3) Ray AcceleratorによるDXR対応
描画周りの新機能としては、DXR(DirectX Raytracing)に対応したことも注目ポイントだ。この点においてはGeForceにようやく追い付いた形だが、レイトレーシング対応のゲームも増えてきたし、家庭用ゲーム機でも対応させるし、ちょうどいい導入の頃合いといえるだろう。
Radeon RX 6000シリーズにおいてもNVIDIAのTuring/Ampereと同様にレイトレーシングにおける最大の勘所、BVHトラバーサルを行なう専用の回路「Ray Accelerator(RA)」を実装している。CU1基につきRAは1基の割合で搭載されているため、CUが72基のRadeon RX 6800 XTならRAも72基となる。

RAはクロック当たりレイ1つとトライアングルとの衝突判定を実行でき、さらにレイの挿入時間ごとにソートする機能も備えている。Infinity CacheはこのBVHトラバーサルに必要なデータの多くを保持することで、処理を効率化するのだ
RAで衝突判定した結果を元に、さまざまな処理が行なわれるのはGeForceと同じだが、レイトレーシングにともなうノイズ除去処理に関してはGeForceと異なるアプローチをとっている。
AMDは「FidelityFX」というSPを使った処理をいくつか開発しているが、今回FidelityFXにノイズ除去処理「FidelityFX Denoiser」を開発した。GeForceのノイズ除去処理はTensorコアに負荷をオフロードすることができる(計算ベースのデノイズも使われる)が、ご存じの通りTuring/Ampereでしか使えない。しかしFidelityFX DenoiserはSPを使うためGPUを選ばないというメリットもある。
Tensorコアの話題が出たところで、NVIDIAのDLSSの話もしておこう。現状のところRX 6000シリーズにはDLSSに相当する機能はない。DLSSはリアルの解像度よりも低い解像度でレンダリングし、さらに時間的空間的要素も加味しつつ、AIでアップスケーリング&アンチエイリアシングを行なう技術である。
ゲームの画面はDXRの有無に関係なく1ドットずつ色を決めていくのだが、解像度が高まるごとに効率は悪くなる。アップスケーリングを使えばこの負荷を省略できる、というのがDLSSのコンセプトだ。
現時点のRadeonには、DLSSのような負荷軽減技術はVRS(Variable Rate Shading)か動的解像度変更(Radeon Boost)しか利用できない。VRSはRX 6000シリーズで新実装された機能で、こちらもFidelityFXの一部として利用できる。
だがVRSだけでは根本解決にはならない。そこでAMDもDLSS相当の機能である「FidelityFX Super Resolution」を開発中である。FidelityFXなので特定のGPUアーキテクチャーに関係なく利用できる(OpenMLによるAI実装を使っているらしい)のが強みだ。ただし現時点ではこれ以上の情報はない。今後に期待したい。

4Kプレイでの描画負荷は非常に高く、ドットバイドットのレンダリングではパワーがいくらあっても足りない。そこでTemporal Reconstructionやアップスケーリング等で負荷を減らす技術が必須になってくる

Temporal Reconstructionには様々な技法がある。AMDのFidelityFX CAS SharpningとScalingの合わせ技や、動的解像度変更、1ドットおきに処理して間は前フレームデータから補間するチェッカーボードレンダリング等がある

この連載の記事
- 第326回 Cyberpunk 2077最高画質プレイに必要なRyzenとRadeonの組み合わせについて考える
- 第325回 最速Big Navi「Radeon RX 6900 XT」の未知の速さを検証する
- 第324回 Intel環境でもRadeon RX 6000シリーズのSmart Access Memoryが使えるのか検証してみた
- 第323回 GeForce RTX 3060 Ti FE速攻レビュー!DXRゲームを楽しむなら最もお買い得なGPU
- 第322回 Radeon RX 6800 XT/6800で強いRadeonが久々に戻ってきた!【後編】
- 第320回 「Ryzen 9 5950X」「Ryzen 5 5600X」を加えすべてのRyzen 5000シリーズの実力を俯瞰する
- 第319回 Zen3の圧倒的性能を発揮!「Ryzen 7 5800X」「Ryzen 9 5900X」速攻レビュー
- 第318回 ビデオカードが入るNUC 9 Extremeを検証!RTX 3070の外付け魔改造も試す
- 第317回 GeForce RTX 3070 FEレビュー!Ampere世代最強の電力性能比とRTX 2080 Ti超えを確認
- 第316回 NVIDIA Reflexでゲームの遅延を削減!360Hz液晶でわかったFortniteやVALORANTでの効果
- この連載の一覧へ