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業務を変えるkintoneユーザー事例 第100回

Excelの大軍と戦う宿命は変えられないのか?

御堂筋税理士法人のkintone成功は「4段階の導入」と「アメとムチ」が鍵

2021年05月18日 10時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2021年4月21日、大阪のなんばHatchにて「kintone hive osaka vol.9」が開催された。kintone hive(キントーンハイブ)は、kintoneを業務で活用しているユーザーがノウハウや経験を共有するプレゼンイベント。全国6ヵ所で開催され、その優勝者がサイボウズの総合イベント「Cybozu Days」で開催される「kintone AWARD」に出場できる。登壇したのは5社で、今回は2番手の御堂筋税理士法人 ITソリューション課 リーダー 高原直樹氏によるプレゼン「kintone活用は続くよどこまでも」を紹介する。

御堂筋税理士法人 ITソリューション課 リーダー 高原直樹氏

Excelでの時間管理や登録に課題

 高原氏は大手SIerや通販小売企業で15年間システム開発・運用やシステム導入支援業務に従事していた。3年前に入った御堂筋税理士法人では、社内SE業務に加え、中小企業へのIT活用支援サービスを提供している。組織デザイン研究所/御堂筋税理士法人は1991年に設立され、登壇時点での従業員は税理士10名、会計士1名、コンサルタント6名を含む40名となっている。

 同社も以前はExcelに関する課題を抱えていた。若手でも1人で20~30社を担当するので、どの顧客に対し、どのくらいの時間を投入するのかを把握する必要がある。この時間管理をExcelで行なっており、この業務に日々の時間が大きく取られていた。

 また、毎月3営業日目に経営会議が行なわれているが、若手は前月の内容を経営資料としてまとめなければいけない。売上や粗利、営業活動KPI、時間管理KPI、税務品質KPI、個人MBOなど、数値管理を重視しているので、Excelに入れるのに2日間かかってしまっていた。

 サービス提供の対価として顧客に送付する請求書も各担当者がExcelで経理で報告していた。しかし、個別の作業などの記入漏れなどがあっても、経理には把握できないという課題があった。担当官に齟齬があると、二重請求のリスクも発生していたという。

Excelで無理矢理管理することで業務効率が落ちていた

「いろいろな会社さんと情報交換をしているのですが、ITツールを使って業務改善を進められているCapDoさんから『良いツールがあるよ』とkintoneのお話を伺いました」(高原氏)

 速い、安い、うまいという3拍子揃ったツールだったので使用することにしたという。牛丼のキャッチコピーのようだが、最初の設定をしたらすぐに使える、月額の安いサブスクだし、使おうと思えばどこまでも使える、という意味だそう。

 サイボウズのデベロッパーネットワークをはじめ、ネットにはkintoneのカスタマイズノウハウがたくさんあり、コミュニティも充実していて困ったときには仲間に頼ることもできそう。高原氏は「夢のツールでは!?」と感じた。

社内の抵抗には4つの段階で成功体験を

 しかし、実施に導入したら、“kintoneあるある”ではあるのだが、社内の抵抗が起きてしまった。「Excelの方が入力しやすい」「いろいろアプリがあって分からない」「入力したのにデータが消えている」「触ったらいけないところを更新してしまった」などと言われてしまったのだ。

 月末に一括でExcelに入力するという作業に慣れていて、日々アプリを開いてレコードを1つずつ入れるという登録作業を手間に感じてしまったためだそう。

新しいシステムを入れるときに社内の抵抗が起きるのは世の常

「ここをクリアするのに苦労しました。こういうときはスモールスタートして、小さな成功体験を重ねてもらうことが必要です。4つの段階に分けてアプリを導入し、メンバーにExcelよりもkintoneのほうが便利でしょ、とわかってもらいました」(高原氏)

 「レベル10」という1段階目は、「日報アプリと予実管理」に手を付けた。月初に顧客ごとの予定等か時間を入力し、毎日日報に顧客ごとの実績時間を登録するようにした。すると、いつでも工数の投下状況がわかり、差異分析ができるようになった。

まずは、顧客ごとに投下している時間を可視化できるようにした

 次の「レベル20」の2段階目では、売上管理からの請求連携アプリでは、過去の分も計上したというトラブルが起きないように、過去に計上した売り上げ済みの分は更新できないように制御した。

 「レベル30」では、案件単位の粗利と生産性を把握することにチャレンジ。リアルタイムに損益を見られるようにすることで、生産性が落ちているところをチェックし、若手の育成が足りていないとか、やり方が間違っているとか、報酬が低すぎるといった課題を見つけることができた。

 4段階目となる「レベル40」では、事務所のフィードフォワード経営を目指した。売上経理のデータから自動集計し、前年同月との比較や計画値との比較を行ない、未来の予測をグラフで見える化した。ネットの情報を参考にカスタマイズしながら作ったという。

カスタマイズをしてグラフで分析結果をビジュアル化した

6日かかっていた月末請求の締め期間が2日強で

 導入して2年が経過し、社内にkintoneが浸透したことで大きな業務改善効果が得られた。経営会議資料の準備工数がトータル16時間から8時間へと半分になった。月末請求締め期間が6日間かかっていたところが2日間と3分の1になった。そして、目標値が前年比20%アップという厳しいハードルにもかかわらず、2年連続で売上げ目標を達成した。

「推し進める上で、キーワードは「アメ」と「ムチ」です。アメはおもてなしの心です」(高原氏)

 アプリを使った場合の新しい業務フローを絵にして説明したり、複雑なアプリの場合は使い方を動画マニュアルに起こして、目に見える形にしてあげることが重要だという。2週間から1ヵ月くらいは、未入力や不備をチェックして、個別にフィードバックしてあげて、あまりにしつこくミスをするなら全社に見せてしまうことをしたそう。

 ムチとしては、トップダウンでの激励行が重要だという。なぜ、この情報をリアルタイムに見たいのか、という目的をトップが発信してもらった。セミナーなどで外部に事例として発信して、既成事実化するという荒技も使ったそうだ。

kintoneを浸透させるためのキーワードは「アメ」と「ムチ」

「次のステップとしては、もともと税務関係周りの数値を見ながら経営的なサポートをするサービスをやっていますので、ツールでもフォローを入れられないかと考えています。今後は、経営の見える化を集約するようなプラットフォームにkintoneを導入していこうと思います」と高原氏は締めた。

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