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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第604回

累計1000万個の出荷を記録したvideantis AIプロセッサーの昨今

2021年03月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 ドイツにvideantis GmbHというプロセッサーIPの会社がある。創業は2004年と比較的最近で、創業者はHans-Joachim Stolberg氏。1995年にハノーファー大卒業後、2001年にはフェローとして東工大に留学していたこともある。卒業後、1年間はNECの中央研究所でV830の開発に従事していたという、妙に日本と関係がある方だ。

 そのStolberg氏、NECのあとは再びハノーファ大に研究員として戻り、ビデオ処理関係の研究をしていたが、その後に独立して興したのがvideantisである。そういうわけでvideantisも映像関係のプロセッサーを手掛けることになった。

H.264のデコードを可能にする
ビデオプロセッサー「v-MP2000」

 videantisが2005年に最初に発表したのはv-MP2000というビデオプロセッサーである。2005年当時といえば、やっとH.264が普及を始めた(とは言え、当時のCPUではまだプロトコルハンドリングが重すぎた)という時期で、携帯プレイヤー(まだスマートフォンが登場する前である!)でもややハンドリングが厳しかった。

これは2005年のFall Processor Forumでの発表。この前にv-MP1000 Mという製品があったのだが、ただこれ外部に発売したのだろうか?

 こうした時期にH.264でVGAサイズまで、MPEG-4でSDサイズまでのデコードをワンチップで可能とし、より高い解像度向けにはマルチコア構成で対応するという同社のv-MP2000シリーズはそれなりに市場が開けていた(かのように見えた)。

 まだこの時点ではv-MP2そのものの設計は完了していなかったが、初代のv-MP1でもH.264のベースライン・デコードがVGAで30fpsを達成しており、この倍の性能が予定されていたv-MP2ベースではこれを上回る処理性能が実現されるとしていた。

v-MP2もやはり130μmプロセスでの製造を想定しており、2.61平方mmほどのエリアサイズになるとされていた。ちなみにv-MP2は200MHz駆動で90mWになるという試算であった

 そのv-MP2の中身が下の画像だ。Scalar UnitとVector Unitの2つの演算ユニットを持つVILWという、この当時は結構流行した構成である。“ISA extensions”とあるが、命令セットそのものをビデオ処理に向けてけっこう特化させているのも特徴である。

 ちなみにvideantisはこのv-MP2の先にあるv-MP3の命令セットの定義もこの時点でスタートさせているが、後方互換性はきちんと維持することで既存のアプリケーションはそのまま将来のプロセッサーでも動作するとしていた。

なぜかPDFのスライドに文字が入っていなかったので、これのみ当時撮影した写真から

 videantisはあくまでもIPを提供する会社であり、実際には顧客のSoCに組み込んで使われる構成になる。要するに携帯プレイヤー向けのSoCにこれを組み込めば、H.264対応になるというわけだ。

Stream Processorとあるのはビデオストリームの読み込みや、デコード後の映像ストリームの処理をするからで、要するに汎用プロセッサーである。MIPSの名前がすでに懐かしい

 ちなみにもっと大きなSTB/DTV(まだこの当時はDTVという概念は希薄だったが)向けには、v-MP2を3コア構成としたv-MP2000 HDというシステムを提案した。

3コアで足りるのか? というのが少し心配ではある

 こちらは0.13μmで300MHz駆動、450Kゲートでエリアサイズ11mm2という構成。やや大きめな気はするが、0.13μmと古めのプロセスを使っているあたりは致し方ないところであろう。FPGAで稼働するプロトタイプのIPの提供も可能で、これで事前に性能の確認や3つのv-MP2のコアへの処理の割り振り、ソフトウェアの先行開発などが可能とされていた。

この頃はTSMCの90nmもだいぶ落ち着いた気はするのだが、価格を考えると0.13μmの方が安いのは事実で、そのあたりを狙っていたものと思われる

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