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里見社長の「クラメソ愛」が生み出した新会社とその目指す世界

NTT東日本とクラスメソッドの新会社ネクストモードはなぜ生まれたのか?

2020年06月09日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 NTT東日本とクラスメソッドが作った新会社ネクストモード。日本を代表する通信会社と、AWSに特化したクラウドインテグレーターという一見すると水と油の見える組織同士が、なぜいっしょにクラウドインテグレーション会社を立ち上げるのか? 新会社の社長であるNTT東日本 里見 宗律氏と取締役になるクラスメソッド 佐々木大輔氏に話を聞いた。(聞き手、ASCII 大谷イビサ 以下、敬称略)

ネクストモードの発表会に登壇する代表取締役社長 里見 宗律氏

「クラウドで新しい働き方を」で企業の働き方の当たり前を変える

大谷:発表会の記事(関連記事:昭和の働き方をクラウドで変えていく 新会社ネクストモード始動)もありますが、改めて新会社の概要を説明してください。

里見:ネクストモードはNTT東日本とクラスメソッドで作った新しいクラウドの会社です。「クラウドで新しい働き方を」を標榜し、企業の働き方の当たり前を変えていきたいと思います。

新会社はNTT東日本とクラスメソッドが出資し、それぞれにメンバーを出します。私が代表取締役社長を拝命させていただくほか、NTT東日本から取締役も2名出します。クラスメソッドからも佐々木 大輔さんと西澤 徹訓さんが2名取締役になります。

ネクストモード 代表取締役社長 里見 宗律氏

大谷:いわゆるCIer(クラウドインテグレーター)ですね。

里見:事業の内容としてはAWS、Azure、GCPなどのパブリッククラウドを使ったクラウドインテグレーション、MSPと呼ばれる保守・運用を手がけます。ネットワークからクラウドまで一気通貫でできるのと、今までのデータ移行やアプリの移行など今までのCIerの範囲を超えたサービスを手がけるという点が特徴です。

佐々木:パブリッククラウドのみならず、さまざまなSaaSとの連携も進めることで、お客さまのクラウド利用を支援していきます。

大谷:ユーザーとしては、いわゆるエンタープライズ系になるのでしょうか?

里見:そうですね。パブリッククラウドを使いたいと思っているんだけど、社内にリソースがない、面倒を見るのが難しいお客さまです。構築だけではなく、保守・運用もわれわれが部分的に入っていき、新しいクラウド・SaaSの仕組みで組織を変えていきたいですね。

クラウドを使いたいユーザーもいろいろな方がいますが、柔軟なお客さまはクラスメソッドにお願いして内製に進めばよいので、より慎重なお客さま、リソースのないお客さまがターゲットになると思います。

佐々木:具体的にはエンタープライズのマイグレーションだと思っています。マイグレーションって工数が必ずかかるので、エンジニアの数は必要です。そういった中で、クラスメソッドとしてマイグレーションのベストプラクティスを提供しつつ、リソースに関しては新会社でカバーできると思います。

大谷:では、クラスメソッドとはお客さまが違うんですね。

里見:はい。クラウド導入って、いきなり崖から飛び降りるのではなく、今までのシステムを残しつつ、ステップアップできるもの。実際、私もNTT東日本の社内でまさにレンガを積み上げるように時間をかけてクラウドを使ってきましたし、そういうお客さまがターゲットですね。

佐々木:あとは情報システム部がメインになると思います。NTT東日本はやはり歴史がある会社なので、エンタープライズに対する考え方がしっかりしています。逆にクラスメソッドはクイックにビジネスを回していくマーケティングやセールスなどの現場部門を支援することが多かったので、正直情報システム部とのつきあいが得意な会社ではないんです。だから、クラウドを活用したい情シスの案件は、新会社であるネクストモードの方がマッチすると思います。

いっしょに仕事をしてたら猛烈なクラメソファンになっていた

大谷:次にネクストモード設立に向けての話ですが、まずは里見さんとクラスメソッドとのなれそめについて教えてください。

里見:最初に会ったのは佐々木さんじゃなくて、クラスメソッドの横田聡社長です。私が自腹でre:Inventに行ったときだから、2016年ですね。自腹で来ている変なやつがいるということで、AWSジャパンの方々がラスベガスでいろんな人に会わせてくれて、そのときに横田さんに会ったのが初めてです。

