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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第574回

さらに遅れるインテルの7nm、遅れを挽回する秘策とは? インテル CPUロードマップ 

2020年08月03日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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7nmのCPUはさらに6ヵ月ほど遅れる
対応策としてプランBを用意

 米国時間の7月23日、インテルは第2四半期の業績を発表。記録的な好成績を残したにも関わらず、発表直前には60ドル台だった株価は発表直後に急落、現在は48ドル台を推移している有様である。

22日の終値が60.40ドル、23日は50.59ドルで、ほぼ1日で10ドル下がった計算。その後も下げ止まらず、30日現在で48.07ドルになっている

 なにがあったかといえば、7nmプロセスが大幅に遅れることを発表したからである。正直に言えば「やっぱりな」という話ではあるのだが。まずBob Swan CEOの言明から紹介する。プレスリリースの3ページ目に以下のように書かれている。

“Turning to our 7nm technology: We are seeing an approximate six-month shift in our 7nm-based CPU product timing relative to prior expectations. The primary driver is the yield of our 7nm process, which based on recent data, is now trending approximately twelve months behind our internal target. We have identified a defect mode in our 7nm process that resulted in yield degradation. We’ve root-caused the issue and believe there are no fundamental roadblocks, but we have also invested in contingency plans to hedge against further schedule uncertainty.”

 意訳すると「次いで7nmについて。7nmプロセスベースのCPU製品の投入タイミングは、おおむね6ヵ月ほどずれる。主な要因は7nmプロセスの歩留まりで、最新のデータによれば当初の社内計画と比較して12ヵ月遅れている。この歩留まり悪化の根本的な要因となる欠陥モードは特定できており、これをもたらす根本要因の排除を行なうことそのものは可能と考えているが、さらなるスケジュールの不確実性をもたらすことを排除するため、『プランB』を用意している。」とある。

 この結果として、7nmプロセスに大きな変更が出た。昨年5月のInvester Meetingにおける説明では、2021年に7nmプロセスが実用になり、またその7nmを最初に使う製品はXeベースのGPGPUになるはずだった。

Invester Meetingにおける説明では、2021年に7nmプロセスが実用になる予定だった

最初の7nm製品はXeベースのGPGPUのはずだった

 ところがCEOの言明では、「最初の『インテルの』7nmプロセスを使った製品はクライアント向けCPUで、2022年末もしくは2023年初頭に出荷予定である。もちろん2022年のホリデーリフレッシュウィンドウを含む、プロセスロードマップに依存しない製品の改善は引き続き進めていく。データセンター向けの『インテルの』7nmを使ったCPUは、2023年前半に投入予定となる」という、いろいろなニュアンスを含んだ説明だった。

 まずXeに関しては、完全に仕切り直しである。最初のクライアント向けCPUが2022年末~2023年初頭だとすると、Intel 7nmベースのXeは早くて2023年以降である。おそらく2023年に予定されているIntel 7nmベースXeonとあわせて、2023年前半中に提供となるだろう。

 2022年のホリデーリフレッシュウィンドウとはなにかといえば、要するに2022年中の商戦時期である。一番大きいのは年末のクリスマス商戦だが、他にBack to school(新学期商戦)やThanks Giving(感謝祭商戦:年末商戦を一緒にする場合もある)、さらにはBlack Fryday/Cyber Monday(どちらも感謝祭の前後)、Halloween、Easterなどいくつかの商戦時期がある。

 こうした時期に新製品を投入しないのはOEM筋から大変に評判が悪いわけで、これに向けて「プロセス技術に依存しない」、つまり既存の製品のリフレッシュ版を投入すると言っているわけだ。

 そして最後、例えばクライアント向けCPUを“first intel-based 7nm”と呼んでいるのは、AMDがすでにTSMCの7nmプロセスベースのRyzenを投入しているから、混乱を避けるためにわかりやすく表現したという可能性はあるが、むしろインテルが“インテル以外の7nmプロセスベース製品を投入する”可能性があることを暗に示していると考える方が妥当だろう。

 上の意訳では『プランB』と訳したが、“we have also invested in contingency plans to hedge against further schedule uncertainty.”というのは、「インテルの7nmプロセスがさらに遅れるといった事態に備えるため、我々は代替案を用意する」という意味で、これは要するに別のファウンダリーを使うことを意味していると一般には取られているし、筆者もそう考える。

 これに関しては台湾Digitimesが7月27日の記事で、インテルがTSMCの6nmプロセスに18万枚のウェハー予約を入れたことを報じた。

 ちなみに同記事でAMDはすでに6nmに20万枚のウェハー予約を入れているとしており、これを使ってGPGPUであるPonte Vecchinoを製造するのでは、と報じられている。

 もっともこれには異論があって、WCCFTechによればPonte VecchinoはTSMCの6nmではなく、インテルの7nmとTSMCの5nmの2つのファブで並行して製造するという。真偽のほどは不明だが、どちらかと言えばWCCFTechのレポートの方が筋は通っているかと思う。

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