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同社 中村取締役に聞く、フレッツ光のクラウド閉域接続「クラウドゲートウェイ」の狙い

NTT東日本「基幹系クラウド移行の課題、ネットワークで解決を支援」

2017年06月08日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 平原克彦

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 NTT東日本では昨年(2016年)8月から、ユーザー企業がフレッツ光回線経由で、インターネットを介することなくAWSなどのパブリッククラウドに直接接続できる「クラウドゲートウェイ クロスコネクト」サービスを提供している。

 同社取締役 ビジネス開発本部副本部長の中村浩氏は、企業のクラウド利用が浸透するなかで、アクセス回線を提供する通信事業者としてできることを考えたと語る。クラウドゲートウェイシリーズのビジネス進捗と今後の方向性、NTT東日本としてクラウド時代にどう関わっていくのか。中村氏に将来的なビジョンを聞いた。

NTT東日本 取締役 ビジネス開発本部副本部長 兼 第一部門長の中村浩氏

企業とAWSを閉域接続し、高速かつセキュアなクラウド利用環境を提供

 初めに、NTT東日本が提供するクラウドゲートウェイシリーズのサービスについて整理しておこう。現在NTT東日本では、同シリーズで3つのサービスを提供している。

NTT東日本が提供する「クラウドゲートウェイ」シリーズ。現在は3つのサービスを提供する(画像は同社Webサイトより)

 まずは冒頭で触れた「クラウドゲートウェイ クロスコネクト」だ。これは、フレッツ光とフレッツ・VPNサービスを使って、企業とパブリッククラウドとをダイレクトに閉域接続するサービスである(現在はAWS、ニフティクラウドに対応)。インターネットを経由せず、企業とクラウドとを直接接続するため、高速かつセキュアにクラウド上のアプリケーションにアクセスできる。

 残る2つは、フレッツで閉域接続するクラウド環境で展開するサービスをパッケージしたものとなる。AWSクラウド上で提供するActive DirectoryサーバーやWordPressサーバーを利用できる「クラウドゲートウェイ アプリパッケージ」、そして今年5月に提供を開始した、NTTコミュニケーションズのクラウド基盤を利用したIaaSの「クラウドゲートウェイ サーバーホスティング」だ。

 さらにNTT東日本では、これらのサービス群を自社で販売するだけでなく、パートナー企業にOEM提供し、パートナー経由でも販売している。OEM提供を受けたパートナーは、自社ソリューションとそのサービスとを組み合わせ、自社ブランドのサービスとして提供することができる。つまり、フレッツをパッケージした自社サービスを販売できるようになるわけだ。

「もっと売れると思っている」クロスコネクトのメリットとは

 中村氏は、提供開始からおよそ8カ月が経過したクラウドゲートウェイ クロスコネクトについて、かなりの数は出ているとしながらも「正直なところ、もっと売れると思っている」と語った。現状においてはまだ、クロスコネクトの“高速/セキュア/低コスト”というメリットを広く訴求し切れていないというのが実感のようだ。

 「新規にクラウド利用を始める企業でも、これまで使ってきた『フレッツ+ISP』の形でそのまま使う企業が多い。フレッツからインターネットを介してAWSに接続する形なので、速度やコストの面で無駄が生じる。われわれとしては、そうした無駄のないクロスコネクトのメリットをもっとアピールして、『新規にAWSを使うならばこの形(クロスコネクト)から始める』というのを定着させたい」(中村氏)

「クラウドゲートウェイ クロスコネクト」の概要図。インターネットを経由せず企業からクラウドにアクセスできる(画像は同社Webサイトより)

 インターネットを経由せず直接クラウド基盤に接続することで、アクセス速度のボトルネックがなくなり、レイテンシも改善する。ISPコストもかからず、ルーターなどのネットワーク設定や障害切り分けもシンプルになり、ネットワークに関する問い合わせ先をNTT東日本に一元化できるメリットもある。一方で、専用線接続と比較した場合は、専用線ほどコストも納期もかからず、またクラウド基盤との繋ぎ込みにも手間がかからない点がメリットだ(クロスコネクトは申込み後およそ1週間で開通)。

 「企業のクラウドアクセスにおける競合サービスは『フレッツ+ISP』か『専用線』の2つ。クロスコネクトでは、競合それぞれにある課題をなくして、より使いやすくしている」(中村氏)

 また中村氏によると、クロスコネクトは、SIベンダー経由で提供する形態(OEM提供)のほうが「数としては多いと思う」という。クロスコネクトのOEM提供には、SIベンダーにとっては自社ソリューションに回線サービスまで組み込んで提供できるメリットが、また顧客にとっては調達先や問い合わせ先をSIベンダーにワンストップ化できるメリットがある。

