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「医師の働き方改革」にも役立つ

医師が語る! 医療現場でのコミュニケーションツールの活用と定着のポイント

2022年09月29日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 ワークスモバイルジャパンは、介護・医療業界のこれからの働き方・事業運営について学ぶオンラインセミナー「介護・医療の新常識 学びウィーク」を開催した。2期の「医療現場の働き方改革」のテーマでは、飯塚病院 連携医療・緩和ケア科(以下・緩和ケア科)医長の大森崇史氏が、スタッフのコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを導入し、活用する過程を説明した。

飯塚病院 連携医療・緩和ケア科 医長の大森崇史氏

医療現場のDXは待ったなしの課題

 福岡県中心部の飯塚市にあり、広域医療を支える飯塚病院。大森氏が所属する緩和ケア科は、主に末期患者の入院から訪問診療までを行なっている。診療科全体で90~100人の患者を担当し、医療用麻薬を用いた痛みの緩和治療や他の診療科に入院する患者の緩和ケアに関する相談、地域医療機関へのアウトリーチなどを行なう。大森氏は組織マネジメントの立場で、入院患者の担当決定やスタッフの教育、他施設との連携なども担当する。

 大森氏は自らの志として、「効率的な医療が過不足なく提供されるシステムを構築することが、これからの医療には大切」と語る。医療現場の質を担保、向上しながら労働環境を改善するためには、ICTの活用が不可欠だ。

 規模の大小を問わず、現在の医療現場はデジタル化が急務である。まず、取り扱う情報量が非常に増えている。収集したデータを前提にした医師の判断も必要になる。また医療自体が病院完結では済まなくなり、地域との連携する型に変わっていく。また医療の形も、医師が全てを決めるシステムから、患者中心に切り替わりつつある。これら全ての課題に対して、デジタルが不可欠となる。

アナログなオペレーションからの脱却が急務に

 こうした変化に直面していながら、病院内のコミュニケーション環境は大きく遅れていた。病院間、院内の医師どうしの連絡には電話を始めFAXや手紙が用いられていた。

 緩和ケア科に特有の事情も考慮しなければいけない。連携医療・緩和ケア科の業務の特徴は、長時間の患者やその家族との面談が多いこと、訪問診療や研修、学会などで院外に出ることがしばしばあること、多くの研修者を受け入れており短期間で人が入れ替わることなどである。長時間にわたる手術や手技は少ないものの、院内外で多くの関係者と会話をしながら進める仕事が多い。どうしても、1人の医師が情報を抱え込んでしまうオペレーションになりがちだった。

 また、電話中心の連絡手段も問題だった。緩和ケア科の患者は末期がん患者など、外来診療や面談には重いテーマが多く、時間も長くかかる上、電話がかかっていると困るシーンも多々ある。医師の働き方改革が推進され、当直明けで院内にいないことも多い。所属する人数が多く、かつ病棟や外来、訪問診療など幅広い領域で診療をすることから全員が一同に会する機会も少なく、情報の引き継ぎや共有を正確かつスムーズに進める必要もあった。

そんな中、コミュニケーションツールの導入が喫緊の課題となる状況はどんどん迫ってきた。2017年、緩和ケア科の患者数増により、スタッフ医師の数を3名から7名に増員した。加えて、外部から期間限定で研修医も参加もあり、メンバーの入れ替わりは、これまで以上にかなり激しい状況となってきたのである。

ICT活用の一歩を踏み出す

 こうした課題を受けて、緩和ケア科では、全体のコミュニケーション基盤として、以前から馴染みのあったツールを導入した。いくつかのツールを試したが、個人向けSNSのアカウント作成に抵抗感を抱く人がいたり、インターフェイスが英語だったりなど、それぞれに現場への浸透は課題があった。

 ツールの浸透が進まないなか、一部のメンバーからは「電話するか、集まった方が早い」という意見も出ていた。しかし、大森氏の上司である緩和ケア科の部長をはじめ、チーム全体の創意としては、デジタルツールを使った方が将来性があるだろうという考えは共通していた。残りの課題は、“チームの働き方に適したツールを見つける”だけだった。

院内活用における「管理者機能」の重要性

 ほどなくして緩和ケア科の患者数はさらに増加し、2021年は年間2000人を超えて2015年の4倍になった。それに合わせて関わる医師の数も60名を超える大所帯となり、医師、スタッフを管理する事務部門の負担が急増した。人員が多くなったので、管理する必要性が高まったのだ。

 あらたなコミュニケーションツールを導入する際の要件として、以下の項目を掲げて検討した。

・常に30名が使用し、年間60名以上が登録できる
・管理者が参加者・グループを管理できる
・親しみやすいUIとUX
・カレンダー機能がある
・無料で開始できる、小規模に開始して、スケールアップできる

 これらの条件を検討してたどり着いたのがLINE WORKSだった。早速、2021年1月から既存のツールと併用して仮採用して運用したが、驚くほどスムーズに使い始めることができ、全体連絡などはLINE WORKSで行った。実用性が高いと判断した同科では、同年4月に本採用し、既存ツールの利用を廃止した。

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