このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

コミュニティ運営者のためのコミュニティ「Slack Community Hub」一般公開記念 ウェビナー

先駆者たちが語る「コロナ禍でコミュニティをうまく回すヒント」

2021年05月14日 07時00分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2021年4月にSlack Japanが開催した「Slack Community Hub」設立記念オンラインイベントでは、オンラインコミュニティを運営するコミュニティマネジャー2名も出席。コロナ禍で変化した運営環境への対応と、コミュニティ活性化のために取り組んでいることを紹介した。

Code for Japan コミュニティリード/SOMA 広報/大阪大学大学院 連合小児発達学研究科の武貞真未氏、情シスSlack 創設メンバー、運営担当のEugeneK(ユージーンケイ)氏

コロナ禍でメンバーが10倍増、新規参加者をなじませるために ―Code for Japan

 Code for Japanでコミュニティリードを務める武貞真未氏は、Civic Techコミュニティの運営にあたって、Slackをどう活用しているかを紹介した。「Civic Tech」とは、市民がテクノロジーを活用して地域課題を解決する活動を指す。行政に対して公共サービスの拡充を働きかけるのでなく、行政とサービスを「共創」することで、複雑な社会課題を解決していこうというものだ。

 Code for Japanは、そうしたCivic Techコミュニティの1つである。2009年に米国でスタートしたCode for Americaの兄弟組織で、東日本大震災をきっかけに発足した。グローバルとローカルの両方で活動しながら、その間をつなぐ運営をしている。

 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年、Code for JapanのSlackユーザー数は400から4900へと、それまでの10倍以上に増えたという。コロナ禍という大きな社会課題の解決を目指して「GithubやTwitterを介して全国のユーザーがSlackに集結したようです」と武貞氏は語る。

 このように突如増えたSlackユーザーに対し、Code for Japanではどう対応したのだろうか。武貞氏は次のように説明した。

 最初の課題は、Slackに入ってきたユーザーが何をしたらいいのかわからないことへの対応でした。まず、エントリー向けのガイダンスを新設しました。新規参加者に対して、自己紹介の書き込みをかなりしつこく求めて、書いてくれた人にはあらゆる人からリプライや絵文字が飛んでいくような仕掛けを実施しました。『入ったら、とりあえず書かないといけない』という雰囲気を演出しました」(武貞氏)

 新規ユーザーの自己紹介用テンプレートについては、海外のコミュニティ運営者から助言をもらい、以下のように設定した。このテンプレートに記入することで、既存メンバーで地域が近い人や興味関心が似ている人からの返信を受けやすくしたという。

・how:きっかけ
・when:いつから知っていたか
・who:普段の活動、仕事
・where:どこにいるか
・why:どんなことがしたいか
・free:自由記入(任意)

 また、Slackへの新規参加者が実際に活動するメンバーになるまでの心理的なハードルを下げるため、Slack以外のコミュニケーションツールも活用した。初めての人向けに過去の活動を紹介するアーカイブ動画をYouTubeに置いたり、オンラインイベントの開催時には、Zoom以外に「聞き専OK」のYouTubeライブ会場を開設したりした。

 「ビデオ通話、音声、テキストのツールを使い分けて、コミュニケーションの密度を上げたり下げたりしやすい環境を作りました」(武貞氏)

 「コロナ禍でインターンに参加できない」という学生の声に応えて、Code for Japanでは、オンラインで100名の学生と企業が参加するハッカソンを実施するなどの成果も残している。「コミュニティという基盤があったことで実現できたことだと思っています」(武貞氏)。

“孤立”していた情シスをつなぎ、全国に連携を広げる ―情シスSlack

 情シスSlackは設立からおよそ2年のコミュニティだ。創立メンバーの1人が社内異動で情シスに配属され、ITツールの勉強会をしたいという思いがきっかけでスタートした。

 情シスSlackの創設メンバーで運営担当を務めるEugeneK(ユージーンケイ)氏は、「情シスは、企業の中に閉じた仕事で、課題があっても聞ける相手が少ない。その情報共有や相談の場として活動しています」と説明する。現在の参加メンバーは約4000人まで拡大している。

 2019年4月にコミュニティを立ち上げ、2カ月後に最初のイベントをオフラインで開催した。以後、イベントを開催するたびにSlackへの参加者も増え、1年後の2020年3月時点で1000人を突破した。その直後からコロナ拡大により、活動はすべてオンライン化したが、参加者は順調に増え続けている。

 2020年秋からは、初心者向けのイベントや、情シスを求めている企業と情シス職の人をつなぐ求人イベントも開催するなど、活動の幅を広げている。

 情シスSlackの運営メンバーが心がけていることは、「発言しやすさ」の醸成と「最低限のルール」を定めること、そして「介入しすぎないこと」だという。

 「運営上のルールは、それほど細かく固めていませんが、仮に営業目的の書き込みなどがあると、それを見た参加者が絵文字で通常と違う反応をするなど、暗に拒否するメッセージを伝えます。Slackは雰囲気をうまく保つための便利な機能が揃っています」(EugeneK氏)

 メンバーが増えたことで、コミュニティ自体もメディアの取材を受けるようになった。イベントも活況で、情シスという職種の認知度が向上したとEugeneK氏は感じている。情シスSlackの兄弟組織ができた地域もあり、情シスを対象にした他のコミュニティやイベントも増えているという。

 今後は、Slack Community Hubを通じて、他のコミュニティとの関係を築いていければ嬉しいと、EugeneK氏は語った。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