 「サーバー周りの構築を手がけているSIerには、回線については任せたい、うまくやってくれればそれでいいと考えている方々も多くいる。クロスコネクトをOEM提供することで、そうしたSIerのニーズに応えることができる」(中村氏)

5月末の「AWS Summit 2017」では、AWSクラウドからクラウドゲートウェイ/フレッツ網経由で4K動画を会場内に配信するデモを披露していた

基幹業務のクラウド移行をネットワーク側からサポートする

 中村氏は、高速、セキュアといったクロスコネクトのメリットが生きてくるのは、特に「基幹業務(アプリケーション)をクラウドに上げる(移行する)」ケースだと語った。

 「さまざまな課題があり、多くの企業はまだ基幹業務をクラウドに上げていない。クラウド側にある課題をわれわれが解決することはできないが、ネットワーク側の課題は(クロスコネクトで)先に解決しておこうと。それにより、基幹業務のクラウド移行という動きをサポートしていきたい」(中村氏)

 また、クラウドゲートウェイシリーズの販売動向に詳しいNTT東日本 ビジネス開発本部 第二部門 映像サービス担当 担当課長の里見宗律氏は、これまでのクロスコネクトの導入事例では、ハイブリッドクラウド環境をつなぐネットワークとしての採用が多いと語った。

 「当初は企業拠点とAWSを接続する利用ケースが多いものと考えていたが、実際には半分程度。まだIT資産(システム)が残っている企業データセンターとAWSを高速かつセキュアにつなぐ、ハイブリッドクラウド環境の事例が思いのほか多い。利用ニーズはさまざまだが、徐々に基幹系が増えている印象はある」(里見氏)

パートナーへのOEM提供で「サービス組み込み型」も増やす

 パートナーへのOEM提供においては、SIerの顧客システム構築用途だけでなく「サービスへの組み込み」という形態も増えているという。里見氏は、マニュアル作成ツールのSaaS「Teachme Biz」を提供するスタディストの事例を紹介した。

 「スタディストでは、これまでインターネット経由でSaaSを提供してきた。しかし、(業務マニュアルの作成などで)社内の情報をインターネットに流すのはちょっと……というユーザーもいる。そこで、AWS上のSaaSツールはそのままで、閉域網で接続できるオプション(Teachme Biz ひかり)を提供している。われわれも少し意外だったが、インターネット利用が普及した一方で“閉域返り”のような動きも出てきている」(里見氏)

 同様に中村氏は、複合機のメンテナンスサービスに組み込まれている事例を紹介した。オフィスの複合機から故障などの情報を発信するための回線として、インターネットだけでなくフレッツ光も選択可能にしているという。

 「インターネット利用が普及したからこそ逆に、何を閉域網で扱うべきかがわかるようになったのではないか」(中村氏)

 NTT東日本では、2015年からフレッツ光サービスをOEM提供する「コラボ光」を提供しており、クラウドゲートウェイのOEM提供も「特別なことではない」と中村氏は語る。今後、さらにパートナーとのコラボレーションを加速し、ユニークなサービスへの組み込みを増やしていく方針だ。

 「コラボ光では、たとえば住宅に光アクセスサービスを組み込んだ『ヘーベル光』(旭化成ホームズ)といったパートナーサービスの例もある。こうしたアプローチにより、これまでリーチできなかったお客様にもリーチできている。クラウドゲートウェイでも同様だと考えており、パートナーとのコラボレーションは戦略的に重要だと考えている」(中村氏)

フレッツ網で「企業と企業」を結ぶ将来戦略も

 今後、パートナーによるソリューション組み込みをさらに加速させていくため、NTT東日本ではクラウドゲートウェイにおいて、サービスAPIの拡張やブラッシュアップに取り組んでいく方針だという。

 また中長期的なビジョンとして、企業とクラウドを結ぶだけでなく、フレッツ網を介して「企業と企業を結ぶ」ことにも取り組んで行きたいと、中村氏は語った。

 「IoTを例に挙げれば、工場とクラウドを結ぶだけでなく、工場と物流、販売といった他の企業を結ぶ。ドイツ流に言えば「Industry 4.0」だが、ネットワークのレイヤーでそうしたことができるのは、国内ではまずわれわれだと考えている。もちろん、工場のエッジコンピューティングとクラウド、オンプレミスとクラウドをセキュアに接続する部分も、NTT東日本がお手伝いできるだろう」(中村氏)

 企業のクラウドサービス利用が普及する一方で、“足まわり”として必須となるアクセス回線の提供は案件ごとの個別対応と、旧態依然としている。中村氏は、アクセス回線の提供もクラウドのような「サービス化」をすべきであるとし、「われわれがまずそのモデルとなり、市場を作っていきたい」と抱負を語った。

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