全国12カ所の物理拠点とオンラインを通じて日本のDXを支援する「Azure Base」も本格始動
日本MS、Azureの新年度事業戦略と具体的な取り組み計画を発表
2020年10月16日 07時00分更新
日本マイクロソフトは2020年10月14日、2021年度(2020年7月~2021年6月期)のMicrosoft Azure事業方針説明会を開催した。「クラウドネイティブなアプリ開発と既存アプリのモダナイズ」を最重点分野とする一方で、「既存アプリケーションのAzureへの移行」「クラウド導入プロセスの標準化とクラウド・センター・オブ・エクセレンス(CCoE)文化の醸成」にも引き続き注力する方針を掲げている。
さらに、顧客組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することを目的とした、全国の物理拠点を活用して幅広い活動を展開する「Azure Base」プロジェクトの正式ローンチも発表した。
昨年度の振り返り、Azureビジネスは年平均成長率80%以上を達成
日本マイクロソフト マーケティング&オペレーション部門 Azureビジネス本部 プロダクトマーケティング&テクノロジ部 部長の田中啓之氏はまず、今年6月で終了した2020年度のAzureビジネスの成果を振り返った。同社では2020年度、「クラウドへの移行」「アプリの変革」「クラウド導入・活用支援」という3つの戦略に注力してきた。
それぞれの戦略を背景とした取り組みの成果も紹介した。まず「クラウドへの移行」では、一般提供を開始した「Windows Virtual Desktop(WVD)」などリモートワークに対するオファー拡大、“SAP on Azure”での案件獲得、そして「Azure Migration Program(Azure移行プログラム)」などを展開した。
「SAP on Azureは100件以上のユーザーを獲得しており、三井物産では基幹システムのクラウド移行を実現した。また星野リゾートでは、ハワイのホテル運用端末としてWVDを採用。米国リージョンを使い低遅延、かつセキュアな運用環境を実現している。この例のように、世界63カ所にあるAzureリージョンを活用して、グローバルに展開する企業への支援も増えている。既存システムやワークロードのAzure移行、最適化の動きも加速した」(田中氏)
「アプリの変革」では、高速なデータウェアハウス(DWH)とビッグデータ分析を統合したサービス「Azure Synapse Analytics」の発表、Azure AI関連案件の増加、リファレンスアーキテクチャーによる業種テンプレートの展開を挙げた。
「データ活用が鍵になるなかで、DWHのサービス(Synapse Analytics)を新たに発表。また2020年末からは、本番環境でAIを実装する案件が増加している。業種別テンプレートは現在、5つの業種に対して11のテンプレートを提供している。たとえば小売業向けの“スマートストア”テンプレートなどだ」(田中氏)
Azure AI/Cognitive Services関連の事例としては、エイベックス・エンタテインメントが展開した「Humanoid DJ Project」を紹介した。これはイベント来場者の人数、属性、感情を“AI DJ”が分析し、ダンサーがパフォーマンスを行うための楽曲をリアルタイムに生成するというものだ。「会期中に行われた600回以上のパフォーマンスは、毎回すべて異なる演出が行われた」という。
「クラウド導入・活用支援」では、Enterprise Skills Initiative(ESI)を通じてAzureに対する習熟度向上を支援したほか、Azure認定資格の強化、Azure Baseのプレローンチといった取り組みを挙げた。
「イオングループのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスでは、日本マイクロソフトがDXパートナーとなって社内人材育成をサポート。4カ月間で130名以上のAzure資格取得者を生んだ。その結果、たとえば食品売り場のパンの在庫を棚卸しするシステムを、社員自らがわずか1カ月半で開発するといった成果も出ている。昨年度、国内全体では新たに1万名がAzure認定資格を取得した」(田中氏)
こうした取り組みの結果、Azureは市場平均のおよそ4倍にあたる強い成長を遂げているという。IDC Japanの予測では、国内IaaS市場は2024年までの年平均成長率(CAGR)が23.6%、国内PaaS市場は同 20.6%となっているが、Azureは80%以上の年平均成長率を達成していると説明した。