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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第622回

2018年に製品を発売している老舗的存在のGraphcore AIプロセッサーの昨今

2021年07月05日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 今回紹介するGraphCoreのIPU(Intelligence Processing Unit)は、イギリスで2016年に創業された。2016年というのはこの業界においては比較的老舗に属する時期だと思うが、それよりも驚異的なのは2018年には早くも製品の出荷を開始し、しかも大手サーバーベンダーとの協業を成し遂げていることだろう。先行者利益、というわけでもないのだろうが、この素早い動きのおかげで同社はけっこうなシェアを獲得している。

ベンチャービジネスで成功した2人が
AIプロセッサー開発に乗り出す

 GraphCoreはNigel Toon氏(現CEO)とSimon Knowles氏(現CTO兼EVP Engineering)の2人によって2016年の6月にブリストルで創業した。もっとも正確に言えば、2012年1月にバース(ブリストルの東南16Kmほどの所にある都市)にあるMarlborough Tavernというパブで「次になにをやろうか」という話をしたときから始まっている。

 「次に」というのは、この時Toon氏はCEOを務めていたpicoChipという会社をMindspeed Technologyに売却しており(その後Mindspeedはインテルが買収した)、一方Knowles氏は自身が創業し、VP Strategy & DXP Technologyという肩書でビジネスをしていたIceraがNVIDIAに買収されることになっていた。

 というように、それなりにベンチャーを立ち上げ成功裏にExitした(大手企業に買収される、というのは1つの成功した終わり方である)2人は、次のビジネスのための創業資金を十分に確保した(なにせ2人とも買収による株の売却益があった)状態で、しかも引退するつもりは全然なかった。

 ここからどうしてAIチップの開発に辿り着いたのかは不明だが、2人はステルスモードを維持しながら、つまり会社組織にしないままで開発チームを集め、2013年末にはプロジェクトを開始している。

左がNigel Toon氏、右がSimon Knowles氏。後ろに映っているのが初期の開発チーム

 ステルスモードを抜けて会社組織にしたのは2016年6月のことだが、それに先駆けて3年余りのプロジェクト期間があったわけで、なるほど2017年に出荷を開始できるのも当然である。ちなみに2016年10月には3200万ドルの資金をシリーズAで、2017年7月には3000万ドルをシリーズBで、2017年10月には5000万ドルをシリーズCで複数のファンドからそれぞれ調達している。

 2018年7月に同社は初のIPUをアーリーアクセスの形で特定顧客に出荷開始するとともに、その7月にストックホルムで開催されたICML 2018(International Conference on Machine Learning)でIPUを搭載したPCIeカードのブース展示とデモを実施している。

 この「商用製品を出荷した」という実績が大きかったのか、2018年12月には2億ドルもの資金をシリーズD(黒字化のめどが立っている状態での融資)としてファンドから調達している。このシリーズDの出資企業の中にはマイクロソフトが含まれており、それもあってか2019年11月には本格的な製品出荷が開始された。これによりGraphCoreのIPUはMicrosoft Azure上で利用可能になった。

 またDellとの協業も行なわれ、DellからGraphCoreのIPUを直接購入することも可能になっている。

 2020年2月にはシリーズD2として1億5千万ドルをふたたびファンドから調達した。この時点でのファンドからの調達額は4億6200万ドルとなり、同社の時価評価額は195億ドルに達した。そして、こうした豊富な資金を生かして2020年7月には第2世代のIPUを発表している。

 今年4月には東京オフィスも開設され、社員数も303人+犬猫各1匹と、もうすでにベンチャーという規模ではなくなっている感もある。

猫のZeusは名前からすればオスな気がするが詳細は不明。GraphCoreのウェブサイトの“Our-team”の6段目に出てくる。2019年のBlogエントリーからすると、かなり昔から開発に貢献(?)してた模様。犬のRed君(だと思うが、自信はない)はOffice Dogとして可愛がられているらしいが、開発に貢献しているかどうかは不明

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