社員のモチベーションを可視化するサービスなど紹介 TIS主催オンラインイベント
TIS主催「第11回スタートアップソリューション紹介オンラインイベント」レポート
7月29日、TISインキュベーションセンター主催の「第11回スタートアップソリューション紹介イベント」が、オンラインイベントで開催された。これまではbit&innovationで行なわれていたスタートアップピッチイベントだが、コロナ禍の影響と感染予防対策の観点からbit&innovationは現在施設運用が休業されている状態。今後はオンラインでのイベント主体に企画していくという。
今回はスタートアップ4社のサービス、ソリューションと、TISの事業部門が新たに提供開始したヘルスケア分野でPoC段階の企画を対象としたサービスも紹介された。オンラインイベントの模様をお届けする。
社員1人ひとりのモチベーターを可視化するサービス「Attuned」
EQIQ株式会社
URL:https://www.eqiq-group.com/jp-company
EQIQ株式会社は、東京の原宿に拠点を構える日本国籍の会社だが、社長は外国人であり、社員も多くの外国人が在籍する。今回紹介する「Attuned」というサービスは、ヨーロッパのメンバーが中心になって作ったサービスで「内発的動機づけ」をキーワードにしたもの。人が働く上で、その人はどうしてそういうことをしたいのか、という内発的な動機づけをうまく活用することで、より一人ひとりの働き方が見える化され、モチベーションの向上にもつながるという。
本サービスは、10分程度の質問に答えると、創造性、競争性、利他性、社交性など11個の価値観が見えるようになる。人それぞれ11個の価値感が見える化されることで、たとえば「いつも企画に反対する上司は、実は安全性が高くてリスクを取りたくない」ということがわかるケースもあるだろう。こういった価値観を比べたり人のことを見られるようになれば、チームを円滑に進める上で、だいたいのことが解決するという気づきを得られる。
Attuned営業部 営業部長の三石剛氏は「やる気のある人がほしい、やる気の出る仕事がほしいという声を、大企業を中心によく聞きます。すでにITサービスや自動車メーカー、NTTコミュニケーションズさんなどで採用されています。一人ひとりのモチベーターがわかるというのは、働く人にとってうれしいことですし、マネージャーが組織運営していく上でも個々の社員が何を大事にしているかがわかり、チームを円滑に回す助けにもなります」と語った。
本サービスによって、心理的安全性が改善され、価値観をわかってもらい支援されれば、多くの社員が安心して働けるようになるはず。三石氏は「内発的動機づけの可視化というのは、世界でも非常に珍しいサービスです。内発的動機づけが今後の企業にとって非常に重要であることを啓蒙しています。無料で体験もできるので、ぜひお試しください」と語った。
すでにTISの部署でも活用しており、TIS室谷氏は「このプロダクトは現場が相互に理解しながらモチベーションを高めていく画期的な製品だと思っています。すでに社内に人材データがあると思いますが、本サービスと社内データを掛け合わせることで、組織の課題を見つけ、人に対する要件に活かせると考えています」と本サービスを推していた。
レシーバーに替わるボイスコミュニケーションツール「BONX」
株式会社BONX
URL:https://bonx.co.jp/
株式会社BONXは、代表取締役の宮坂貴大氏が、大学時代スノーボードに明け暮れていたとき、雪山で仲間とのコミュニケーションが難しいと感じ、快適な音声コミュニケーションがとれるツールを開発するために2014年11月に創業した企業だ。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、さまざまなコミュニケーションツールの活用が加速しているが、「リモートワークでコミュニケーションが大きな課題になっています。zoomやSlackのようなツールを使っていても、どんどんチームの一体感が下がってしまっています。また、現場系業務でもソーシャルディスタンスの影響で、集まらなくてもコミュニケーションをとって働かなければなりません。しかし、そのツールがトランシーバーや電話に頼っているのが現状です。そこで提案するのが声による常時接続です。これを使えば、リモートワークでも現場業務でも大きく変わると思っています」と宮坂氏は訴えた。
プロダクトの構成は、基本的にBluetoothを利用してヘッドセットとスマホを接続。専用のアプリでやり取りできる。特徴としては、数十人単位のグループトークが可能。VoIPをプロトコルレベルから作ったので、接続が安定しており、雪山でもきちんとつながるのが強みだという。トランシーバーと違い、スマホがつながる場所ならどんなに離れていても利用できる。