佐々木:僕と里見さんとの出会いはJAWS-UGだと思います。僕自身はJAWS-UGのスタッフをやっていたし、里見さんもJAWS-UGにはよく出入りしていました。たぶん、里見さんがイベント会場にチャリで来たときだから、松山でやった2017年のJAWS FESTAが最初だと思います(笑)。

里見:そうですね。一方、会社としてのつきあいとしては、NTT東日本がフレッツの閉域網でAWSとつなげる「クラウドゲートウェイ アプリパッケージ」というサービスを始めたときに、クラスメソッドにお手伝いしてもらったのがきっかけです。

もともとサービスを企画していた2016年って、ちょうどソラコムが出てきた頃。あれを見て僕はソラコムじゃなくて、NTT東日本で「リクコム」を作りたいと思ったんです(笑)。つまり、モバイル回線ではなく、固定回線のソラコムみたいなサービスがやりたいなと。

大谷:それでリク(陸)コムなんですね(笑)。

里見:はい。ただ、当時のコンセプトはけっこうめちゃくちゃで、ホワイトボックス上で仮想ルーターを動かし、AWSとAPIで連携させ、クラウド側の仕組みはソラコムをそのまま使えないかなと思っていました。実際にソラコムの玉川さんに使わせてくれとお願いしましたが、さすがにそれは無理だったので(笑)、自前で開発することになりました。とはいえ、クラウド開発のノウハウが全然ないのでクラスメソッドに相談したんです。

そのときにいっしょにお仕事してくれたのが現ソラコムの大瀧隆太さんでした。大瀧さんも周りの人たちも、とにかく優秀な人たちばかりで、クラスメソッドってなんだかとんでもない会社だということに気がついたんです。エンジニアがやたらいっぱいいるし、数あるブログはみんな面白いし、気がついたら猛烈なクラメソファンになっていたんです。この会社、やばいなと。

大谷:外から見て、「やばいな」と思ったのはどこなんですか?

里見:うーん。いやらしい言い方ですが、NTT東日本みたいな大きな会社から仕事を丸投げしようとしても「うちって丸投げとかやりませんから」とにべもないんです(笑)。ただ、「タイムマテリアルで、お客さまに必要なところだけきちんとサポートします」と言われたので、準委任契約でプロジェクトをやってもらいました。

佐々木:正直、クラウドゲートウェイ アプリパッケージって、なにか特別な案件というわけではなかったです。サービスや製品、ソリューション開発などはよくご依頼いただくのですが、われわれに求められるのはAWSをどう使えばよいかのコンサルティング。クラウドゲートウェイ アプリパッケージのときも同じで、NTT東日本側でクラウドの知見を持ったメンバーがいなかったので、われわれの専門部隊が入って支援していくという形態で、よくある仕事のパターンでした。

大谷:なるほど。NTT東日本だからといってなにか特別な対応をしたわけではなかったんですね。

里見:実は、準委任契約で失敗しないかは心配でした。というのは、これとは別のクラウドインテグレーターとも準委任契約でプロジェクトを動かしていたのですが、これが大きく失敗して、納期や仕様でけっこうもめたんです。これに対して、クラスメソッドのプロジェクトはクオリティも納期もまったく問題なかったんです。

その意味では、仕事の仕方も素晴らしかったですね。

大谷:どこらへんが素晴らしかったのでしょうか?

里見:正直、われわれもREP文化に慣れてしまっているので、SIerにやりたいことをまるっと言って、実装はよしなにやってくれというお願いの仕方をしてしまいます。クラウド時代にそういうやり方はよくないとわかっていながらも、私もついつい癖が残っていました。でも、特に大瀧さんは要件を細かく詰め、この作業を自分が担当しますというところまで落としてくれるので、お互いに意識の齟齬がなかったんです。

そのときは大瀧さんがそういう方なんだと思っていたのですが、その後にクラスメソッドの方々とつきあっていると、どうやら大瀧さんだけではなく、会社全体がこういう仕事の仕方をやっているぞということに気づいたんです。で、プロジェクトの開発はいったん終了したのですが、なんとか仕事をやりたいと、私がクラスメソッドに執着し始めたのが、今回の新会社の発端になると思います。

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