このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第96回

目指せ生産性向上200%!SIerと外部人材を活用して事業部門がシステム構築

現場が課題を見つけてkintoneで内製化 日清食品が目指す新しいIT部門のあり方

2020年12月21日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2020年11月11日から13日にかけて、幕張メッセで「Cybozu Days 2020」が開催された。その中では、多数のセッションが行なわれ、大勢の人たちがkintoneやサイボウズ製品について学んでいた。今回はその中から、「現場部門をワクワクさせろ! ハングリーにデジタル化を追求する日清食品ホールディングスのIT部門が目指す姿」というテーマで行なわれたセッションの様子を紹介しよう。

日清食品ホールディングス 情報企画部 次長 成田敏博氏

DXに積極的に取り組めるのはトップマネジメントがコミットしているから

 進行役としてサイボウズ 執行役員 営業本部長兼事業戦略室長 栗山圭太氏が登壇。有名企業がkintoneを導入した事例を出すと、大企業だからできたのでは?という声が寄せられることが多いという。しかし、今回の日清食品の事例はどこの企業でも取り組める内容で、「kintoneプロジェクトの進め方として理想的」だと栗山氏は持ち上げた。

サイボウズ 執行役員 営業本部長兼事業戦略室長 栗山圭太氏

 続いて登壇したのは日清食品ホールディングス 情報企画部 次長 成田敏博氏だ。成田氏は1年ほどまえに日清食品ホールディングスに入社した。これまでも、ディー・エヌ・エーやメルカリでIT戦略を担当しており、日清食品が4社目となるそう。そこで、ばりばりのIT企業から伝統ある企業に転職したのはなぜ?と栗山氏から質問が飛んだ。

「ディー・エヌ・エーで働いているときに、企業のCIOやIT部門の方と情報交換をさせていただき、非IT企業でデジタル化を進めるのも面白いのではないか、と考えました。その時に、(日清食品ホールディングスの)CIOである喜多羅さんから、デジタル化のアクセルを踏みたいので一緒にやらないか、と誘っていただき、やりたいと思いました」(成田氏)

 日清食品グループは「EARTH FOOD CREATOR」「Beyond Instant Foods」「生産性向上200%」という3つのキーワードを打ち出しているという。「EARTH FOOD CREATOR」は、日清食品グループのグループ理念でもあり、地球食を創る人という意味に留まらず、生きとし生けるものは食を大事にしているので、食を通じて楽しみや喜びを社会に届けて、貢献していくという考え方だ。「Beyond Instant Foods」は日清食品の主力商品である即席麺の、さらにその先の、今は世の中にないような新しい食文化を生み出すという目標のこと。3つ目の「生産性向上200%」について成田氏はこう語る。

「特に今年、社内で言われていることです。コロナ禍を経て、私たちの働き方も大きく変わりました。しかし、これまでとまったく違う働き方をする中でも、労働生産性を大きく向上しなければグローバル企業として生き残っていけない、という危機感をトップマネジメントが非常に強く持っています」

日清食品グループが目指す3つの理念や目標

 経済産業省は今年8月、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるデジタルトランスフォーメーションを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を「DX銘柄」として選定した。日清食品は、このDX銘柄2020に選ばれているのだ。

 そこで、表示されたのが2019年に作成されたポスター。格好いいデジタル侍のビジュアルと共に、「DIGITIZE YOUR ARMS」とスローガンを打ち出している。2019年1月に社内で配布されたもので、「今後はデジタルで武装し、ITリテラシーを高めていかなければ、生き残っていくことは難しい」という想いから作られたそう。

 左下には「2019年 脱・紙文化元年」「2020年 エブリディテレワーク」「2023年 ルーチンワークの50%減」「2025年 完全無人ラインの成立」というキャッチフレーズで今後のDX目標を告知したのだ。2020年、新型コロナウイルスの影響で、図らずも「エブリディテレワーク」は実現してしまったという。

2019年、コロナ禍以前に作られたポスター

 DX銘柄2020に選ばれた評価ポイントは3つあると成田氏。1つ目が関西の工場をリニューアルし、徹底的に自動化することで食品の安全性と生産性の向上を実現した「次世代型スマートファクトリー」。2つ目が社内にあるレガシーシステムを終了させるプロジェクト。結果的に、8割強のシステムをスリム化できたという。3つ目は、コロナ禍におけるあらたな働き方をIT施策でバックアップすること。Microsoft Teamsによるコミュニケーションやkintoneによるペーパーレス化が軸になった。

 加えて、トップマネジメントがDXに対して非常に強くコミットし、それを社内に対してリードしていることも大きく評価されたという。

DX銘柄2020に日清食品ホールディングスが選ばれた

明日から在宅勤務 従来からの改革が奏功したコロナ禍

 2月27日、日清食品の国内グループ約3000人が、基本的に明日から在宅勤務という通達が出された。日本の中でも早いタイミングだ。もちろん、IT部門はばたついたが、なんとか移行できた。それは、従来から進めてきた改革が功を奏したためだ。

 社内ネットワークではないところからでも、一定のアクセスができるようにクラウドシステムの基盤を作っていたそう。標準端末として、Microsoft Surfaceを配布していたので、自宅に環境を持ち帰るのも簡単だった。Microsoft Teamsの活用も進んでおり、コロナ禍以前からウェブ会議や在宅勤務もぽつぽつと行なわれていたので、移行のハードルが低かったという。

 部門によってはMicrosoft Teamsのスキルにばらつきがあったため、IT部門が各部門にMicrosoft Teamsの習熟度をヒアリングし、部門ごとにカスタマイズした社内研修を行なったそう。それによって全員のスキルを底上げでき、この取り組みは社内表彰を受けたそう。

 全員がリモートワークになった時は、VPNが繋がらないとか、アカウントが足りないという状況になったそう。そのため、脱VPNを進めているという。2020年4月からはkintoneを導入し、ペーパーレス化を推進。社外文書の電子化も、ステークホルダーに協力してもらいながら徐々に進めている。

 これらを実現できたのは、以前から勧めていたレガシーシステムの終了プロジェクトがあったため。まさに先見の明があったといっていいだろう。

コロナ禍でも3000人がスムーズに在宅勤務に切り替えられた

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事