(「アップルがMacにiPad向けのチップを使う?」の続きです)
AシリーズMacの登場は、アップルのコンピュータにとって、そしてパソコン業界にとって少なからずインパクトを与えるものです。
現在、Windows PCもMacも、Intelチップを搭載しているものが標準的。もし一定の地位と販売量を維持するMacが、全てではないながら脱Intelをし始めるとなると、AMDやQualcommなど、Intel以外の勢力がより広範なデバイス向けにプロセッサを供給するようになる、ある種のパンドラの箱を空けるような変化になり得る、とも思います。
ただ、それまで顕著にならなかったことには理由もあります。
コストパフォーマンスやそもそもIntelを前提とした設計の蓄積、そしてよりアーキテクチャ全体を一体的に扱うモバイル向け製品の成長が中心だったことも、Intelがメインストリームを失わずに済んでいたことが考えられます。
●Aシリーズ採用のiPhoneの優位性を改めて
iPhone向けAシリーズチップは、アップルが設計しTSMCで製造しています。チップ単体の製造コストや採算性を考える必要がなく、非常に高い付加価値を誇り、単一機種で世界一の販売数を誇るiPhoneに組み込むことで、他社から見れば採算度外視の性能を実現しています。
同じことができるのは自社でチップを開発するサムスンとファーウェイぐらいですが、ローエンド、ミドルレンジで熾烈なコスト競争を繰り広げていること、ハイエンドモデルとの差別化を図る必要があることから、アップルのように、iPhone 11 ProからiPhone SEにまで、最上位の性能を誇るA13 Bionicを搭載する、といったことはできません。
iPhone SE(第2世代)がミドルレンジのスマートフォン市場を破壊するという指摘をしましたが、その理由も、Appleの独自チップ戦略によるものでした。
アップルはAシリーズチップを全て自社で使い、他社に供給していません。しかしサムスンやファーウェイ以外のスマートフォンメーカーは、QualcommやMediatekなどからチップを調達しなければならず、これらのチップメーカーはチップ単体での採算性を考えなければなりません。
つまり、例えば399ドルのスマートフォンに、同じ時期に販売している999ドルのスマートフォンと同じプロセッサを採用できるメーカーは、マーケティング的にもコスト的にも存在しえない、ということなのです。
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