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業界人の《ことば》から 第391回

インフラと教育について、NTTコムが語る

コロナウィルスはインターネットと教育にどんな影響を与えたか

2020年05月14日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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今回のひとこと

「テレワークや在宅学習などにより、日中のトラフィックが大幅に増加している。だが、現状の推移であれば、このまま安心して利用してもらえるキャパシティを十分確保している」

(NTTコミュニケーションズの庄司哲也社長)

 緊急事態宣言による外出自粛で、今年のゴールデンウイークは、多くの人が家のなかで過ごした。自宅でYouTubeなどの動画サイトを見たり、オンラインゲームをプレイしたり、あるいはSNSやネットサーフィンで1日を過ごしたという人も多かっただろう。

 そこで気になるのが、インターネットのデータ通信量だが、このゴールデンウイークの状況をみると、まだまだ安心して利用できるだけのインフラが整っていることが証明された。

 ISPとして最大シェアを誇るNTTコミュニケーションズは、同社のインターネット接続サービス「OCN」のデータ通信量の推移データを公開しているが、ゴールデンウイーク中の5月7日の週におけるピークトラフィックは、新型コロナウイルス感染拡大前の2月25日の週と比べると、昼間(午前9時~午後5時)では50%増加したものの、夜間(午後5時~午前9時)では13%の増加と、わずか1割強の増加に留まっている。4月27日の週でも同様に昼間は53%増、夜間は13%増であり、それほど変化はない。土日に至っては、5月7日の週では昼間で17%増、夜間で13%増となっている。

 確かに、昼間の通信量の増加が顕著だが、それでも夜間のピークトラフィックを超えておらず、昼間の通信容量にはまだ余力があるといえる。

昼間の通信料は夜間のピークトラフィックをまだ超えない

 NTTコミュニケーションズの庄司哲也社長は、「テレワークや在宅学習などにより、日中のデータ通信量が大幅に増加している。だが、ネットワークの設計ポリシーは、夜間にピークを迎えるトラフィックをベースに、一定の余裕を持たせた形で設計し、運用している。現状の推移であれば、このまま安心して利用してもらえるキャパシティを十分確保している」と語る。

 総務省の高市早苗総務大臣も、5月8日に行われた閣議後の記者会見で、ゴールデンウイーク中のインターネットのデータ通信量の状況について言及。「大型連休中の通信量の状況を見ても、連休前から大きな変化は生じていない。2月下旬の休日までさかのぼって比較してみても、昼間が1~2割程度、夜間が1割程度の増加である」とコメント。「インターネットの通信量は、平日の数値と同様に、休日の数値も少しずつ増加してきているが、通信ネットワークは、利用ピークに耐えられるように設計されている。ピークとなる休日夜間の通信量は多少の増加傾向にあるが、問題はないと考えている」と発言した。

 インターネットのバックボーンに余力があり、安定した形でネットワークを利用できるインフラ環境が整っていることは、いまやネットワークに依存した生活が避けられない日本の国民にとっては、大きな安心感につながるといえるだろう。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の庄司社長は、「NTTコムは指定機関としての責務であるライフラインの維持とBCPに取り組み、安心、安全、安定的な通信サービスを提供するのが使命であり、社会活動や経済活動を継続させなくてはならない」とする一方、「いま、世界が直面している難局により、これまでの生き方や働き方、社会とのつながりなど、当たり前であったものを根本から見直さなくてはならなくなった。当社は、『今日と未来の間に。』という企業理念を掲げており、『未来』となる新型コロナウイルス終息後に向けて、『今日』なにができるのかが問われている。NTTコムはなにができるのか、社会にどう貢献できるのかを、自分ごととして捉えて行動する」とコメント。

 「新型コロナウイルス終息後も継続できる新たな働き方への挑戦、新たな行動原理や組織文化を作る気持ち持ち、テレワークの流儀を企業に浸透させていくことも含めて、行動変異への適用を支えることができるDX Enablerになることを目指す」とも語る。