声を発するときだけ自動的に接続するハンズフリーモードとボタンを押して発信するプッシュトークモードを用意。ソフトウェアとハードウェアを一体で作っているので、かなり高いUXを実現しているという。1トークルームあたり50人。同時に5つのトークルームに入れ、250人と同時に通話可能。そのなかで1つだけのルームに話したり特定の人だけと話したり、テキストチャットや話した内容をリアルタイムで文字起こしもできる。
ビジネスとしては、ワンストップソリューションとして、ソフトウェアとハードウェアをSaaS型と売り切りレンタルがある。すでにANAの飛行機中やラグビートップリーグの練習現場、工場、手術室、店舗、ホテル、飲食、撮影現場、イベント現場などで利用されている。TISとの協業もスタートさせていて、TISが持っている音声対話AIサービスに、声とBONXをつなぎこむ開発も行なっており、順次現場へ導入していく予定だ。
「我々が目指しているのは、Slackを中心にコミュニケーションを図っている人たちの音声版です。BONXに1日つなげていれば、そこにクルーもデータもつながっていて、業務の基盤になるという世界を目指しています」と宮坂氏は語った。
ドローンやロボットを遠隔制御・管理する「Blue Earth Platform(BEP)」
ブルーイノベーション株式会社
URL:https://www.blue-i.co.jp/
ドローン、ロボットのベンチャー企業であるブルーイノベーション株式会社は、日本で自動運転ロボットの唯一のプラットフォーマーであるというビジョンのもと、事業展開している。
ドローン関係のマーケットは、現在、農業や測量、空撮は、すでに普及期に入っていて、レッドオーシャンのマーケットになっている。次に来るフェーズが、点検や警備の市場で、点検市場は高度成長期以降の社会インフラが約50年経過しようとしており、今後維持管理していく観点で点検は重要事項になっている。しかし、高齢化によりベテラン点検員が不足しているため、政府もロボット化やドローン化を推進している状況だ。警備も警備員の不足により自動化の波がきていて、今後この市場は200%から300%の成長率で伸びると予測されている。
代表取締役社長の熊田貴之氏は「我々は複数のドローンやロボット、AGV、モビリティを遠隔で制御管理できるシステムプラットフォーム『Blue Earth Platform(BEP)』を開発している。携帯でいうと、OSの部分で、アプリはソリューションだと考えると、その両方を手掛けている。ハードはいろんな企業と提携してサービスを提供している」と語った。
現在、BEPは電力や通信、製鉄、物流といった場所へソリューションを提供している。電力の事例としては、通常のドローンでは地上と並行にしか飛べないため、送電線のように弛んだケーブルを撮影しながら飛ぶとなるとフレームアウトしてしまう。我々のセンシング技術を使うことで、送電線に並走して飛ばすことが可能になる。東京電力と開発をしており、来年からサービスのフェーズに入る予定だ。
また発電所の中でも自動巡視システムとしてドローンやAGVを活用。ソリューションサービスや、プラントの中での点検技術も開発しサービスを提供中だ。2020年3月に屋内屋外にて、石油プラントでもドローンを活用してもいいと国からガイドラインが出された。こういったマーケットを拡大し、ライセンス提供をしていこうと考えているという。
基地局での点検での教育をサポートしているほか、国土交通省とIHI、東京大学と連携して、物流ドローンポートを開発している。今後、スマートシティのインフラとして提供していく予定だ。
「もう1つ開発領域で特筆すべきは、GPSが入らない空間においても、自動飛行ができる技術開発を行なっているところです。特殊なセンサーモジュールの開発をしており、メーカー製のドローンやAGVなどに搭載すると、最大精度として自己姿勢度が±1cmの精度がでます」と熊田氏は語った。
今後の展開としては、グリッドベースナビゲーションという、始点と終点を決めるとドローン側になにもエッジ情報がなくても、グリッドがドローンへ情報を渡して、自動的に終点まで経路をナビゲートするシステムの開発だ。それぞれのグリッドにブロックチェーン技術を活用してさまざまな情報を提供することを考えており、AIなども導入して拡張していこうと考えている。
このシステムが実現すれば、これまで固定化された空路を時刻や場所によって最適な情報を渡すことで、動的なネットワークを構築が可能となる。「すべての自動運転ロボットのプラットフォームとして、みなさまにさまざまなサービスやインフラを提供していこうと思っています」と熊田氏は締めくくった。
中食のフードロスの削減に寄与するサービス「TABETE」の取り組み
