“音を抜いてみようかな、モード”になっていて……
── May'nさんの声質は、芯があって、細く絞ったようによく通る印象があります。ミックスボイスは対照的で、もっと柔らかく広がる感じです。使い分けで意識したことはありますか?
May'n これまでのシングルで多かった、ロックナンバーみたいなものでは、勢いやアタックの強さが求められます。地声を張るなど、強い歌い方が中心になりますね。私自身、それを得意としてきたのですが、もっと肩の力を抜ける音楽にもチャレンジしたいと思っています。また、音を詰め込んで盛り上がれる楽曲ではなく、ちょっと“音を抜いてみようかな、モード”になっていて……。みんなに落ち着いて聞いてもらえる楽曲を増やしたいと考えていました。アタックの強い曲と歌い方にこだわらず、ミックスとか頭声なども取り入れ、楽に歌える自分でいたいなって思ったりもしています。
── そんなチャレンジが反映された曲のひとつが英語歌詞の曲「Digital Flower」でしょうか?
May'n はい。ミックスボイスをここまで積極的に使った曲は初めてでしたね。MiliのYamamoto Kasaiさんに提供いただいた楽曲で、Miliならではの世界観やアカデミックなディレクションが生きた作品になりました。May'n楽曲をこれまで手掛けてきたスタッフによるディレクション、そして私自身の音作りとは、大きく違った刺激や発見がある曲でした。
── Digtal Flowerが収録されている“15Colors -nu skool-”には、和のテイストを感じさせる「春夢」のような曲もあり、個人的には3枚の中で一番、面白さや新しさ、方向感の広がりを感じさせるアルバムだと感じました。
May'n ここ数年続けてきた、ボーカルのトレーニングが生きた面もあると思います。一方で、どんな歌い方をしても、私が歌えば“May'nの楽曲になれる”という手ごたえや自信も得られました。15周年というメモリアルな年にこの作品を出せたことは、とても大きなことだったと思います。
── May'nさんの魅力のひとつにライブがあります。レコーディングとライブではアプローチに変化がありますか?
May'n ライブとレコーディングで意識的に歌い方を変えることはせず、どちらも大切にしています。ただ、ライブはその場の空気感とともに楽しんでくれているから、ある種ノリで伝えられる部分もあって、その場ならではの気持ちも乗ります。そこが良さですね。また、何度も繰り返し歌うことで、それぞれのステージから見た景色があって、そこにまた新しい想いが加わっていきます。CDは最初の完成形、それをどんどん育てていくのがライブと言ってもいいかもしれません。
CDや配信では、それぞれの環境で聴いてもらいますし、TD(トラックダウン)やミックスにおいても各クリエイターさんが細かいこだわりを持って作品作りをしています。私の歌い方もそうですし、それぞれの楽器のエディットやミックスもそうですし。