2020年8月6日、ワークスモバイルジャパンは、薬局経営者と介護事業者をゲストに招き、LINE WORKSを用いた医療・介護業界での情報連携をテーマにしたトークライブを開催した。社内でのコミュニケーションに加え、病院や往診医師など外部の医療機関とつながることで、果たしてどのようなメリットを得られたのか? 具体的な活用方法も含め、今回も役立つ経験談が満載だった。
情報格差や従業員満足度の向上を目指し、LINE WORKSを導入
「会えなくても仕事が進む! Episode2 LINE WORKSではじめる!地域包括ケア時代の情報連携」と題された今回のトークライブは、医療・介護業界での情報共有とLINE WORKSの具体的な使いこなしが大きなテーマとなった。
1人目のゲストは大阪府茨木市で「アクア薬局」を経営する株式会社GIFTEDの加藤信幸氏だ。自身も薬剤師で、店舗での処方箋調剤業務のほか、地域の約100名の在宅療養支援に当たっているとのことで、いわば「走り回る薬剤師」と言えよう。
2人目のゲストは医療法人社団 健育会 ひまわり在宅サポートグループの若林陽盛氏だ。ひまわり在宅サポートグループは宮城県の石巻市で約1500名の訪問看護や居宅介護支援を手がけており、若林氏はグループ全体のマネジメントを担当している。自身もヘルパーや障害者就労支援員として勤務した経験を持つ社会福祉士であり、「ES(従業員満足度)なくしてCS(顧客満足度)なし」をモットーに働きやすい環境作りに腐心している。
次にLINE WORKSの導入状況だが、両者とも薬局や施設内の社内でのコミュニケーションに加え、薬局や病院など外部機関とのやりとりにも使っている点は共通している。利用期間が1年以上と比較的長い点も同じだ。一方で、アクア薬局が2店舗・20名なのに対し、ひまわり在宅サポートグループは9事業所・約170名と導入規模が大きい。LINE WORKSにはフリープランもあるが、2社とも情報管理等の理由から有償のライトプランを利用している。
まずはLINE WORKS導入に至る経緯を聞いた。
アクア薬局はもともと社内のやりとりにアナログな「連絡ノート」を使っていたが、従業員が増えるにつれ、パートと正社員の情報格差が生まれてしまったという。また、女性の従業員も多いため、出勤日や勤務時間の差によって、情報共有や引き継ぎもうまくいってなかった。「LINEを使ってやりとりをしていたが、仕事とプライベートの境目があいまいになってしまうという問題がありました」と加藤氏は振り返る。そんな中、外部の病院からの連絡手段にLINE WORKSが導入されたことを機に、LINEからの代替ツールとしての利便性を感じ、自社導入したという経緯だ。
訪問事業をメインにしているひまわり在宅サポートグループの場合、看護師やヘルパーが気軽に相談できる環境になかったのが問題だった。「訪問先での報告・連絡・相談がうまくできず、従業員の満足度調査でもどうしても精神的な不安が見うけられた。これを解消すべくビジネスチャットの導入を検討することにしました」と若林氏は語る。情報管理の重要性も踏まえ、さまざまなツールを試用する中、LINE WORKSに決めたのは、LINEゆずりのユーザーインターフェイスと「LINEとつながる」外部連携のやりやすさが大きなポイントだったという。
リテラシが低いと決めつけない モチベーションがあれば使う
アクア薬局では、薬剤師や事務員など職種ごと、あるいは所属店舗や患者訪問などの業務ごとにトークグループを作成し、コミュニケ―ションをとったり、カレンダーで訪問履歴などを記録している。また、LINEにはない機能として、カレンダーのほかに、社員への一斉周知に便利なホーム(掲示板機能)を活用している。最近では、製薬会社等から紙で届く最新の薬剤情報やウェビナー情報をオンラインで共有している。自ずと情報の蓄積になり、あとからキーワード検索できる点が便利とのこと。「コロナウイルスの影響で製薬会社の方が薬局に訪問して、新製品の情報を教えてくれることも減ったので、こうした情報共有は助かっています」(加藤氏)。
ひまわり在宅サポートグループでは、LINE WORKSのトークを使い訪問看護のメンバー同士で患者情報をテキストと写真で共有している。また、掲示板を使って、従業員に対して事務連絡を行なっている。「新しい職員が入ってきても事務所が違うと会わないことも多いし、事務所同士も距離が離れているので、掲示板を使って社内の情報を共有しています」と若林氏は語る。
ちなみにひまわり在宅サポートグループでLINE WORKSが一気に浸透したのは、実はこれまたLINEにはない、アンケート機能だったという。「新しいユニフォームを決めるとき、今まではサンプルをとりよせて、それを各事務所に回して決めていたのですが、アンケート機能を使えばすぐに決められました」(若林氏)。全員の参加を促す運用が、導入初期のコツといえるだろう。
一般的に医療業界は紙が多く、業務もアナログで、IT化が遅れているというイメージもある。これに関して若林氏は、「確かに高齢の方が多いので、ITに弱いというイメージももたれがちだし、本人もそう思っている節がありますが、私は全然そんなこと思っていません。モチベーションがあれば、みなさんきちんと使ってくれる。少なくともLINE WORKSであれば、リテラシはあまり意識しなくても使えたという印象があります」と語る。また、紙ベースで行なわれる実施指導や監査などの書類もLINE WORKSで管理することで、かなりの効率化が図れているという。
加藤氏も「実際に紙は多いです。処方箋も紙ですし、訪問時の報告書も文書で提供しますし、紙で渡すのが法律で決まっています。でも、その裏側で行なわれるやりとりに関してはLINE WORKSで済ませることができます」ワークスモバイルジャパンの篠田麻実氏も、「日報や報告書をLINE WORKSのトークやノート機能に置き換え効率化を進める現場は増えている」と語る。