まさかのスライド式デザインで
よりスマホらしく
この2製品が出そろったことで、Planet Computerから次の新製品はしばらくでてこないだろうなと多くのキーボードスマートフォンマニアたちは思ったことでしょう。ワイヤレス充電の追加や5G対応といったハードウェアの進化は必要かもしれませんが、クラムシェル型で横に開くというデザインは完成されており、派生モデルが出てきたとしてもマイナーチェンジに留まる可能性が高かったのです。
ところがAstro Slide 5G Transformerはまさかのスライド式デザインで登場しました。キーボードは同等品を使い、ディスプレーサイズも同等とすることで本体サイズはほぼ同等。ヒンジで開く必要がなくなったため、閉じた状態でも6型ディスプレーを使ってそのままスマートフォンとして利用できます。このデザインのスマートフォンは最近ではF(x)tecの「Pro1」がありましたが、キーボードは指先で押す小型のもので長文入力には向きません。しかし、Astro Slide 5G TransformerはGemini PDA譲りの大きいキーボードでしっかりとしたタイピングが可能なのです。
Astro Slide 5G Transformerはキーボードをスライドさせ、それを持ち上げることでGemini PDAなどと同じ、ノートPCのようにディスプレーに角度をつけた状態となります。これで電車の車内で立っているときや、机の上に置いた時でも両手の親指や人差し指を使って高速タイプが可能になるのです。そして閉じればすぐに普通のスマートフォンと同じ形状になるため、使い勝手も高いでしょう。
このスライド&ヒンジの構造ですが、単純にディスプレーを横に動かして縦に起こすのではありません。ディスプレーを目いっぱいスライドさせると、キーボードと面一になる位置まで沈み、そこからディスプレーを引き上げるというギミックになっているのです。これにより可動部分の強度が増すだけではなく、机の上に置いた時も縦方向の高さを若干低くできます。キーボードとディスプレー部分が近づくために文字を入力中も目の移動距離が少なくて済むというメリットもあります。
実はGemini PDA、Cosmo Communicatorはディスプレーを開くとヒンジの裏側のカバーが浮かび上がり、机上に置くとスタンドとしてキーボードに傾斜をつけることができます。そしてPsion時代のPDAも、ディスプレーを開くとキーボードが前にせり出てくるなど特殊な機構を採用していました。Psion時代から本体のデザインを手掛けるMartin Riddiford氏は、スモールデバイスに対して何かしらこだわりを持った動きや機構を加えることが好きなようです。とはいえそれは奇をてらったものではなく、外観上の美しさや使いやすさ、さらに強度も考えたデザインなのです。
また名前にもあるようにAstro Slide 5G Transformerは5Gに対応しました。対応周波数は未定ですがSub6に対応、キーボードには日本語もあるため日本の5Gにも対応してくるでしょう。ここで気になるのはSoCにクアルコムのSnapdragon 865や765ではなくメディアテックのDimensity 1000(MT6889)を採用していること。同SoCは5Gモデムを内蔵したSoCですが、現時点でOPPOの「Reno 3」中国版がDimensity 1000Lを採用しているのみと採用実績はほとんどありません。
同SoCはクアルコム製品より安価なため、採用が決まったと思われます。Astro Slide 5G Transformerは2021年3月の出荷予定ですが、そのころには他社からもDimensity 1000/1000Lを採用したスマートフォンが出ていると思うので、5Gの動作に関しては問題ない状態でリリースされるでしょう。
日本ではファーウェイがSIMフリー5Gスマートフォンとして「HUAWEI Mate 30 Pro」を発売しました。Astro Slide 5G Transformerも同様にキャリア縛りのない5Gスマートフォンとして、日本の正規代理店からも発売されることを期待したいものです。
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