株式会社コークッキング
URL:https://www.cocooking.co.jp/
株式会社コークッキングは2015年12月に創業。2017年から日本初のフードロスに特化したシェアリングサービス「TABETE」の事業化に取り組んでいる。
フードロスとは、まだ食べられるのに捨ててしまう行動のことで、外食産業やスーパーなどの小売店をあわせると、約7376億円の経済損失にのぼる(2019年みずほ総研による推計)。2019年5月に「食品ロス削減推進法」が参院本会議で可決し同年10月1日より施行された。食品ロス削減を国民運動と位置づけて、国をあげてロス削減に取り組むよう求めている。ただし、現状は特に罰則規定は設けられておらず、今後フランスなどと同様、徐々に罰則規定を設けていく方針だ。
コークッキングが狙っているのは、約2600億規模の中食から発生する食品ロス市場。店舗で発生するロスの原因はさまざまあるが、中食として一番多いのはディスプレイ用のパンやケーキだ。たくさん並べないと売れないため、わざと余らせるケースも多いという。そこで発生するロスのうち数十%から50%程度を売り切るお手伝いをしたいという。
「TABETE」のサービスは、余っている商品があればTABETEに掲載し、食べ手が登場すれば店舗で受け渡す。ユーザーはお気に入り登録した店舗からプッシュ通知が届く仕組みで、ユーザーの見逃しも少ない。事前決済方式でクレジットカード払いのみである。
事業スキームとしては、250円から680円の価格設定で商品が掲載され、1つ売れるごとに手数料150円を徴収する。以前は価格の下限上限を設定していなかったが、高額商品が並ぶとユーザーからの評判が良くなかったため設けたとのこと。また、ユーザーの事前決済により、受け取りドタキャンの低減を図っていて、利用者は20代後半から40代前半の女性が7割を超えており、現状はクレジットカード決済でも問題ないという。
代表取締役の川越一磨氏は「大切にしているのは、誰も損しないモデルを目指すこと。現在は約30万人弱のユーザー登録があり、掲載店舗数は1300店舗以上あります。大手も含めて登録してもらっていて、これからも横展開をしていきたいと思っています」と語った。
個人の医療・健康情報の標準化を目指すヘルスケアリファレンスアーキテクチャ「PHR POCテンプレート」
TIS株式会社ヘルスケアビジネスユニット
URL:https://www.tis.jp/service_solution/PHR-POC-Template/
TIS株式会社ヘルスケアビジネスユニットは、2020年7月8日にマイクロソフトとヘルスケアリファレンスアーキテクチャ「PHR POCテンプレート」を公開した。TISでは、健康寿命延伸という社会課題を支えるサービスとしてヘルスケアプラットフォームを展開しようとしている。
「PHR POCテンプレート」とは、スマホやウェブアプリ、IoTなどのデバイスから収集できる健康情報を管理するための基盤をクラウド上に実装できるTISのサンプルプログラム。今回、TISはこのテンプレートをMicrosoft Azureのヘルスケア リファレンス アーキテクチャとして日本マイクロソフトに提供し、無償で公開している。
健康寿命延伸という社会的課題を効果的に解決するためには、パーソナル ヘルス レコード(PHR)がポータビリティを持たずに散在しないよう、PHRデータの取扱いに関する標準化を進める必要がある。この課題に応えるために、TISは日本マイクロソフトとヘルスケア リファレンス アーキテクチャを公開する事で、PHRデータの取り扱いに関する標準化を促進し、PHRデータが活用できる基盤となるよう目指している。
企業がヘルスケア リファレンス アーキテクチャを使うことのメリットとして、ヘルスケアサービス営業企画部の名田氏は「PHRで求められるセキュアで統一された基準でのシステム構築が可能になります。PHRの管理に求められる様々な規制へ準拠していくのにAzure PaaS機能を最大限利用しています。Azureはさまざまな業界のガイドラインや各国の規制に対応しているので、独自で実装することなく対応できるメリットは大きいでしょう。2つ目にシステム構築期間を短縮し、運用及び開発コストの削減が可能になります。3つ目として、行政や臨床学会で標準化された定義に準拠したサンプルプログラムを提供していることです」と語った。
またヘルスケア リファレンス アーキテクチャを採用したヘルスケアサービスの事例を説明した上で「企業が新たなヘルスケアサービスを立ち上げる際に必要になるデータ管理基盤として活用できる設計としていますので、これを使うことで、システムやその運用にかける労力を、サービスのUX設計やビジネスそのもののデザインに割いて頂けるようになります」と語った。