Planetway Japan株式会社は2月11日、スクランブルホール(渋⾕スクランブルスクエア内SHIBUYA QWS)で、「第1回 プラネット・フォーラム」を開催。「個人データ主権」を目指す同社が提供する新コミュニティー「Planetway Data Sovereignty Alliance」の立ち上げやトライアルプログラム「PlanetCross FreeTrial」のサービス提供などを発表した。
Planetway Corporationは米国に本社を構えているが、エストニアに開発拠点を設置して日本国内でビジネスを展開。エストニアの電子政府技術「X-road」を国内の民間企業向けに開発したデータ連携基盤「PlanetCross」の販売や、同じくエストニアのユニバーサルID基盤技術をベースとした、個人の許諾ベースで情報の公開・署名を行なうプラットフォーム「PlanetID」(2020年4月商用化予定)を開発している。日本で初めてのメガユニコーンを目指し、10年後に世界インフラの4割を担うのが同社のミッションだ。
プラネット・フォーラムでは、最初に平尾氏から新コミュニティー「Planetway Data Sovereignty Alliance」の立ち上げが発表された。同コミュニティーについて、平尾氏は一部の大企業が独占する「データ主権を個人に返す」ことを念頭に、排他的・独占的・中央集権的な社会構造を変革させる会員制のグローバルコミュニティーだと説明。エストニアが開発した情報セキュリティーインフラ技術を日本のマーケットでさらにブラッシュアップして世界で利用できる水準にしたいという。
「自動車産業などをみても分かる通り、日本は0から1を生み出すより、1を100に増やすことに優れている。エストニアで生まれた素晴らしい技術を世界中で使える水準にまで日本の市場で高めるのがコミュニティーの目的のひとつ」と平尾氏は話す。
コミュニティーには個人・法人を問わず参加可能。今後は、参加メンバーがPlanetwayの技術をベースにさまざまな情報を共有し、適宜コミュニティー内でマッチングをして新しいプロジェクトを発足するような場にしていきたいという。
Planetwayからは、メディアコンテンツやパートナーマッチング機能、エストニアやEUなど情報先進国の最新動向情報などを提供していく。「将来的には、IEEEや世界経済フォーラムのような外部機関との連携も視野に入れていきたい」と平尾氏は展望を語った。
正式な公開は2020年4月以降だが、同社HPでの情報発信と、コミュニティー参加の事前申込を受け付ける。先行で日本語版が立ち上がり、並行で英語版の環境も整えていく。また、自社でソーシャルメディアを立ち上げて、情報発信や同社技術を活用した顧客の業務改善事例をコミュニティーメンバーに共有していくという。
さらに、Planetway Japan株式会社 執行役員事業推進本部長の青木孝裕氏からは、同コミュニティーで提供するコンテンツの第1弾として、同社提供のデータ連携基盤サービス「PlanetCross」を90日間無料で利用できる「PlanetCross FreeTrial」が発表された。フリートライアルでは、いくつかの業界・業種を想定したサンプルユースケースを用いたPlanetCrossの体験以外にも、エストニアのX-road技術やユニバーサルID技術を自由に触れるような環境も提供していくという。また、利用に当たって技術問題を解決するウェブコミュニティーもオープンされる。
「日本のデジタルトランスフォーメーションはまだまだ加速する余地があると考えている。本日発表したコミュニティーやPlaetCrossがその加速を手助けするようなツールになることを期待したい」と青木氏は語った。
続けて、PlanetCrossを導入して業務改善を行なった日本瓦斯株式会社の事例紹介が行なわれた。日本瓦斯は155万超の顧客に都市ガスを提供するエネルギー販売会社で、コールセンターシステムの統合に際してPlanetCrossを利用している。
登壇した同社執行役員の松田祐毅氏によると、コールセンターでは155万超の顧客に対応するため、全国3箇所で約100名のオペレーターが従事しているが、それだけ規模が大きいと最初の顧客照会だけでも膨大な時間がかかってしまうという。
さらに、日本瓦斯は本社以外にグループ会社が4社あり、セキュリティーやオペレーションの都合上システムは別にしているため、計5つのシステムがバラバラに存在している。そのため、オペレーターは問い合わせがあると、最大5回各システムを検索して顧客照会を行わなければならない。
そこで、検索システムの刷新を検討し「ニチガスサーチ with PlanetCross」を開発。検索データ層にPlanetCrossを導入して各システムのデータを連携、共通のUIを用意して各システムを1回で横断的に検索できるようにした。
導入した結果、顧客からの問い合わせを処理する平均時間(AHT)が27秒短縮し、毎月数万件に達する受電数が9%増加したという。また、オペレーターの採用コストや教育コストの削減にもつながっているそうだ。
今後も、さらなる機能追加やデータ共有、他社・異業種との連携も目指していくという。また、「データが無いようで色々と眠っているのがエネルギー業界。今後は、Planetwayのミッションにもある通り、保有しているデータを一企業で占有するのではなく、PlanetCrossを通じて顧客・個人に返す活動をしていきたい」と松田氏は話した。
最後に平尾氏と松田氏の2名が登壇して、日本のDXやPlanetwayの取り組みに関するトークセッションが行なわれた。
松田氏は、今回発表された「Planetway Data Sovereignty Alliance」について、「エネルギー業界はDXが盛んで、弊社でもシステム統合や異業種との連携も検討しているが、別業界のユースケースを見つけるのはなかなか難しい。コミュニティが異業種と同じベクトルで交流できる場になってほしい」と期待を語った。
平尾氏も「コミュニティーには、大企業だけでなくスタートアップにもどんどん入ってきて新サービスを思い浮かべるきっかけにしてほしい。参加した企業やユーザーがPlanetwayのインフラを活用したり情報を共有したりすることで、日本の力を高める一助になれればと思っている」と話した。
松田氏は最後に「2008年当時、『2014年にはスマホの台数がガラケーを超える』と言われたときは半信半疑だったが、本当に超えてしまった。時代は5~6年もすればあっという間に変わっていく。Planetwayが提唱する『データの主権を取り戻す』という観点もGAFAの流れとは違う力が働き始めて、実現するところまで来ているかもしれない。今後は、顧客にデータを戻したとしても成り立つ事業モデルを考えるのが企業の役割になるだろう。Planetwayには、その流れをテクノロジーで支えられる企業になっていってほしい」と話して締めくくった。