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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第623回

Lakefieldが生産終了、Sapphire RapidsはPCIe Gen5とCXL 1.1をサポート インテル CPUロードマップ

2021年07月12日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 今回はインテルCPUの話題をいくつか取り上げよう。Lakefield、Alder LakeとRaptor Lakeのチップセット、そしてSapphire Rapidsに関する新情報だ。

Lakefieldが生産終了

 LakefieldことIntel Core Processor with Hybrid Technologyであるが、7月6日に生産終了のお知らせ(PCN:Product Change Notification)があった。同日通知があり、オーダー可能な最終日は今年10月22日、最終出荷日は2022年4月29日となっている。

Lakefieldが生産終了。その通知はインテルのウェブサイトから入手可能だ

 対象となるのはCore i5-L16G7とCore i3-L13G4の2製品で、なんのことはない現在リリースされているすべてのLakefied製品が生産終了である。

 Lakefieldそのものは連載567回で解説したが、マイクロソフトのSurface Neo向けにSunnyCove×1+Tremont×4、48ないし64EUのXe GPU、チップセット(PCN)、それと4GBないし8GBのLPDDR4xをFoverosを利用して3次元実装することでワンチップ化した製品である。

Foverosで3D積層されるLakefieldの階層イメージ。上からDRAMが2層、次いで10nmのCPU&GPUのチップレット、キャッシュやI/Oを含むベースダイ

 さて、このLakefield、もともとはマイクロソフトのSurface Neo向けに開発したものだが、イッペイ氏の記事にもあるように、LenovoのThinkPad X1 Foldに実装されて出荷され、SamsungのGalaxy Book SでもLakefield搭載モデルが存在している(こちらはQualcommのSnapdragon 8cxモデルもあるのでわかりにくい)ので、Surface Neo以外にも使われていることは事実であり、その意味ではちゃんと出荷されていた格好である。

ThinkPad X1 Fold

Galaxy Book S

 ただ本来のターゲットであったSurface Neoは、ここに搭載される予定だったWindows 10Xの延期もあって2020年度発売から2021年度発売に延び、さらにWindows 10Xの開発中止を受けて、直近ではいつ出荷されるのか不明(開発中止になったわけではないらしい)になっている。

 ちなみにPCNによれば「Lakefieldがターゲットとしていた市場の要求は、他のインテル製品に移行している」というのが公式な生産終了の理由となっている。

 実際インテルとしても、出荷数量の少ないLakefieldのサポートを維持するよりも、さっさとTiger Lakeに切り替えてもらったほうが楽、という事情がある。インテルはこの後、よりアグレッシブなハイブリッド構造のAlder Lakeが控えているため、一旦はTiger Lakeで間をつなぎ、Alder Lakeに早く移行を促進したいといった事情もあるのだろう。

 問題があるとすれば「本当に市場の事情なのか?」というあたりだろう。裏を読むと、Lakefieldへの懸念が2つほど出てくる。1つはSnapdragonとの性能競争だ。

 従来Windows 10 on Armの場合、32ビットバイナリーはトランスレーターで駆動(ただし当然速度は速くない)で、64ビットバイナリーは再コンパイルが必要ということで数が少なく、それもあってLakefieldでも十分Snapdragonに競合できていたが、インサイダープレビューで64ビットのトランスレーターサポートが実現し、さらにWindows 11では複数のアプリケーションがArm64をサポートすると公式表明したことで、俄然性能面での敗北が大きくなった可能性が大きい。

 コア単体という意味ではSunny CoveはKryo 468 Gold(Cortex-A76)より高速とは思うが、そのKryo 468 Goldを4コア搭載するSnapdragon 8cxと1コアのみのLakefieldでは、ややLakefieldの分が悪い。

 だからといって、動作周波数を引き上げると温度が上がりすぎるわけで、特にLPDDR4xをチップの上に積層するLakefieldでは、温度が上がるとDRAMの安定性を損ないかねないために、システムが安定しなくなる恐れがある。そのあたりもあって、早めに生産終了にしたのではないか? というのが1つ目。

 もう1つの懸念は、Foverosになにか問題があったのでは? という話だ。もともとLakefieldは、Foverosとx64版big.LITTLEという2大革新的アーキテクチャーのいわばショーケースモデルであった。だから理由もなくこれを引っ込めるというのは、その2大アーキテクチャーに問題があったと勘繰られても仕方ないところがある。

Lakefieldの中核は、「Foveros」と呼ばれるインテルの3次元パッケージング技術にある

 このうちbig.LITTLEの方は、半分はマイクロソフト側の作業というか、big.LITTLEのスケジューラーの実装そのものはマイクロソフト(とおそらくQualcomm、ひょっとするとさらにArm)の作業で行なわれたが、これをx64に適応させるのはインテルの作業である。

 だからここに問題が生じる可能性はもちろんある。あるのだが、その場合はソフトウェア側で対応できると考えるのが普通である。もちろんシリコン側になにか致命的な問題があって、ハードウェアの修正をしないと対応ができないので、あきらめて生産終了にした可能性はある(例:初代Phenom)。ただこの可能性はそれほど高くないだろう。

 問題はFoverosに問題があった場合、例えば歩留まりが異様に悪いとか、長期間使っていると問題が出るとか、そうした問題が理由で生産終了になったとすると、これは心配である。Foverosはこの後Ponte Vecchioでも採用される予定の技術だけに、ここで問題が出るとするとPonte Vecchioそのものの量産が疑問視される。

 もちろんこれはただの下衆の勘繰りではある。ただそうした勘繰りがなされるであろうことを承知の上でインテルは生産終了にしたわけで、それがただの市場の事情とは思い難いのだが、さて?

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