メルカリが、人工知能(AI)を使った与信審査を始める。
6月の第1週から第2週にかけて、複数のメディアがこのニュースを報じている。
7日付の共同通信の配信によれば、アプリの利用実績からユーザーの信用力を評価し、分割払いの限度額をAIが決めるという。
与信枠を柔軟に設定することで、クレジットカードを持っていない若年層が分割払いを利用しやすくする狙いがあるようだ。
このニュース、正直に告白するとわかったようで、わからないところがある。
与信?与信枠?与信審査?
「与信枠ってなあに」と子どもに面と向かって聞かれたとき、自信を持って答えられるか自問すると、結構あやしい。
筆者は、与信という言葉を聞くと、白のワイシャツ、地味なネクタイ、濃紺のスーツ姿の昔ながらの銀行マンの姿が頭に浮かぶ。
このニュースの理解を深める第一歩として、与信という言葉をおさらいしたい。
与信は、もともと企業間(BtoB)の取引で使われてきた言葉だ。
たとえば、企業と企業が商品の売買をする。
売り手が商品を納入してから、入金までには時間がかかる。仮に、支払期限が商品を納入してから45日後だったとすると、その間、売り手の企業は待っていることになる。
納品から入金までの間に、買い手の企業が倒産してしまうと、代金を回収できなくなるリスクがある。
こうしたリスクに備えて、多くの企業は取引先を選ぶとき信用調査をする。あの会社と取引して大丈夫かどうか、事前に調べておくのだ。
こうした調査で活躍するのが、信用調査会社だ。代表的な信用調査会社として帝国データバンクや東京商工リサーチといった会社がある。
信用度を100点満点で評価
少し前、個人の信用度を数値化する「信用スコア」という言葉が注目を集めたが、企業間の取引では、昔からスコアが活用されていた。
帝国データバンクは、企業を100点満点で評価している。
評価項目は、業歴、資本構成、資金現況、損益状況、経営者など。
業歴、つまり会社の歴史は短いより、長いほうが評価が高くなるようだ。
資本構成は、怪しげな企業が、その会社の株をたくさん持っていたりすると、できれば取引は避けたいところだ。
経営者は、経歴などが評価の対象となる。26歳で跡を継いだ3代目の社長と、製造業一筋40年の60歳の社長を比べたら、後者の方が高くなるような気がする。
しかし、26歳の若社長がアメリカの有名大学でMBAを取得して帰ってきたばかり、といった場合はどう評価するのだろうか。
会社の業績も、もちろん評点に影響する。
企業は、取引先を選ぶ際に、帝国データバンクや東京商工リサーチから情報提供を受け、参考にする。
自社の評点は、問い合わせても教えてくれないそうだ。
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