比較的売れたv-MP2000シリーズ
後継機種としてv-MP4000シリーズが登場
さて、ここからvideantisはどうなったか? というと、一応このv-MP2世代はそれなりに売れたようだ。途中からv-MP2000 Mとv-MP2000 HDに加え、v-MP2000 SDという製品も追加されている。これに続くのは2008年に発表されたv-MP4180HDXというIPで、その後にはv-MP4140HDXというIPも追加された。
v-MP4180HDXの構造は下の画像の通りで、ビデオ処理エンジンがv-MP2000 SD×4になっただけ(v-MP4140HDXはv-MP2000 SD×2)であるが、新たにv-SP2000というエンジンが追加になった。
これはMulti-Standard HD stream Unitという説明であるが、要するにコーデックである。v-MP4180HDX/4140HDXはH.264/AVC、MVC、MPEG-4、DivX、XviD、H.263、Flash、WMV-9/VC-1、RealVideo 8/9/10、Gppgle VP8/WebM、On2 VP6、MPEG-2、MPEG-1、JPEGと非常に多数のフォーマットに対応する必要があり、これらを解釈するコーデックとしてv-SP2000が追加されたものと思われる。
競合他社の多いビデオプロセッサー市場から脱却
自動運転向けのAIプロセッサーに注目する
このあたりからvideantisは方向性を変えてきた。というのは、STBなりDTVなりといった市場は確かに複数のビデオフォーマットを扱うし、これを省電力で処理するには専用プロセッサーを使った方が有利であるが、そうしたビデオプロセッサーを提供しているのはvideantisだけではないわけで、他社と差別化したり新しい市場を開拓する必要性が出てきた。この結果、v-MP4180HDXは用途として以下の項目を掲げるようになった。
- OpenCVを利用してのComputer Visionの高速化
- 顔認識やジェスチャー認識といったNatural User Interface
- レーン認識や歩行者認識、クルーズコントトロールといった運転アシスタント
v-MP4140HDXの方には、これに加えてビデオのスタビライジングなども上がっている。まだこの当時、ニューラルネットワークの利用は前提になく、あくまでも画像処理をベースにこうした機能を実装することの研究が盛んだったわけだが、こうした処理をCPUでやるよりも高速にできるというあたりに付加価値を見出していた格好である。
もともとv-MP4180HDX自身、1サイクルあたり64個の16bit Pixelの処理が可能ということで、その処理性能そのものも評価されていたらしい。2011年には、40nmプロセスで400MHz駆動が可能で、しかも消費電力はわずか5mWというv-MP4280HDXがリリースされている。
その前には65nmを利用したシリコンの試作などもあったようだ。その後もvideantisはEmbedded Vision Allianceに参加したり、Khronos Groupに加盟してOpenVXのサポートを表明したり、またドイツの自動車向けTier 1ベンダーなどと組んで自動運転向けのプラットフォームの開発などに携わっていた。
2017年9月には、その自動運転をネタに、eCAPITALから投資を受けている。おそらくこの自動運転の検討の中で、この頃にはAIを利用して自動運転を行なう、というアイディアは出てきていたのだろう。
NVIDIAは2015年のCESでDrive PXを発表しており、自動運転にAIが利用できる可能性が非常に高いという検討は当然この頃からされていたはずだ。この時期、videantisでは目立った新製品が一切出ていないが、おそらくはAI向けプロセッサーの開発を大車輪で行なっていたと思われる。
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