで3億ドルの違約金を支払うらしい、という話をした。
Auroraはアルゴンヌ国立研究所に納入されるシステムだが、発注者は米エネルギー省である。そのエネルギー省のAI・技術担当副次官であるDimitri Kusnezov氏がHotChipsの2日目に“Architectural Challenges: AI Chips, Decision Support and High Performance Computing”という基調講演をした。
そのKusnezov氏への質疑応答で「Auroraはいつ稼働するのか?」という火の玉ストレートの質問を投げかけた方がおり、返答が「今やってます。複雑な調達ではしばしば遅延が起きるけれど、でも前に進んでいます」という、政治的に正しい回答が返ってきていた。
それはともかくとして、アルゴンヌ国立研究所としては、このままではAuroraの稼働がかなり遅れることになる。一応Ponte VecchioもSapphire RapidsもIntel 7ベースでの構築なので、これ以上遅れることがなければ今年中に量産が開始されるはずだが、それによる最初のシリコンの出荷は来年第1四半期以降となる。
現実問題としてシステムが納入を開始するのは2022年第2四半期以降で、そこから組み上げてテストを経て検収が完了するのは2022年末あたりだろう。つまり当初スケジュールから1年遅れると見込まれる。これを待っていると、Auroraを利用する予定のプロジェクトも1年遅延するわけで、その間研究者に遊んでいろというわけにもいかない。
そこで、Auroraが稼働するまでのつなぎとして、エネルギー省は新しいPolarisというスーパーコンピューターを、HPEと契約した。こちらはAMDのEPYC(当初システムはRomeベースのEPYC 7532だが、2022年3月にはMilanベースのEPYC 7543に更新される)と、NVIDIA A100をベースとしたもので、1ノードはEPYC×1+A100×4で構成。これが560ノードでシステムを構築する形になる。
ピーク性能はFP64で44PFlopsなので1 ExaflopsのAuroraには遠くおよばないのだが、なにしろすぐ納入できるという点が評価されたようだ。このPolarisでは、本来Auroraを利用して行なうはずだったESP(Early Science Program)のアプリケーション開発などのためにまず利用されるらしい。
まさかインテルから得た3億ドルの違約金でPolarisを契約したというわけでもないとは思うのだが(Polarisの契約金額は未公開)、インテルがHPCの市場で復調するまでにはまだまだ時間がかかりそうである。
この連載の記事
-
第769回
PC
HDDのコントローラーとI/Fを一体化して爆発的に普及したIDE 消え去ったI/F史 -
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