東京に「Dell Technologies AI Experience Zone」オープン、コミュニティハブとしても機能
Dell Technologies、AI活用目指す企業向けの新施設を開設
2020年02月21日 07時00分更新
Dell Technologies(デルおよびEMCジャパン)は2020年2月19日、東京・三田のデル カスタマーソリューションセンター内に「Dell Technologies AI Experience Zone」を開設したことを発表した。AIテクノロジーの導入/活用を目指す企業を対象に、AIに関するDell Technologiesの経験やノウハウを提供するために、新たなテクノロジーが体感でき、AIの理解と導入促進を図る施設と位置づけている。
大手に限らず中小企業でも、顧客AIプロジェクトの成功を支援
AI Experience Zoneでは、AIプロジェクトの開始/要件定義/導入/展開に関するサービスの提供、顧客やパートナーにデジタルトランスフォーメーション戦略を実現するためのデータサイエンスツール/手法へのハンズオンアクセスの提供、最新鋭の施設やソリューションの提供、デモストレーションの実施のほか、専任のAIエキスパートによるAIのユースケースの共有、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトにおけるパートナー企業との協業提案などを行う。
PoCやデモンストレーション、ハンズオンなどを実施するために、AI Experience ZoneではNVIDIAのGPUを搭載した「Dell EMC Power Edge C4140」「同 R740」「同 R640」の各サーバー、「Dell EMC Isilon F800」「同 H500」ストレージ、「Ready Solution for AI-Deep Leaning with NVIDIA」などの環境を用意している。インテルが開発したオープンソースAIソフトウェア「Intel Nauta」、AI関連パートナーのH20.ai、Cloudera、Splunk、Bitnamiなどの各社ソリューションも利用できる。
「AI Experience Zoneは大手企業に限らず中堅、中小企業まで、簡単な検証や評価作業のほか、1~2週間の期間予約による利用も可能だ。またコミュニティハブとしても機能し、最新技術と知識、経験を活用したり、ITとデータサイエンティストの距離を縮めることもできる」「AI Experience Zoneによって、ビジネスとITを“データ優先の文化”にそろえることができ、さまざまなデータをさまざまな場所で活用できるように配置する支援も行う。これにより、顧客企業は成長しながら競争上の優位性を維持できるようになる」(増月氏)
増月氏は、機械学習/ディープラーニングでは「データステージング」「モデル開発/学習」「プロダクション(推論実行)」の3フェーズそれぞれでインフラ要件があると説明した。Dell Technologiesでは、ユースケース/データ/モデル/ソフトウェアエコシステム/IT環境といった形で要件を階層化し、それぞれに対応する製品/サービスを提供している。また検証済みアーキテクチャの「Dell EMC Ready Solutions」によって、リスクを軽減し価値を迅速に実現できるとしている。
なお、Dell Technologiesでは米国テキサス州オースティンに、AI専門家が常駐する「HPC & AI Innovation Lab」を設置している。AI Experience Zoneは、同Labと連携するほか、世界19箇所にあるカスタマーソリューションセンターも活用して、国内拠点には設置されていない最新のGPUやストレージなども活用し、各種検証を実施するという。
さらにDell Technologies社内で取り組んでいるAI活用のノウハウについても、AI Experience Zoneを通じて顧客に提供する計画だという。
Dell Technologies ソリューション本部 シニアビジネス開発マネージャーの増月孝信氏によると、同社では幅広い業務においてAIテクノロジーを活用しているという。たとえばパーツ故障予測や修復時間予測などの「サービスの最適化」、品質問題やコスト予測、商品需要予測、動的な在庫管理などの「サプライチェーン最適化」、チャットボットや顔認識、NPSによる顧客満足度把握といった「RPA」などでAIを活用している。
「サービス部品は即日配送に対応するために、全米に120カ所以上の倉庫を持っていたが、機械学習を用いて倉庫や在庫を最適化することで、年間1800万ドルのコストを削減。それに加えて動的なプーリング戦略をとることで、さらに200万ドルのコスト削減に成功した。こうした成功事例も共有していきたい」(増月氏)
「個人のデータを企業が吸い上げる“CtoBtoB”時代」の競争力を得るために
同日の発表会には、AI Experience Zoneを先行活用しているロゼッタ 執行役員 CSO SI本部 本部長の木村浩康氏がゲスト登壇した。
ロゼッタでは、4500以上の企業/団体で導入されているSaaS型自動翻訳サービス「T-400」を提供している。独自開発の翻訳エンジンを活用し、各社ごとにカスタマイズできるのが特徴で、翻訳正解率は「95%」を誇るという。「2000分野にあわせて訳し分けを行い、プロ翻訳者に匹敵する業界ナンバーワンの翻訳精度を持つ」(木村氏)。この翻訳エンジンの開発には、機械学習技術を用いている。
ロゼッタでは、NVIDIA GPUを最大4基搭載できる1Uサーバー「Power Edge C4140」を利用しているが、木村氏は「GPUの廃熱が多いため、半導体の寿命が確実に縮み、誤動作確率も上がるという課題がある」だと語る。運用するうえでは効率の良い冷却や供給電力の余裕が大切であり、さらに学習処理の並列化のためには通信の高速化も必要になるという。AI Experience Zoneを利用することで、こうした課題を事前に知ることができる。
「AI Experience Zoneの開設前(一般公開前)から、最新製品のベンチマークなどの作業を行ってきた。ここでやりたいことを整理したうえで、Dell TechnologiesやNVIDIA、データセンター事業者に相談できるのが良いと思う」(木村氏)
またDell Technologies 日本最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は、Dell Technologiesが発表している調査レポート「Realizing 2030」を取り上げて説明した。
Realizing 2030では「2030年の生活を形成する5つのテクノロジー」として、IoT、モバイルエッジコンピューティング、5G、AI、xRを挙げている。こうしたテクノロジーによって「至るところでデータが生成され、最適な場所でデータが処理される時代がやってくる」と黒田氏は説明する。
「たとえばCES 2020では、ウェアラブル、デジタルヘルス、センサーやバイオメトリクスに関する企業が数多く出展しており、“身体からデータがあふれ出る世界”の到来を示していた。同様に、スマートシティや自動運転では“街や家、クルマからデータがあふれ出る世界”になる。データこそがこれからのビジネスを支える重要な資産であり、個人のデータを企業が吸い上げてビジネスに変える“CtoBtoB”時代が訪れるとも言える」(黒田氏)
そう述べたうえで黒田氏は、「データを集め、蓄積し、分析するなかで、それを体験したり、話し合ったりする場がない。そこで、AI Experience Zoneの開設に至った」と、今回の狙いを説明した。