RTX 3060Ti>RTX 2080 SUPERは「ほぼ」正確な表現
何はなくとも「3DMark」のスコアー比べから始めよう。最近になってまたテストがいくつか追加されたが、Fire Strike〜Port Royalまでの定番セットで検証する。
RTX 3060 Ti FEのスコアーは、上位モデルであるRTX 3070 FEに対してはおおよそ11〜16%下に位置している。これはCUDAコア数が減った分(約20%)減少に近いものだ。下位モデルとしては順当な結果といえるだろう。
そして旧世代のxx60番台の製品と比較した場合、RTX 2060 FEはRTX 3060 Ti FEの6〜7割程度、GTX 1660は4〜6割、GTX 1060に対しては3〜4割の性能しか出せていない。GTX系GPUはレイトレーシング処理向けのRTコアを搭載しないため、レイトレーシングのパフォーマンスを計るPort Royalのスコアーはさらに低くなっている。CUDAコア数はもちろんコアの内容も違ううえに、今回のRTX 3060 Tiはミドルレンジではなく“メインストリーム”的な位置付けの製品であるため、ある意味当然の結果といえる。
そしてNVIDIAの「RTX 2080 SUPERよりも高速」という謳い文句は「ほぼ」正しいことも上のグラフから読み取れる。Ampere世代でNVIDIAは性能を一気に盛ってきたことがわかる(AMDの動向を見ればこれは正解だったと今なら言える)。ただしPort RoyalだけはなぜかRTX 2080 SUPER FEの方が高スコアーになった。
RTX 3060 Ti FEの方がRTコア数は少ないが、Turing vs AmpereならRTコア数が少なくてもPort RoyalのスコアーはAmpereが勝つというのがこれまでの流れ。しかしRTX 3060 Ti FEでは負ける理由は、RTコア周りではなくGPUコアの動作クロックや、メモリーのデータレートに理由があるようだ。ただPort Royalのスコアーは実際のDXRパフォーマンスと一致する訳ではないので、この後の検証で結論を出すべきだろう。
そしてここで消費電力をチェックしてみよう。ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」を使用し、システム全体の消費電力を測定する。ここではシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ再生中のピーク値を“高負荷時”としている。
CUDAコア4864基を備えるだけあって、TGP200Wといえど高負荷時はそれなりに電力を食う。旧世代のxx60番台よりは60〜120W上回ると思ってよいだろう。ただRTX 2080 SUPER FEに対しては、ほぼ同性能なのにも関わらずRTX 3060 Ti FEが40W以上下回っている。高クロック動作のRTX 2080 SUPERの泣き所ともいえるが、同時にCUDAコア数を盛っても消費電力があまり増えていないRTX 3060 Tiのワットパフォーマンスの高さが読み取れる。
ついでにビデオカード単体の消費電力(TBP:Total Board Power)をNVIDIAの「PCAT(https://ascii.jp/elem/000/004/026/4026360/)」を利用して正確に計測してみた。3DMarkの“Time Spy Stress Test”を5分間回し、その際のTBPの変動を記録している。さらにその間の最小値/平均値/最大値も比較する。
まずTBP推移グラフからはGPUの消費電力がその瞬間ごとにおいて刻々と変わる様子が読み取れるが、その中でも最もY軸で上(=消費電力が高い)なのがRTX 2080 SUPER FE。TBPが定期的に脈動しているのはStress Testで同じシーンを繰り返すためだ。これによるとビデオカードだけで瞬間的に最大291W消費しているが、平均で見るとほぼスペック表のTGPに近い約243Wに収束している。
そして肝心のRTX 3060 Ti FEは平均で206W、瞬間的には最大253Wであり、RTX 3070 FEより実測値で平均6W下につけている。旧世代xx60番台、特にGTX 1060 FEと比べるとRTX 3060 Ti FEの消費電力は2倍近くになっているが、3DMarkのスコアーは3倍近く稼げるようになっているため、Pascal世代から見るとワットパフォーマンスは大きく向上していることが分かる。
ちなみにGTX 1060の初出価格が約3万5000円程度なので、RTX 3060 Tiの実売価格が筆者の予想通りなら、コストはほぼ倍になったものの性能は3倍近くに伸びているため、コストパフォーマンス面においても優秀といえる。
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