考えて行動し、戦う。アドベンチャーゲームの楽しさが詰まった1作
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD」レビュー、アドベンチャーゲームの真髄たる所以は「剣」の操作性・視点・カット毎の完成度・謎解きにある!
7月16日にNintendo Switch専用ソフト『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』が発売された。オリジナルのWii版の発売は2011年。その後Wii Uでダウンロード専用ソフトになる機会はあったが、実に10年越しのHDリマスターとなる。
プレイヤーは主人公の少年リンクとなり、連れ去られた幼馴染の少女ゼルダを救う冒険に出る。冒険には多くの試練が待ち受けており、大空と大地を駆け巡って、剣と閃きで道を切り拓いていく。王道3Dアドベンチャーゲームだ。本記事ではネタバレは避けつつ、未購入のゲーマー諸氏にその魅力をお伝えしたい。
コントローラー=剣! リンクは俺だ!
一体感と没入のアドベンチャー
『ゼルダの伝説』シリーズは任天堂を代表するアドベンチャーゲームの金字塔であり、これまで数多くが発売されている。その中で、本作でもっともユニークなポイントはなんといってもリンクの持つ「剣」だ。
『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』では、プレイヤーが右手にコントローラー(Joy-Con)を握って振り下ろせば、リンクもまた剣を振り下ろす。実に一体感のある操作が楽しめる。この「振り下ろし」は単なるモーションの呼び出しコマンドではなく、リンクの腕の角度とコントローラーの角度が「常に」連携している。
これにより、例えば「剣をずっと上段に振りかざして接近し、相手に頭上を守らせ、実際には横一文字にぶった斬る!」なんていう立ち回りができてしまうのだ。
この作り込みは剣戟ゲームの域に達している。
しかし、本作はアドベンチャーゲームだ。右コントローラーを使用したアナログ=無段階の緻密な操作感は戦闘に留まらず、リンクの操作全般に行き渡っている。ロープを前後に揺らしターザンのようにジャンプしたり、パズルのギミックをじっくり操作するときにもモーションのコントロールを行なうことになる。これはほかのゲームでよくあるコマンド要求型のQTE(クイックタイムイベント)とは異なり、ゲームの世界に直接触っているかのような没入感がある。
本作の映像は非常に奥行きのある表現だが、ポインターが常に表示されているゲームではなく、また操作の対象に大小があり、携帯モードやテレビとの距離など各自のプレイ環境によっては、操作しづらいと感じることがあるかもしれない。その場合は、オプションでこれらの操作を右スティックに割り当ててしまおう。オリジナルの体験とは異なるが、右スティックによるプレイも繊細さを失ってはおらず、十分に楽しいと感じた。
懐かしさも感じる自動追従カメラ
視線誘導に注目してみよう
本作最大の特徴である「剣」の体感アクションは、右側のコントローラー、あるいは右側スティックのすべてを「キャラ操作」にアサインしているからできる体験だ。しかし、現代の3Dゲームの場合、このコントローラーの右側操作は、「カメラ操作」に割り当てられているのが一般的だ。では本作のカメラ操作はどうなっているかというと、「自動追従カメラ」だ。
プレイヤーが常にカメラを操作せずともリンクの後ろにカメラは付いていく。2000年代のゲームはまだこの手法がスタンダードであり、過渡期だった。現代の我々がプレイすると、咄嗟にカメラを動かしたくなったとき、もどかしい思いをすることもあるだろう。
しかしじっくりプレイしてみると、実際には単純な自動追従ではないことに気づくはずだ。カメラのリンクとの距離、リンクの向き、場所、戦闘や謎解きのシチュエーションによって細かくカメラの設定が変わっている。そしてカメラが捉えているオブジェクトが実に適切であるケースがほとんどなのだ。
ゲームというのはプレイヤーによって自由に遊ばれるものだ。そのため、本来であれば個人的には自動追従カメラで遊ぶことをオススメはしない。また、もし本作をテレビモードで遊んでいるなら、ジャイロをカメラ操作に割り当てて遊ぶことができる。しかし本作を通じて、自動追従カメラのよさというのは確かにあるということを、若いゲーマーにはぜひ一度体験してみてほしい。
とくにゼルダの目玉である神殿などのダンジョンは、自動追従カメラの恩恵が大きい。なぜかというと、屋内ほど自動追従カメラの移動ルートやオフセットが作り込まれており(単純な背中自動追従カメラだと壁へのめり込みや立体構造が見づらいため)制作者の視線誘導を一層読み取りやすいからだ。これは謎解きを行なううえで大きなヒントになり、小さな目標、大きな目標を見失いづらくなる。
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