教育にクラウドが果たす役割は一層

 一方、NTTコムでは、クラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」の提供も行っている。

 2017年からサービスの提供を開始した「まなびポケット」は、授業支援システムや学習コンテンツ、授業記録システムなどを提供。ブラウザを使って、どこからでも、どんなデバイスからでもアクセスでき、提供する約20種類のアプリケーションやOffice 365、G Suiteなども、すべてシングルサインオンで利用できるのが特徴だ。また、まなびポケットを通じて蓄積される行動/学習データを分析して、個々人の習熟度や目指す姿に応じた教育の実現を支援することができるのも見逃せない機能のひとつだ。

庄司 「教育現場を、ICT、データの力で改革し、教育の質の向上に取り組んでいる。まなびポケットは、デジタル教材コンテンツの配信管理機能と、コミュニケーション機能を備えており、生徒個々人の進捗度や理解力にあわせて、教材を選択することができる。また、まなびポケットの利用により、蓄積された生徒の学習データなどを分析することができる。将来的には、学習履歴データなどの利活用を、企業の採用や人材育成などにも広げ、新たな価値創造と市場形成の可能性を追求したい」

 NTTコムでは、創業以来、約20年間にわたって教育のICT化を支援。総務省や内閣府などの「実証事業への参画」や、教育クラウドサービス「まなびポケット」の提供などによる「サービス化」、コンサルティングや校内LAN/WAN能の整備、デジタルコンテンツの提供をはじめとする「自治体における個別案件」への取り組んできた経緯がある。

 2019年10月には、スマートエデュケーション推進室を設置。「いつでも、どこでも学ぶことができる、まなびのプラットフォームの提供」、「個々人がやりたいことや習熟度に応じたテーラーメイド型の教育を提供」、「個々人の心身の状況や、クラスの状況を把握し、教員にアラートがあがる仕組みの提供」、「個々人の学習や活動のログデータの分析、提供による新たな価値と市場の形成」という4つの観点から、教育事業に取り組んでいるという。

 また、レノボ・ジャパンとの連携により、GIGAスクール構想に対応した「GIGAスクールパック」の提供を開始。まなびポケットの基本機能の提供だけに留まらず、2000本の映像授業の提供や、5000問の動画と連動したプリント教材によって、基礎や基本の学習、復習、学び直しができる学習サイト「eboard」を利用したり、授業実践の内容を簡単に記録して、教員同士で授業記録を共有できる「BANSHOT」なども提供できるようにする。

 政府が肝いりで主導するGIGAスクール構想においても、NTTコムが果たす役割は大きいといえよう。

庄司 「教育現場においては、多忙な教員の業務負荷が高いこと、画一的授業しか行えないといった課題がある。これを、まなびポケットによって解決したい。効率的なクラス運営が可能になり、生徒自らも進捗度合や理解力などをもとに、教材を選択できるなど、テーラーメイド型教育が実現でき、課題を解決できる」

まなびポケットは無償提供中

 そして、教育分野における新型コロナウイルスの影響に対しても手を打っている。すでに「まなびポケット」および提携コンテンツを無償で提供。4月末時点で約30万IDの申し込みがあったという。

 さらに、NTTコムでは、全国の自治体や学校が提供した「まなびポケット」上で利用できる授業動画やプリント教材などを教職員が活用し、児童や生徒が自宅などから無償で学習ができる「One School プロジェクト」を5月7日からスタート。児童生徒の「まなびをとめない」環境づくりに貢献する姿勢をみせている。

庄司 「休校措置を受けて、全国の学校では、それぞれが試行錯誤をしながら、オンライン授業や、児童生徒の心のケアなどを実施しており、その実現のために、PCやタブレットの配備や教育クラウドサービス活用など、自宅学習の環境づくり、独自学習コンテンツの準備や提供などに取り組んでいる。NTTコムでは、全国の教育委員会や学校関係者、教育関連企業などが独自に作成、蓄積している学習コンテンツを、より多くの児童生徒が利用可能な仕組みを作ることで、休校措置中のさらなる学習機会の提供や、将来的な教育のデジタル化の実現に向けて取り組む」。

 一部の学校では授業が再開されているが、首都圏などでは5月31日までの休校が続くケースがみられている。休校の長期化で、教育格差の懸念も指摘されている。

 NTTコムは、インターネットインフラの安定的な運用の維持だけでなく、教育分野においても、新型コロナウイルスと戦っている。

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