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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第127回

アップル「AirPods Max」6万円以上するワケ

2020年12月21日 16時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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●ヒヤラブルな未来

 また別の方向から考えてみると、AirPods Maxの登場は、「ヒヤラブル」デバイスとしての面白みもあります。デジタルクラウンがついた丸みを帯びたAirPods Maxを見て、シルエット的にApple Watchに似ている!と思った方もいるのではないでしょうか。

 Apple WatchにはSシリーズのチップが搭載されていますが、つい最近HomePod miniにS5が搭載され、コンピュテーショナルオーディオを行う頭脳として活用できるという気づきがありました。ただ、S5とH1でオーディオ処理の性能を比較すると、後者に軍配が上がるのかもしれません。

 A8搭載のHomePodや、H1搭載のAirPods Pro/Maxは、環境音を拾ったノイズキャンセリング、イコライジングといったフィードバックの仕組みや、音を立体的に構成する空間オーディオのような「サイコ・アコースティック」技術を必要としています。しかしS5を搭載したHomePod miniは、再生する前のオーディオ処理こそしますが、そこまで複雑な処理をするわけではなさそうでした。

 H1チップの10コア、秒間90億回のオーディオ処理をすることができ、より高性能。しかしそれ以外のアプリ処理を実現できるわけではないので、H1とSシリーズの組み合わせや、将来のSシリーズがH1並のオーディオ処理を実現する性能を向上させて搭載。

 こんなパターンでAirPods Maxに入ると、単体での通信の可能性が開けてきそうです。Apple MusicやPodcastなどを単体再生したり、保存しておいた音楽を再生できる仕組みは、ヘッドフォンの未来、という感覚を強めてくれます。

 おそらくiPhone、Apple Watchは残り続けますから、AirPods Maxが通信に対応しても、どこで使うのか悩むところではありますし、複数の電話番号を1つの電話番号に紐付ける、キャリア側の対応も必要そうです。

 ただヘッドフォンをかけるだけで、好きな音楽を最高の音で再生してくれる、声でナビもできる、通話にも出られる、メッセージも返せる、というヘッドフォンは、アクセシビリティの観点からも実現してほしいと思いました。

 でも、視聴したらそんな未来像が吹き飛ぶぐらいの高音質を体験できれば、それはそれで大満足だと思います。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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