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コラボレーションとイノベーションを加速させるコツとは? 「Slack Tour Japan Online」講演レポート

東映アニメとマクドナルド、Slackで国や組織を超えたコラボレーション

2020年12月21日 08時00分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 コロナ禍でリモートワークの生産性が重要視される中、リモート環境でも社内外を問わずコミュニケーションを充実させ、イノベーションや新規事業を加速させるにはどうしたらいいのか。2020年11月に開催された「Slack Tour Japan Online」の講演から、Slackを活用する東映アニメーション、日本マクドナルドの事例を紹介する。

東映アニメーション 経営管理本部 情報システム部 課長の賀東(かとう)敦氏

日本マクドナルド マーケティング部 デジタルマーケティング担当 執行役員のラファエル・マズゥワイエ氏

東映アニメーション:“決め打ち”でSlackを導入した理由

 まず、東映アニメーション 経営管理本部情報システム部課長の賀東敦氏が登壇した。東映アニメーションは、「プリキュア」「セーラームーン」「おしりたんてい」などの人気アニメ作品を手がける制作会社。賀東氏はもともとミュージシャンで、2016年に同社に入社、現在は情報システム部に所属する。

 賀東氏が現在、仕事のモットーにするほど“はまっている”のが、「増やしたいのは笑顔です。」というアートネイチャーの広告コピーだという。やや唐突だが、これは後の話に関連してくる。

広告コピーで目にする「増やしたいのは笑顔です。」という言葉をモットーにしているという

 同社はなぜSlackを導入したのか。実は以前から、Eメールに代わるコミュニケーションツールを各部署が勝手に使っていた。いわゆる「シャドーIT」である。その実態を情報システム部が調査したところ、すでにSlackを無許可で利用する“野良Slack”のユーザーや部門が多数いることが判明した。なかには有償版を契約しているケースもあったという。

 情報システム部としてシャドーITをコントロールしなければならない状況下で、賀東氏は全社に対し「メッセージプラットフォームはSlackに統一する」という暫定運用ルールを通知した。すでに先頭を走り、使いこなしている“トップランナー”のユーザーに全社を合わせることで、さらに利用が促進され、裾野が広がると考えたからだ。

 社内からは、ほかのツールをなぜ検討しないのかという疑問の声も上がったが、賀東氏のチームはあえて、ツールを比較検討することは回避した。「社内の意見を調整しながらツール選定を進めると、いつの間にか『何(どのツール)を入れるのか』が目的になってしまう。それよりも、すでに使っている人の利便性を損なわないことが合理的」と判断したからだという。

「何を入れるのか」が目的ではないので、ツールの比較検討はせず、すでに多用されているツールを選んで既存ユーザーの利便性を損なわないようにした

 新たなコミュニケーションツールを導入するという短期的なゴール設定ではなく、目指すべきは社員が笑顔で働けること(これが先ほどの“増やしたいのは笑顔です。”につながる)なのである。「全員が妥協して同意する落とし所でなく、少々遠くても、最終的に社員がハッピーになれる方策を目指すべき」と賀東氏は強調する。

長期的な視点でSlackの使い手を増やしていく

 この方針のもと、同社ではSlackのEnterprise Gridを導入した。従来からあった野良Slack(主に部門ごと)のワークスペースはここに統合し、並行して新規に申請があったワークスペースは、情報システム部が審査したうえでアカウント付与を判断した。

 こうした対応をとったため、野良Slackだったものは無条件で使える一方で、新規申請の場合は時期尚早などと判断されて却下されるケースもあり、社内からはクレームも来た。そうした社内の波風を受けながらも、情報システム部では長期的な目標のイメージを共有し、そこに向かって覚悟を決めて導入を進めた。

社内で使い方の「標準化」がなされていないと、さまざまな問題が生じることに

 一通り導入が済んだ後、情報システム部では運用の見直しを決める。全社における「利用の標準化」だ。ワークスペースとチャンネルのデザイン再整備のほか、社内での利用ルールをはじめ、社外との連携時に注意すべき機密情報のガイドライン統一、Slack上の会話で何がハラスメントに該当するのかなど、細かいことも規定した。

 そのうえで、各部門のワークスペース管理者には自由にチャンネルを設定できるようにした。ワークスペース管理者とアンバサダー(Slackの利用に慣れており、周囲のユーザーを支援するパワーユーザー)が、各部門における活用促進の役割を担う。各部門にSlackの“手練れ”を多く作り、彼らに対して情報システム部から支援を行う体制を整えた。

見えない伝達コストをパブリックスペースで一掃

 Slackの運用を進めた結果、東映アニメーションでは社内のコミュニケーションが効率化していったという。

 「メールでは、部門間をまたぐ連絡の際に『この人を宛先に入れるべき?』などと気を遣うが、実はそれが伝達コストになっている。“仕事のために仕事をする”ようなことは少ないほうがいい。Slackのパブリックチャンネルに情報を入れれば、誰に送るかといったことを考える必要がないため、伝達コストを大幅に下げることができる。こうしたユースケースの積み重ねが、のちのち効いてくると思っている」(賀東氏)

 社内における部署間コミュニケーションの「標準化」は、そのまま社外とのやりとりにもあてはまる。Slackの新機能である「Slackコネクト」を使えば、取引先など多数の社外組織と簡単にチャンネルを接続することができ、たとえば担当者が変わっても、チャンネルのメンバーは送り先を気にする必要がない。これによる伝達コスト低減は大きいと賀東氏は見ている。

社内と同じように社外の取引先などとチャンネルを共有できる「Slackコネクト」の利用で、伝達コストを下げられる

 また同社では新たに、社員や常勤の外部スタッフがどこで働いているか、Slackのチャンネルを切り替えるだけで就労状況の確認ができるようにした。これはコロナ禍で非常に重宝しているという。「休暇取得者が登録するチャンネルを作って、今日休みの人の一覧を見ることもできるようになった」(賀東氏)。

 現在は情報システム部でなく、ユーザーからもこうした新しい使い方を提案する声が上がり始めているという。賀東氏は、現場主導のイノベーションの広がりを期待している。

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