5つの要件に基づく「クラウド・データ・マネジメント」ビジョンを説明、アセスメントを促す
ヴィーム、最新版「Veeam Availability Suite V10」を発表
2020年02月21日 07時00分更新
バックアップソリューションベンダーのヴィーム・ソフトウェアは2020年2月19日、バックアップスイートの最新版「Veeam Availability Suite V10」の一般提供開始を発表した。NASバックアップ機能の大幅強化、マルチVMインスタントリカバリ、ランサムウェア対処機能強化を含む、150以上の新機能と機能強化がある。
同日の記者発表会には日本法人 社長の古舘正清氏、システムズエンジニアリング本部 本部長の吉田慎次氏が出席し、Veeamが掲げる「クラウド・データ・マネジメント」ビジョンの背景にある顧客企業ニーズの変化、そして同ビジョンを実現するための主要な新機能/機能強化について説明した。
クラウド時代のデータ環境に向けて「5つの観点からのアセスメントを推奨」
古舘氏はまず、企業のデータ管理ニーズには近年「非常に大きな変化が起きている」と説明した。たとえばオンプレミスだけでなくハイブリッド/マルチクラウドの利用が浸透し、Non-IT部門(非IT部門)も直接利用/管理するようになった。一方で、あらゆる企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指し、データ活用の取り組みを進めようとしている。
その結果として、現在の企業は「データの継続性」「データの迅速性」「ビジネスのスピード向上」というデータ管理ニーズを持っていると、古舘氏は説明する。
それらを実現するデータ基盤に求められる要件をまとめたものが、Veeamが掲げる「クラウド・データ・マネジメント」ビジョンである。
具体的には、確実なシステムの復元(リカバリ)までを担保する「バックアップと復元」、バックアップしたワークロードをオンプレミス/マルチクラウド間で自由に移動させられる「クラウドモビリティ」、バックアップの状況やデータの所在など全体像を常に可視化できる「監視と分析」、インフラが複雑化しても工数を増やさない/削減できる「オーケストレーションと自動化」、そして「ガバナンスとコンプライアンス」という5つの要件だ。
「昨今、わたしが顧客と話をする際には、まずこの5つの観点から『現状』と『あるべき姿』をアセスメントすることをおすすめしている。クラウド中心型のインフラ再構築や、新しいDXの取り組みを始めている顧客は多いが、その前提となる“備え”がきちんとできているかを確認しましょうということ。ただし、大手金融機関や大手通信事業者のCIOと話をしてみても、残念ながらまだそこまでには至っていないのが現状だ」(古舘氏)
こうした市場背景から、「シンプル」「柔軟」「高い信頼性」を特徴とするVeeamが選ばれていると古舘氏は説明する。100%ソフトウェアベースの製品であり、物理/仮想/クラウドのあらゆる環境で動作する。バックアップ/レプリケーション、監視/分析、オーケストレーション(自動化)といった機能を単一プラットフォームに統合し、シンプルに導入できるのが特徴だ。
「もうひとつ、ライセンス形態(Veeamユニバーサルライセンス)も『クラウド時代にフィットしている』と顧客から好評だ。1つのライセンスを物理/仮想/クラウドのどこにでも移動することができ、(バックアップ対象の数に応じたライセンスなので)“使ったぶんだけ”の課金が実現する」(古舘氏)
最新版「Availability Suite v10」の特徴を紹介
Veeam Availability Suiteは、バックアップ/レプリケーション機能を提供する「Veeam Backup & Replication」と、監視/レポーティング機能を提供する「Veeam ONE」で構成されるスイート製品だ。システムズエンジニアリング本部長の吉田氏は、古舘氏が述べたクラウド・データ・マネジメントの5要件に沿って、最新版v10の特筆すべきアップデートを説明した。
「バックアップと復元」においてはまず、VMインスタントリカバリ機能の強化を挙げた。v10においては複数のVM、複数の仮想ディスクを並列的にリカバリする機能(マルチVMインスタントリカバリ)が追加された。「Veeam社内でのテストでは、3つのデータベースを含む21の仮想マシン(VM)を約7分間でインスタントリカバリすることができた」(吉田氏)。
また、NASへのバックアップ対応も強化されている。これまではNDMPによるファイルコピーベースの単純な機能のみだったが、新たに増分バックアップや大規模な並列バックアップ処理も可能になっている。今回あらためてNAS向けのバックアップファイル形式を実装した結果、数十億のファイルやペタバイトクラスのデータにも対応したという。
「監視と分析」では、Veeam ONEの監視対象としてNASやNutanix AHVなどが追加されており、Veeam ONEを通じてそれらの詳しい現状を把握し、判断を下すことができるようになった。
「オーケストレーションと自動化」領域の新機能のひとつとして、データインテグレーションAPIを通じたバックアップデータの再利用を図っている。これまではリカバリ用途でしか使えなかったデータをWindowsやLinuxから直接アクセス可能にしたことで、DevOpsからデータ分析、AI/機械学習、テスト、セキュリティ分析など幅広い用途で使えるようにしている。
「ガバナンスとコンプライアンス」における機能強化のひとつとして、クラウドへのティアリング機能をベースにランサムウェア対策機能を強化している。具体的には、Amazon S3のオブジェクトロック(変更/削除不可機能)を活用し、クラウドに保存されたバックアップデータをランサムウェアが不正に書き換えることを防ぐ。
また「ステージドリストア」機能も追加された。これはバックアップデータからリストアを実施する際に、個人情報などコンプライアンス要件に抵触するデータを削除したうえでリストアを行うもの。同じように、リストア時点で最新シグネチャによるマルウェアチェックを行う「セキュアリストア」機能も備える。
「クラウドモビリティ」では、クラウドティアへのオフロード対象を、これまでの古い(一定期間が経過した)バックアップデータだけでなく、最新のバックアップデータもコピー可能にしている。